第7話 聖女さまと共に
「なるほど。つまり聖女さまは俺がお別れの挨拶をしてないからわざわざここまで来られたっていうことでしょうか?」
「そうですよ。急にいなくなるからびっくりしちゃいました」
アリスが事情を説明するとヴィークたちはうーんと言いながらも納得したようだった。
「じゃあ聖女さまはこれからまた王都に戻るんですよね? お兄ちゃんにちょっと用事があっただけなんですよね?」
これから2人きりのイチャイチャライフを送ろうと思っていたアインにとってそこはかなり重要なポイントだ。
ただ内心は安心していた。だって目の前にいる人は聖女アリスでこんな場所にいていい人ではないからだ。
そうアインは思っていたのに……
「いえ、私はもう聖女アリスではないのです。これからは貴方たちについていきます。だって……えへへ」
「はっ!?」
アインの恋愛センサーがピンピン反応している。これはマズイと。
だってヴィークと会った瞬間、アリスの顔が恋する自分とそっくりな顔になっていたから。
そしてさすがにそれはヴィークも驚きを隠せていない。聖女がどれだけ国民から重宝されているか、そんなこと本人が1番理解しているはずなのに。
「聖女さま。流石に冗談が過ぎます。護衛の近衛兵はどこにいるのですか? 聖女さまお一人で来られたわけではないでしょう?」
「アリスとお呼びください」
「え?」
「アリスとお呼びくださいね。ヴィークさん。アインさんも気軽にアリスと呼んでください。もう私は聖女ではないのですし、そんな他人行儀な感じは嫌です」
「今はそんな話はどっちでもよくて早く王都に戻らないと日も暮れますから」
「だからアリスとお呼びください。そして私はさっきも言った通りヴィークさんとアインさんと一緒に居たいのです」
「しかし……」
「わかりましたアリスさん」
アインが言葉を発したかと思ったらまさかのアリスの同行を認めてしまった。
「ちょっと待ってよアイン。この人は……」
「分かってるよお兄ちゃん。でもアリスさんはもう1人の女の子なんだよ」
そう言うとアインはアリスの方に向き直る。
「ただ私、絶対に負けませんから。相手がどんな人でも私は絶対に」
挑戦的なアインの宣言にアリスもまた同じような表情でアインに対峙する。
「私も負ける気はないよ。どっちが勝っても恨みっこなし。でもそれは抜きにしてアインちゃんとは仲良くしたいな。2人の話も聞いてみたいしね」
「そうですね。アリスちゃんがもう止めてって言っちゃうくらい沢山話しちゃいますから」
「え? 2人ともこれはどうなったの?」
急激な展開についていけない男ヴィークと、何も言わなくても通じ合った女の子2人。
そして本当にアリスは2人と旅をしていくことになったのだった。
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