第145話 甘苺の夜
「夜?」僕が部屋の外に出ると、外は暗闇の時刻だった。暗号の解読をしている間に、老紳士は魔法を解除したらしい。あまりにも集中し過ぎていたせいか、周りにまで意識が及ばなかった。そこは花などない、どこか人工的な光の満ちた場所だった。恐らくだけれど、光源のような魔法なのだろう。
「月の無い、美しい夜よ。」騙された。魔法を解除したのではない、魔法を変化させたのだ。どこまでも底知れない魔法を使う人物であると言えよう。老紳士の心の世界に僕はいる。他者を引きずり込み、世界を作り出し、そしてそれらを操作する。老紳士が行った文字通り規格外の魔法は、とても綺麗で、美しい。
「貴方は……。」一体何者なのか、答えてはくれないだろう。けれど、答えを聞きたくて聞いた訳ではない。ただ聞かずにはいられなかったから、聞いたまでの事だ。老紳士はいつまでも、月の存在しない空を見ていた。そしてその首を少し上にもたげて、空を見上げた。確かな何かを、老紳士は見つめているのだと僕は思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます