第56話

「これならどうかな。砂糖と一緒に軽く煮てみたんだけど。ちょっと舐めてみて」


 始めてから2時間。いろいろ試してきた。焼いてみたり、塩を入れてみたり。どれも全然ダメだった。これはどうだろうか。


「お……お……おぉぉ! これは良い! ちょっと甘くて、でも酸味もバッチリ。これはいいぞアイン!」


「本当に!? じゃあじゃあ私も一口味見してみよ」


 アリスも一口味見。柔らかくなったラズベリーを一つ食べれば、ほっぺたが落ちそうになる。


「これは完璧だね! うんうん! これを水で割ったら最高のジュースになるよ!」


 遂に3人が納得するラズベリージュースが完成した。あとは同じようにすればいいだけなのだが……ここである問題が……


「なぁ2人とも。もうラズベリーがないんだが…」


 籠一杯にあったラズベリーはもうほとんど残っていなかった。いろいろしているうちにたくさんの量を使ってしまったらしい。


「ほんとだ。もう全くないや。全然気づかなかったよ」


「私たちがつまみ食いたくさんしちゃったから」


「ならさ、一緒にラズベリー採りに行こうか。カミーユさんに教えて貰ったところくらい素敵な場所だよ。まだまだあそこにはラズベリーが生ってるから」


「うんっ! 行きたい! よし、行くと決まったら早く行こう! ほらほらお兄ちゃん。籠は2つがいいかな」


「私も籠持つよ。アインちゃんも持てばたくさんになるよ」


 その後の2人の行動は速かった。さっと籠をもう一つ準備してがっちりと手を繋いでヴィークがラズベリーを見つけたポイントへ。




「ここだよ。ほら、すごい数ラズベリーが生ってるでしょ。ここだれも知らないところなんだ」


 3人で歩くこと10分。ヴィークは周り一面のラズベリーに驚く2人に自慢げに言った。青々と茂った葉っぱとその枝にたくさん生ったラズベリー。アインもアリスも気に入ったように見える。


「ここは良いね。カミーユさんが教えてくれたところももちろんいいんだけど、こっちは甘酸っぱい香りもしてまたいい。それに何よりお兄ちゃんとアリスちゃんとだけの場所。えへへ。嬉しいなぁ」


「そうだね。ここは俺たち3人だけの場所」


「私たちの秘密基地ができちゃったね。ならここで今度からたくさんイチャイチャしようね。だって私、ヴィークくんのこと大好きだもん」


「あー! 私もだよお兄ちゃん! ここは3人のなんだから!」


「分かってるよ。もうアインちゃんったら」



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