第40話 温泉を見つけました
「さてさて、日も暮れたしそろそろ寝る場所決めようか。安全な場所じゃないとね」
村を出て初めて3人で夜を明かすことになる。さっきのイノシシの件もあって場所選びには慎重だ。ヴィークが魔法を使えばどうにでも出来るのだが。
「あっ。あそこなんてどう? なんか湯気でてない?」
「ん? あ、ほんとだ。水から湯気が出てるのか?」
「それってどういうこと? 人がいるのかな?」
「いや、人はいないと思うんだけど……」
遠くからでは見づらいが、近くに行ってみると確かにもくもくと湯気らしきものが立ち込めている。
「お兄ちゃん! 来て来て! この水温かい! すごい凄い!」
「どれどれ。あっほんとだ。これ確か温泉っていうんだっけ。金持ち貴族御用達の自然に湧き出る温かいお湯のことだったような」
「そうそう。貴族は自分たちの別荘みたいなのを持っててそこに作られてるんだって。私は聞いたことしかないけど自慢してる貴族の人たくさんいたよ」
「へぇ、おんせんって言うんだね。じゃあここも貴族のものなの?」
それはないだろう。こんな王都より離れた場所に来るはずもない。
「それに、こんな感じじゃなくてもっと屋敷見たいな感じらしいよ。それでこのお湯をお風呂に使うんだって」
「ふうん。貴族って何もしなくて威張ってるだけなのに、そんなことまでしてたんだ」
何故かちょっと不機嫌というか、テンション低くなったアイン。昔、何かあったのだろうか。でもそこを深く追求するのはやめておく。
「それじゃここに今日は泊まろうか。ちょうど温泉あるんだしせっかくだから入ってみよう」
「え? これって私たちも入れるの?」
なんの整備もされてないただお湯が湧き出ているだけのものに誰のものとかはない。温度もちょうどいいし、入らない手はない。
「それに知ってる? 温泉って美容効果もあるらしいよ。今も可愛い2人だけど、もっときれいになると思うよ」
そうやって言われれば最初から入る気全開だったものがもっと全開に。きれいになるよと言われたらそんなの入るしかない。それに可愛いとも言われて2人は天国気分だ。
「じゃあ入っちゃお! ヴィークくんも一緒に入っちゃう?」
「いやいや! 俺はいいから! まずは女の子で入っておいで」
「もう。まぁいいや。私たちお先に失礼するね。もし入りたくなったら遠慮なく来ていいからね」
「そんなことしません! 周りが安全かどうか調べて来くる」
そう言ってヴィークはスタスタと2人から離れていく。それを見ながらアインとアリスが言った。
「お兄ちゃん、鈍感なんじゃなくてもはや神経が通ってないのかもね」
「ヘタレってやつなのかも。まぁ言って分からないなら身体に直接ていうのも手かもね」
「うーん。それもありと言えばあり。それはまた今度考えるってことにして今は温泉ってのを楽しもう!」
と、ヴィークの預かり知らぬところで恐ろしい計画が立てられそうになっていた。
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