第34話 各個撃破

 衝突が200を超えてた辺りから、両者は数えることを辞めていた。それほどに実力は拮抗し、白熱した戦いが行われていたのだ。


「素手でこのの実力か……怪物も居たもんだ。」ナイフ使いは大きめの振りの後、距離を取って呟いた。リンダはナイフ使いを追うことはせず、その場で拳を構え直した。


「お互い様だろう?」風のように軽いその言葉は、地をはってナイフ使いの下に届く。2本の武器と、2本の拳。常識的に言うならば、武器が圧倒するはずだった。


 だが、それはリンダとのナイフ使いにとっては些細なことでしかなく、この場所での勝利こそが、共通の目的であった。「今だ。」ナイフ使いは叫ぶと、跳躍した。本人は知る由もないがその跳躍は、ナイフ使いの生涯の中で、最も高いものとなる。


 武器を空中で掲げ、リンダの真上から垂直に切り込んだ。「見事だよ。」がこんと渋い音がしたにも関わらず、武器を受け止めたのは、またしても拳だった。


「化け物かよ。」それが男の最後の言葉となった。リンダの拳がナイフ使いの腹、両太ももに炸裂し一瞬で戦闘不能状態へと陥れた。「ありがとう。」思わず感謝の言葉をリンダは述べたが、ナイフ使いの意識は、最早なかった。


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