第132話 防火
店主から盾の素材「デントルノ石」についての説明を受けた後、僕は店を出た。外は意外にも明るく、町との別れには丁度良さそうだ。今振り返れば、この鉱石の町でも、面白いことが沢山あったように感じる。
「お待ちください。」旅立とうと心に決めた僕を引き留めたのは、かつての仲間ではなく、宿屋の老紳士だった。この宿屋の老紳士は、僕が止まった宿の天井がくりぬかれた殊について、僕に練れ衣を着せた人でもある。まあ、あの状況で「僕はやってない。」なんて言っても何の証拠にもならないけれど。
「一体……。」正直、鬼が出るか蛇が出るかという心持でいるが、また借金の取り立てだろうか。けれど、さっき残りの全財産で大盾を買ってしまったので、最早何もない。そうするとまた魔物の素材を換金する方法を選び取らなければならないのか。少し気が重い。けれど、戦闘の訓練になるのは間違いない。たとえ魔物がどれほど強くても、最悪の事態は避けることができるのだから。
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