第136話 老紳士
「とても、昔。」老人は語りだした。僕とは目線を合わせず、ただ空を向いた。何を見つめているのだろうか。空か、それともその先にある遠い過去の記憶か。僕にはとても判断がつきそうにない表情をしていた。間を置かず僕の手の中に納まっている依頼書は発光し、意識は暗転した。
「……美しい。」起きると、先ほどまで僕と老人が話していた場所とは似ても似つかない場所に、僕は居た。ここはきっと、あの老紳士が作りだした世界なのだろう。まあ、根拠のない勘のようなものだが、あながち間違っていないだろう。なぜなら、この空間からは害意を全くと言ってよいほど感じなかったからだ。改めて言い直させていただくと、ただ純粋な花とほのかな光の広がる世界を、だれが悪くとらえられようか。ということだろう。
僕の目の前で、老紳士は花を撫でていた。なんという名前の花か、僕には分からななかった。けれど、それが老紳士にとって、重要な存在であることは僕にも分かった。
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