第6話 覚醒
「すまんな、儂は王じゃが、お主を救う事は出来ないんじゃ」
――何でですか。
そう言おうと思ったが、口が塞がれていて喋ることが出来無かった――
「儂は主に何もすることが出来ん。」
――そうですよね。王様ですからね。
「ただ、お主が何でこうなったのかを、話す事位は出来る・・・と思うのじゃ。」
――そうですか。
「この国には既に2人の勇者がいるのじゃが、1つの国に勇者は2人までという、決まりがあるのじゃ」
――そんな決まりがあったんですね。
「1つの国に2人以上の勇者がいると、戦争になりかねんのじゃ、本当にすまん。」
――そうなるんですか。
「そもそも、1つの国には2人の勇者しか現れないと、文献にあったはずなのに、どうしてこんなことになったんじゃ。」
――どうしてでしょうね。
「本当にすまん。こんな事言う権利も無いのじゃが、儂らを許さなくてもいい。ただ他の民の事を恨まんでくれ――頼む。」
そう言って王様が、頭を下げる音がした。
――そうですか。
「もし次があるとすれば、最大級の謝罪をしよう。」
「本当にすまない――勇者よ。」
――分かりました。
僕は何も、分かっていないのかも知れない。
でも、この王様からは悪意が、全くと言っていいほど感じられない。
それに、こんな事を言われたら、恨むことなんか、僕には出来ない。
これが僕の答えだった。
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その後も、ただ日々を過ごし、上級ダンジョンに行く期日になった。
馬車のような物に入れられて、鎖で腕と足を繋がれ、揺られながら移動した。
そういえば、転生したときも、手足が自由に動かなかったと思う――懐かしいな。
上級ダンジョンに着いたと兵士が言った。
ダンジョンの道を暫く進んだ後、僕は兵士に降ろされた。
兵士に声を掛けられた。
「あんちゃん頑張って来いよ。」
涙が出そうだったが抑え、ありがとうございますとお礼を言った。
――僕は走っていた。感情も出ないほど早く走り、モンスターから逃げた。
――嫌だ。――嫌だ。――死にたくない。
出口を探し続けたが、一向に見つかる気配がなかった。
そして、1つの扉を開けた瞬間――僕は、1度目の死を迎えた。
――僕は恐らく即死だったのだろう。どの様に死んだのかさえ、分からない位だ。
だけど、自分が死んだ事だけは、何故か分かった。
――走馬灯が走った。
父さんと母さんとの日々。村での生活。様々な思い出が頭を横切った。
この世界での生活は、短かったけれど、とても濃密な時間を過ごせた。
――幸せな人生だった。
そう思うくらいには幸せで、短かった。
父さんや母さん――色んな事を教えてくてれて、いや、生きる力をくれてありがとう。
いつも感謝しきれないほど、感謝していました。
――もしいつか会えたなら、一緒にご飯が食べたいです。
死にたく無かった。
――これは願望か。
その瞬間――
僕は、否、俺は覚醒した。
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どうも、作者の椋鳥です。
次回からも頑張るので、応援よろしくお願いします。
最後になりますが、誤字脱字等あれば、コメントで伝えていただけると、とても助かります。
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