第45話 食べましょう
「いらっしゃいみんな。もうお風呂は沸いてるからいつでも入れるよ」
「すみません。ありがとうございます」
ペコリと3人が頭を下げる。感謝の気持ちを忘れないのはとてもいいことだ。人と関わっていく中でこういうことが大切になってくる。
「全然良いって。これからは3人はここで暮らすんでしょ。ならこういうのは助け合い。いつか私が困ったときに助けてくれたらいいから」
人も少ないこの村では、助け合いの精神が強くある。村のみんなで助け合って生きていく。ヴィークたちの家をみんなで建てようとなっているのもこういう精神のおかげだ。
「特にヴィーク君は魔法使うのがすごいしね。期待してるよ」
もちろんヴィークが魔法を使うことが上手いことはこの村誰もがもう知っている。まだみんなの前で披露したことは無いけど、勇者パーティーのメンバーで魔法担当と言われればかなりすごいことは分かる。
それに偶然ながらにも四重魔法を使ったなんていったら魔法に精通している人は卒倒してしまうかも知れない。
そしてお風呂には先にヴィークが入ることに。疲れているでしょうっていう女の子たちの優しい気遣いだ。
「あの、ルーシーさんこれよかったら食べてください」
そして、アインがルーシーに差し出したのは何かが入った箱。それをルーシーが受け取り、中身を確認する。
「これは……? お肉?」
「そうです。そうです。これは唐揚げって言って鶏肉を揚げたものなんですよ。一つ食べてみてください」
「私も料理を何か作りたいと思ったんですけど今はアインちゃんに負けてるから」
ルーシーに食べてもらおうとアインが持ってきたものだ。上手く出来たとアインは自負してる。アリスもこれからは料理の修行も頑張るつもりだ。
「う、うん。頂いてみるよ」
ルーシーは恐る恐ると言った感じでアインお手製の唐揚げを一つ口にいれた。そして咀嚼すること2、3回。さっきまで少し不安そうだった顔はどこへやら。そのままゆっくりと味わうように噛んで飲み込むと次の唐揚げに手が伸びていた。
「これ、すっごい美味しい! ほんとに美味しいよアインちゃん! すごいすごい! 初めて食べた! これご飯も欲しくなっちゃうね」
もうルーシーは大はしゃぎだった。唐揚げと言う初めて食べた料理が美味しくて美味しくて。コルン村でヴィークが初めて食べたときより反応が大きい感じまである。
「唐揚げだっけ? これどうやって作ったの? もし良かったら教えて貰えないかな?」
「もちろんいいですよ。これはコルン村っていうところでお兄ちゃんのお嫁さんになるための花嫁修業してた時に教えていただいたんです。お兄ちゃんも喜んでくれて……嬉しかったなぁ」
「はい、甘いエピソード頂きましたぁ! 花嫁修業って何よ。どれだけアインちゃんヴィーク君のこと好きなの」
もうこの時点で砂糖を吐きそうなルーシー。でも実際は言っていないだけでもっと甘いエピソードなんて山ほどある。例えばあれとか、これとか。
「言葉では表せないくらいに大好きです」
「私だって大好きだもん! 大好きっ! ヴィークくん!」
それで大人しかったアリスも大きな声で自分の想いを口にしたところで。
「はいそこまで。2人とも恋人とかがいない私に見せつけちゃってくれるねぇ」
結構本気でそこの辺りを気にしているらしいルーシーが恐ろしいほどの圧を掛けた。でもそれは一瞬ですぐにいつもの優しそうなルーシーに戻る。
「まあ恋人とかは追々作るとして」
((まだ作らないんだ))
「アインちゃんアリスちゃん、もう我慢できない! 唐揚げ早く食べたいからご飯にしよう! ほらほら、お汁とかは作り置きがあるし、白米ももう炊けてるからさ。ほらほら座って座って」
「あのお風呂は……?」
「それにヴィークくんまだ入ったばっかりですよ?」
ヴィークたちはお風呂に入りに来ただけでご飯を食べに来たわけではない。アリスたちはテントに戻ってからまたアインに作ってもらおうと思っていたのだが。
「ヴィークくんは後で食べればいいから。ささっ。ご飯は冷めたらだめだから。後でまたアインちゃんが作ってあげれば喜ぶよ」
半ば強引に座らされた2人はそのままテキパキとご飯をよそうルーシーを見ているだけだった。そして準備が出来たルーシーも椅子に座ってさあ一緒にご飯開始!
「いただきます!」
ぱくっと唐揚げを頬張るとルーシーは幸せそうな顔へ。
「う~んアインちゃんの唐揚げ最高!」
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