勇者に追放されたので義妹と2人辺境の地で仲良く暮らします聖女様まできちゃったんだけと!?〜能力が覚醒するなんて思っていなかった〜
九条 けい
第1話 戦力外だそうです
約2000年前、突如としてアンデットの存在が確認された。それは、終わりなき厄災の始まりであった。
次から次へと押し寄せてくる超常的存在アンデット。最初こそ民の手で駆逐できていたが膨大な数のアンデットの中でも「リッチ」と呼ばれる強力なアンデットの前に瞬く間に人類の生存圏は失われていった。
その時、みなが思った。もう人類は終わりだと。
しかし、ここで人類は終わらなかった。人類は遺伝子にアンデットと戦う術を少しずつ刻んでいったのだ。
それが超常的能力「加護」。12歳を迎えた子供がまれに発現するものだ。しかし「加護」の持ち主であっても、その力を引き出せるものは少なかった。
「戦士の加護」をか弱い女の子が発言しても強大な力とはならなかった。人と加護の相性が良かった時「加護」は真の力を発揮する。
その中で「勇者の加護」を発現した少年はこの世界に生き残った人々に勇気と希望を与えた。
勇者はアンデットに果敢に立ち向かい戦った。自分のように高い戦闘能力を持った人とパーティーを組み、次々とアンデットを駆逐していった。
その姿に感化された人々が、加護の有無にかかわらず、冒険者の数は劇的に増えた。誰もが、人類の希望である勇者に憧れたのだ。
その中、初代勇者の死は人々の不安を煽った。初代勇者がついにアンデットの軍勢の前に膝をついたのだ。しかし、1年も待たずして2代目勇者の加護は現れた。先代と変わらない強さをもっていた。
初代勇者の誕生から1500年。偉業だ。かつて、4分の3も侵略されていたといわれる人界は彼等と、彼等によって感化され立ち上がった多くの戦士によって半分まで取り返したのだ。
◆◆◆
夜の街は賑やかだ。王都サントヘルム。今の人類の中で一番大きな場所だ。今日は特に勇者パーティーの帰還で街はお祭り騒ぎだった。
そこらじゅうで酔っ払いなどを見かける。実際酔っ払いなどはこのサントヘルムにも日常的にいるのだが、今日はたかが外れたようにみなが飲みふけって騒いでいた。
そんな喧騒の中を、勇者パーティーのメンバーであるクラン・ヴィークは浮かない顔で歩く。いや、元勇者パーティーのメンバーといった方が適切か。
「俺たちのパーティーにお前はもういらないから悪いけど急いで出て行ってもらえるか?」
109代「勇者の加護」の持ち主でありヴィークの古くからの知り合いでもあるリグ・テイトはヴィークにそう言った。
いわゆる戦力外通告。ほかの仲間たちもニヤニヤしながらヴィークをみている。なるほど、ヴィークの居場所はここにはないらしい。
ヴィークの勇者パーティーでの役割は魔法での仲間の支援だった。そう、人々は魔法を使うことが出来る。4000年前から途切れることなく伝わる先人たちの知恵だ。
しかし、魔法を使うには魔力が必要であり、その絶対量は個人によってバラバラで、同じ魔法でも魔力の量によって威力などに差があった。
そして何よりどれだけの魔力があっても魔法適正がないと魔法は使用出来ない。高い魔力を持っているのに魔法を使えないという宝の持ち腐れもよくあった。
火を灯したり、水を生成したり、傷を癒すことだって出来る。しかし、その応用は難しく二重魔法を使える者は少ない。三重魔法なんてめった滅多に見られるものではないのだが、ヴィークは四重魔法を使いこなす事が出来た。
それに加えて「完璧なる魔法の使い手」の加護の持ち主である。いや、それ故の四重魔法だということは自分が一番分かっていた。
優れた加護を持つヴィークだが絶対的な魔力量がいささか少なかった。いくら優秀な魔法を作り出したとして威力自体が弱ければあまり意味というものは無い。はっきり言って力不足である。
ほかのメンバーが腕を上げるなか、限られた魔力量しかないヴィークは効率的なサポートに尽力していた。役に立っている、パーティーに必要な人材でいる、そう思っていた。しかし、それは自惚れだったらしい。
ヴィークは王城を後にし、トボトボと街の中を歩いていた。行く当てを無くしたヴィークはこれからどうしようか悩んでいた。
「うーん。すること無くなったなぁ。これからどうしよう」
この街からでて、どこかでひっそり暮らしていこう。そう決めた。
そして、ヴィークの頭に浮かんだのは自分の義理の妹であるアインの顔だった。自分の唯一の味方でいてくれた人。自分が絶対に守りたいと思った人。ずっと一緒にいたいと思った人。それがアインだった。
13歳で勇者パーティーに参加させられてから5年間。まともに会って会話したのは2,3回、それも3年以上前のことだった。
「アインに……会いたい……」
ヴィークの足は自然とアインのいるであろう家の方へ進みだす。今、ヴィークたちの両親は王城での勇者帰還パーティーに出席している。このチャンスを逃したらもうアインといることはできないかもしれない。
「俺はアインを幸せにしたい。あんまり頼りにならないかもしれない……それでも俺は……」
◆◆◆
5分ほどでヴィークは家に着いた。家に灯りはついている。アインはいるだろうか。ヴィークはドキドキしながら玄関のドアをノックした。
トタトタと玄関に近づく音がしてガチャリとドアが開く。
そこにいたのは見間違えるはずのない最愛の人アインだった。
読んでくださりありがとうございます。九条けいです。ヴィークが強くなっていくのはちょっと後の方になります。今からはアインとのイチャイチャです。
この作品は今年のカクヨムコンテストに参加してます!もしよろしければ♡、★やレビュー感想などよろしくお願いします! 待ってます!
たくさんの★ありがとうございます! すごく嬉しくて踊ってしまいました(照)
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