第44話 注意してください
「おお久しぶりだねヴィーク君。それでこちらのお嬢さんはたちは……?」
「あのですね……」
さっきと同じようにこれまでの経緯を説明する。
ここは村の広場。村のみんなが集まってヴィークの話を聞いていた。村人は全員で100人くらいでコルン村より人口はかなり少ない。
「なるほど。理由は理解できました。なら今日からヴィーク君とアインちゃん、アリスちゃんはこの村の住人です。他のみんなもいいですか?」
村長からの言葉に誰からも反対意見は無く、むしろ大歓迎といった形で無事に3人はこの村で暮らしていく仲間となった。
「みなさんよろしくお願いします」
ペコリと3人が頭を下げるとみんなから大きな拍手が。
「それじゃあまずは3人の新しい家を作らないといけないですね。かなり時間かかるとは思いますけど、みんなで力合わせて頑張りましょう」
「ありがとうございます。それで一つ言っておきたいことがあります」
「なんですかな?」
「俺たちがここに来るまでにアンデットに出合いました。死霊使いと巨大スケルトンです。その場で倒しましたがいろいろと思うことがありまして」
ヴィークはそのアンデットが絶対にいるはずの無いところにいたこと。「あのお方」という謎の言葉を言っていたことを話した。
「なるほど。今何か分からない者が水面下で何かしているのでしょう。ヴィーク君の発言以外情報がありませんがとにかくみんな警戒はしておいてくださいね。ここは前線から遠く離れているとはいえ、一番前線から近いところにある村ですから。それに遥か遠い場所でもアンデットが確認されているということはどこで遭遇してもおかしくありません」
村のみんなの顔が引き締まった。もしものことがあれば自分たちでこの村を守らないといけない。そんな覚悟、確認をしているように見えた。
「さて、それじゃあこれで集会は終わりです。はい解散」
ここでみんな別れて各自自分の家に戻って行く。ここで声を掛けてきたのはルーシーだ。
「本当に家に来なくていいの? 部屋なら余ってるし遠慮しなくてもいいんだよ?」
「はい、大丈夫ですよ。もうテントは張ってるので。明日から本格的に家をどうするとか考えますけどそれまではテント張ってそこで暮らします。ただ……一つだけお願いが」
ここで急に真剣な眼差しをしたヴィーク。横のアインも真剣な目でルーシーを見ていた。アリスも祈るようにルーシーを見つめた。
緊張が走る中、ヴィークが発した言葉は
「あの……お風呂だけ貸して貰えませんか?」
ヴィークがそういえばルーシーは大きな声で笑い出した。それもお腹を抱えるくらいに。
「あははは! 全然いいよ! 3人がめっちゃ真剣な目で見てくるからさ、私何かすっごいこと言われるのかと思っちゃったよ」
「俺たちそんな感じでした? でもとにかくありがとうございます。お風呂はやっぱり入りたくて」
「それは分かるよ。私も遠くへ出かけてしばらくお風呂入れなかったときお風呂のありがたみを知ったんだよ。アリスちゃんも、アインちゃんも可愛い女の子だからやっぱりお風呂は要るよね」
こくこくと頷く女の子たち。女の子はやはりお風呂好きなんだろうか。
そこでルーシーと別れた3人はテントへ戻っていた。微笑ましく今日のことを喋っている。
「どうだ2人とも。ここは気に入ってくれた?」
「うんっ! 私この村大好き。とっても綺麗で人たちも優しそうで。ヴィークのこと知ってたしね」
「私もすっごくいい場所だと思うよ。こんなにいい場所があるなんてびっくりしちゃった」
「それは良かったよ。それで俺たちの家を建てないといけないけど、どうしたいとかある?」
「そっか! 私たちの新しい家!」
「ついに私たちの愛のっ……!」
ヴィークが新しい家の話をすると大はしゃぎだ。それだけ自分たちの家というものが魅力的なのだろう。
誰もいないからあんなことやこんなことができるとかそう言うことではないのだ。
「そんなに大きくは出来ないけど、しっかりした家を作りたい。俺たちがずっと一緒にいるための場所だから」
「そうだね。ってそろそろルーシーさんがお風呂用意してくれてるから行かないと! お兄ちゃん。一緒に入る?」
なんともあざとい。花嫁修業を終えたあとしっかり成長しているようだ。
結局、ヴィークは1人で入って、アインとアリスが一緒に入ることになったらしい。
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