第155話 完食

「美味しかった。」築いた時にはもうすでに、完食していた。天候魚は色と目以外は普通の鯛と変わらないように思えたけれど、そうではないらしい。好みは分かれてしまうだろうけどこの天候魚は、身の圧縮率が半端ではないのだ。どういうことかというと、一口くらいの大きさでとっても、中々飲み込むことができないという事だ。噛めば噛むほどに身からうま味が零れ落ち、口の中を程よく満たす。こんなことを繰り返している内に、いつの間にかに完食してしまっていた。そして「ご馳走様。」と小さくつぶやいた。


「美味の至り。」老紳士の注文した『光たこの峠炒め』もすでに皿の上から姿を消していた。老紳士も満足できたようでうれしいと思うけれど、今更ながらに少し胸が痛んだ。今頃あの二人はどうしているだろうか。おいしいものを食べる事は出来ているだろうか?まだあの町にいるのか、もう別の場所で新たなことを始めているのか。どんな状態であるにせよ、このことが済んだらすぐに謝りにいかなければならない。

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