第8話 料理しまーす

「それじゃあ3人分の食材を採らないと。日も暮れそうだし早くしないと危ない」


「そうだねお兄ちゃん! じゃあ私はこっちの方に!」


 そう言ってひょいっとヴィークの右腕に自分の腕を絡めるアイン。その顔はとても嬉しそう。そしてフッとアリスの方を向いて得意げな顔をして挑発する。


「あ、ずるいです! なら私はこっちに!」


 と、次はアリスが負けじとアインとは反対方向の腕にしがみつく。さらにアインより大きな果実をヴィークに軽く当てて誘惑を開始する。


「ち、ちょっとアリスちゃん! それは卑怯!」


「なんのことですか? それよりヴィークさんどうですか? やっぱりアインちゃんより私の方が良いですよね?」


「あ、いや、その……」


 可愛い女の子2人にこんなことされて平気でいられるほどヴィークは経験豊富でも耐性付きでもなかった。


 どれだけ勇者パーティーの時に強敵に遭っても落ち着いていられたが、これには耐えれそうにない。それにどっちが良いかなどそう簡単には決め切れることではない。


 今はちょっとアリスの果実に意識が向いてしまってはいるけれども。


「こ、これじゃあ山で歩くの危ないからとにかく2人とも離れようか!」


 そんなヴィークがとった策は2人から離れるだった。





 そしてその後、1時間ほど山を探した。食べられそうな食材を毒の有無だけを教えてくれる魔法「毒判定ポイズンジャッジ」を使って調べていったのだが。


 そんなに毒のあるものは無くあちこちにきのこや果物、薬草までもがあった。人の手が入っていない山はなんでも揃う八百屋みたい。


「うーん。かなり採れたな。今日だけじゃ食べられん気がする」


 もうテントに戻ってとってきた山菜とかを眺める。ほんとにすごい量だ。今回の食事だけでは食べきれない量を採取してしまったことに少し後悔しつつ、アインとアリスと楽しい時間を過ごせたことが嬉しいと思ったヴィークだった。


「今日は俺がご飯を作ろう。いいなアイン、アリスさん?」


「私も作りたい!お兄ちゃんと一緒にご飯作りたいの」


 今日はヴィークが作ろうと思ってたんだがアインも作りたいというのなら断る理由もない。


「ちょっと待ってヴィークさん! 私もお手伝いします!」


「手伝ってくれるのはすごく嬉しいけどアリスさんって料理ってしたことあるんですか?」


「うっ」


 残念ながらアリスは聖女の加護を授かってからずっと王城に居たため料理スキルは皆無だ。


「もう夜になってますし今回は俺たちに任せてください」


「そうそう。今回は私たちで作るからアリスちゃんは大人しく待っててね〜」


「くぅ〜そう言われたら仕方ありません。今回は我慢します」


 そう言ったアリスに勝ち誇った表情を向けるアインにアリスは反撃の一撃。


「なら今度ヴィークさん私に料理を教えてください! そしてヴィークさんに私の手料理を食べて欲しいのです」


「それはずるいよ! 私だって教えて欲しい!」


 羨ましいと抗議するアインに次はアリスが得意げな顔になる。


 そんなやりとりを見ながらヴィークはこのほのぼのとした雰囲気を楽しんでいた。




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