第6話 聖女さまゴー

 しばらく空を飛んでいるとヴィークがある異変に気付いた。


「なんでこんなところにスケルトンがいるんだ?」


「お兄ちゃんどうしたの?」


「スケルトンがいたんだ」


「え?スケルトンってアンデットの仲間だよね?」


 スケルトン自体は戦闘能力は男の大人くらいで大して強くはない。ヴィークからしたら雑魚といってもいいだろう。しかしヴィークが感じたのはなぜこの人類の地にアンデットがいるのかということだ。


 勇者パーティーがアンデットに奪われた土地を取り返したところにいたアンデットは全て死んだはずだ。そしてアンデットは自然に生まれてくるものではない。ということはこの近くにアンデットを生み出すものがいるということになる。


「いや、俺たちはただの一般人だ。アンデットについては勇者パーティーがどうにかするだろ」


 ヴィークは特に気にすることなく南にある目的の村へ向かった。


 誰も予想しなかっただろう。今水面下でまたアンデットが猛威を振るう準備をしたいることに。




 ◆◆◆




「アイン。あそこらへんで今日は泊まろう。もうそろそろ夜になるから」


 ヴィークたちは途中休憩を挟みながら空をゆっくり飛んでいた。ただ人に見つからないように少し山の方を飛んだため何かすごいものがあるわけでもなかった。いうなら山!山!山!っていう感じ。


 ただアインと喋るだけ。だけど話が尽きることはなかった。アインと話すのは他の誰と喋ることより楽しい。アインもそう思っていた。


「お兄ちゃん。どうやって泊まるの?このまま野宿?」


「そうなるな。でも心配無用。テントを張ってそこで寝るんだよ」


 ヴィークはそう言ってマジックボックスから大きなシートと木の棒を出す。そしてさっさとテントの土台を組み立てていく。そしてテントを張った。これまでの時間ものの5分。勇者パーティーのときからずっとやってきたことだからあっという間に出来る。


「お兄ちゃんすごいね。すぐにできちゃった」


「これくらいならアインもすぐにできるようになるよ。次からは教えてあげるから一緒にやろう」


 アインはとても喜んでいた。いちおう予定ではまだまだ目的の村まではかかるのでアインが慣れるくらいまではいけるだろう。ヴィークもアインにテントの張りかたを教えるのが楽しみになった。


「さてご飯を作らないと。うーん。食材は大事に使いたいからなぁ。ちょっと山菜とか探してみようか」


 さっきの街で調味料とか肉とかをけっこう買っておいたが、非常用とかも考えるとばくばく食べるわけにもいかない。


 という事で日が完全に隠れるまでの後2時間。ご飯作ったりするのを考えて1時間。食べれる物を探すことにした。


 食べ物を探すために山に入ろうとしたその瞬間、上から大きな声が聞こえてきた。


「ちょっと待ったあああ!!!」


 ビューンと音がして2人の前に聖女アリスが盛大に登場した。突然の登場に呆然とする2人。


「お久しぶりですね。ヴィーク様。これまでの勇者パーティーでの活躍見ておりました。本当にお疲れ様でした」


 ペコリと綺麗な一礼をしてからニッコリ笑顔を2人に向ける。


 普通ならここで自分たちも頭を下げたり何か言葉を発したりするものなのだがヴィークたちは肩を振るわせるだけでなにも言わなかった。


「なにかございましたか?」


 私に変なところがありますか? と言わんばかりのアリスの反応についにヴィークは我慢の限界だった。


「さすがにいろいろと無理があるでしょう!?」


 もっと言いたいことはたくさんあるけどまず口から出た言葉はこれだった。

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