第14話 村を発見!

 朝からいろいろあったが気を取り直して空を飛ぶ。アインも慣れたようなので昨日より速いスピードで飛んでいく。


 アリスは自分で飛べるということでヴィークと手を繋ぐことはしなかった。ここまででアインにかなり差をつけられているアリス。そろそろどうにかしたいところだ。


 ここら辺がきれいな景色ならゆっくり飛ぶのもいいが、あいにくずっと山! 山! 山!なので仕方ない。


 たまに休んではまた飛ぶ。休んでは飛ぶの繰り返し。2人の魔力が無くなりそうになったら近くにテントを張って寝る。そんな日が数日続いた。そんな日々も楽しい。アインもかなりテントを張るのが上手くなってきた。



 ◆◆◆



 今日もいつものように飛んでいると目の前に湖が見えてきた。目を凝らすと家のようなものも見受けられる。


「2人とも、村っぽいところがあるぞ。ちょっと寄ってみようか」


「うん!」


「いいと思うよ。交流は大切だよね」


 というわけでその村に寄ることにした。


「到着っと」


「お兄ちゃんお疲れ様」


「あぁ、アインもお疲れ。大丈夫か? 体調悪いとかない? アリスも大丈夫か?」


 例によって3人が降り立ったのは村の1キロほど手前。そこから歩いていくのだが……


「アインいつまで手を繋いでいるつもりなんだ?もう空は飛ばないから手は繋がなくても大丈夫なんだけど」


「手を繋ぐのに空を飛ぶとか飛ばないって、関係あるの?」


「……つまりまだ繋いでいたいと」


「そゆこと!お兄ちゃん大正解!」


 そう言われると断り切れないのでアインと手をつなぎながら歩く。


(アインもまだ甘えん坊だなぁ。でも俺がお兄ちゃんなんだからしっかり甘えさせてあげないと)


 と、思いながらも手をつなぐのにドキドキするヴィーク。


(こうやってお兄ちゃんと手つないでるのを村の人に見られたら彼氏、彼女って思われるかなぁ)


 と、兄妹愛もそこそこにヴィークのことを一人の男の子として大好きなアイン。


「ちょっと待った! 順番的に考えて次は私だよね! 私のこと忘れてない? アインちゃんは今までずっとヴィークくんと手繋いでたんだからもう私の番だよ」


「アリスちゃんの番とかないもん。でも仕方ないから左側は譲ってあげる」


 ほどなくして森を抜けると木でできているような家がたくさんあるところへ出た。お昼前のこの時間。2,3人が慌ただしくいろいろなところを行ったり来たりしている。


 ヴィークたちはそんな村へ入っていった。入って程なくして1人の男が2人の存在に気づいた。なかなかに体が引き締まっていて冒険者みたいだとヴィークは思ったが冒険者ではない。


「お前たちこの村のものじゃないな。ここに何の用だ?」


「あぁ俺たちは……」


 ヴィークが事情を話すとすんなりと分かってくれた様で村長に会わせてもらえることになった。なんでも村長は若い人と話すのが好きらしい。勇者パーティーのメンバーだったこととアリスが聖女ということは伏せてあるのでただの旅人ということになってはいるが。


 村の中を案内して貰っているがけっこう人が多い。200人はいるんじゃないかと思わせる。


 そして村長がいるという家までやって来た。家の外見は他となんら変わらない普通の家。ここに村長がいるらしい。中へ入ると一組の夫婦が椅子に座って何か作業をしていた。年齢はたぶん50歳にいっていないくらい。二人ともヴィークが想像していたより断然若かった。


「村長、村を訪れてくれた旅人のひとです。旅の途中でここを見つけて寄ったそうで」


 男はこの後まだ仕事があるらしくそれだけを言うとまた戻るという。ヴィークたちもお礼を言って男とは別れた。作業をしていた村長らしき男が立ち上がりヴィークたちに言った。とても穏やかそうな人。第一印象はそんな感じ。


「遠いところをよくここまで来られました。私が村長のサムです。こちらが妻のエルです。私たちは人と喋ることが好きでして村へ来られた人をここへ通してもらっているんですよ。あ、どうぞ座ってください」


 ヴィークたちも自己紹介をして椅子に座った。そのあとは他愛もない話をしばらくしていた。この村のことだったりヴィークたちのことだったり。ヴィークたちもこんなに人と喋っていたのは久しぶりだった。


 最初は片言だっだが慣れていくにつれてだんだん口調がほぐれていった。そして何よりこの夫婦と喋っていると楽しい。村長夫婦は人と喋り慣れていることがよく分かった。


 ただお昼前に来たということは今はもう完璧にお昼になっているわけで誰かはわからないが、おなかのなった音がした。その音に笑いながらエルが席を立った。


「良かったら家でお昼ご飯だべていきません? お昼まだ食べてないでしょ?」


 いちおうまだ出会って1時間もたっていないのにお昼ご飯を頂いてもいいのか迷う。しかし、ぜひ食べてほしいと言われたのと台所からする匂いがとても美味しそうだったのでお言葉に甘えて食べていくことにした。やっぱり食欲には勝てないようだ。

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