第115話 給付
「お待たせしました。」受付嬢はそう言って、僕のほうを見た。先ほどより微かに顔色がよくなったように感じる。僕は、皿の上に置いた硬貨を懐にしまいなおすと、改めて言った。
「一人部屋、食事ありで。」不愛想だな。と思われても仕方ない会話をしてしまったかもしれない。けれど、歩き続けた反動が思った以上にあった。足の裏からふくらはぎにかけてのところが、かなり痛い。金づちで足の裏を叩かれるかのような痛みが、絶えず続く。全速力で部屋まで駆け上がりたい衝動に駆られるけれど、そうもいかない。
「こちらです。」402号室。固い鉱石……恐らくはあの鉱石だろう。四角く切り取られ、その上から文字が彫られている。見事な美しさを醸し出していて、少し好感が持てる。特に素晴らしいのは、402の0の数字の掘り方だ。中を残しつつ、外も細かく削り、見た瞬間に「これは0だ。」と思わせる一文字に仕上がっている。僕はそれを受け取り簡単に礼を済ませると、階段を駆け上がった。
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