第5話 終わりの始まり

 五月蝿い声が僕の耳に聞こえてくる


「――起きろ!」「起きろ!」


 騒がしい。一体何があったんだ?


 寝起きだと言うのに僕は、いつの間にか移動させられたのか、何故か知らないベットの上で寝ていた


 鉄の焦げる匂いと言ったら変だが、そんな趣味の悪い匂いがここには漂っている


「見えない?」


 目が、目が・・・・・目蓋は空いているはずなのに、なんで見えないんだ?


「なぜ、立ち上がれない?」


 五体満足の筈だが四肢は役に立たず、切断された訳でもないのに四肢が無いような錯覚を覚えた


 ここが何処かも知らないし、目も見えない、身動きも取れないなんて、絶望的過ぎるにも程がある


 こんな状況にはいるが、ここで生存を諦めてしまったら、最も子もないとは考え、なにかないか?と探してはみたが、出来ることが少な過ぎてどうしようも無いかもしれない


 状況を踏まえて考えると、僕は体の至る所に魔法がかけれている。これは確実だろう。又もや嫌な鉄の焦げる匂いがしたかと思うと、誰か知らない人が、重い足取りでこちへ来た


「ノール・アムガミスタ。お前を直ちに王の御前に連行させて頂く」


「王の御前・・・・・・?」


 よし。この知らない人の名前は「暫定兵士」という事にしておこう。抜けた思考をしつつも僕は更に思考を巡らせた・・・・・・暫定兵士が着ているのは恐らく金属製の全身鎧、しかもとびきり重い物かつ機動性があり、何かの魔法がかかっている。推測の推測だがおそらく真面目で、模範的な人物だろう


 暫定兵士は僕の身体に黙々と、そして早々と拘束危惧を付けていった。流石王のいる場所、つまり王城か何かの暫定兵士だ


 しかしなんて人達だ。この文面だけ見ると、どこかに転がって居そうな薄い――止めておこう。これはかなり不謹慎な行為だ





 





 最高位の裁判を受ける事になった。


「やったー。」


 そう喜ぶのが最適解なのかも知れない。しかしこの歳で裁判を受けるなんて、現代の日本じゃ考えられないよな


 心当たりは無いが、どこかでやらかしたのかも知れない。修業の儀の時の記憶が曖昧で、よく覚えていない。これが世にいう、酒の勢いでってやつでは無いのか?


「キセル=アムガミスタ及び、ゲーテ=アムガミスタの殺害、器物損害、放火の罪を、ノール=アムガミスタに問う。」


 うん・・・・・・確実に嵌められた。この国の陰謀かどうかは分から無いが、かなり不味い状態だ。キセル母さんやゲーテ父さんがそう易々とやられる訳が無いが、少し心配になって来るな


「被告人、なにか申し立てはあるか?」


 この国では被告人の発言の権利は無く、全て代理の弁護士が行う事になっていた


「この者は罪を理解してない愚か者です。しかし、まだまだ成長途中の若人です。」


 それもそうだよな。僕の代理人と一括りに言っても、完全に僕を守ってくれる訳では無いらしい。

裁判とは言っているが、実際は罪の認識をさせる場所にしか過ぎないという事なのか?


「どうか、どうか寛大なお慈悲を。」


 というか罪を理解してないって、どうしてこの人が判断してるんだ?別に僕が何かを自供したことは無いと思う。そして僕の弁護士が買収されていた場合を考えると、勝ち目はないのでは?


「イッッなッッ。被告人は完全なる悪人であり、人類に仇なす悪魔であるッ。」


 メリハリの付いた綺麗な女性の声なのに、喋る内容が悲惨すぎて、物も言えなくなりそうだ


 向こうの検察官さんか弁護士さんは、是が非でも僕を落としたいらしい・・・・・・モテる男は辛いな


「このッ完全懲悪ッッ人間の形を模した悪魔をッどうかッッどうかッッ死刑にッッッ」


 べっっ別に知らん人にモテたって、嬉しくなんかなんだからッと言うのはさておき、この人息が切れすぎて大変な事になってない?


「静粛に、静粛に。では、正式な判決は後日改め発表とする。」


 流石暫定裁判長、分かっていらっしゃる。というかこれは確実に死刑では? 


「――では、閉廷する。」


 幽閉90年ということになった。


 早くて助かる。というお母様達の話を他所に、何故こうなったかと言うと、この国では実力のある冒険者が少なく、下級ダンジョンですら苦戦する程度の能力しかない事が、長い間続いて居るらしい。


 尚且つ上級ダンジョンで得られるアイテムは、とても貴重で高価な物が多い事に加え、僕の事を消しても証拠が残らないという利点があるように考えられる


 利用するだけ利用して、僕が死んでもお構い無し、むしろしっかり止めまで刺す事まで織り込み済みなんて、後衛の至りだ


 随分被告人に冷たい国だな。と思ったが、人を2人も殺害して放火をすれば、この位にはなる


 でも実際僕は、無実な訳だからこの国か、あるいは貴族が僕を陥れた事になる。


 やっぱり冷たいな。




―――――――――――――――――――――――




 どうも作者の椋鳥です。


 この後からも頑張るので、よろしくお願いします。


 至らない点ばかりですが、暖かい目で見守っていただけるとありがたいです。


 最後になりますが、誤字脱字等ありましたらコメントで書いていただけるとありがたいです。







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