第25話 おかえりなさい!

 なんだかんだあったがとりあえず今日の作業は終わった。


 アインはしばらくの間ヴィークの横にいたが晩御飯の支度があるからと家に戻って行った。


 アリスもいやいやながらもスカーレットに引きずられながら自分の修行へと戻っていった。


「ヴィークさん今日はお疲れ様でした。どうですか? こうやって野菜を作ってるんですよ」


 今はサムと家への帰宅中。サムにそんな疲れた様子はないがヴィークはくたくた。


「普段、売られていた野菜がこんなに手間のかかったものだったなんて……王都で食べ物を粗末にしてる富裕層に言ってやりたいですね」


「ははは。そうですね。私たちは王都に何かを売ってはいませんが、粗末にするのはよくないですね」


 そんな話をしていたらもう家についてしまった。何やら良い匂いが辺りに立ち込めていいる。


「うーん良い匂いですね。何を作ってくれているんでしょうね」


「楽しみですね。なんかわくわくします」



 さあ、今日の晩御飯はなんだろう。ヴィークとサムが一斉に玄関の扉をドーンと開けた。そこで2人が目にしたものとは。


「おぉ! 匂いだけじゃわからん!」


 第一声を上げたヴィーク。ドアを開けたが料理は見ることが出来なかった。匂いだけじゃわからないこともある。


 そしてヴィークが帰ってきたことを知ったアインが勢いよくお出迎えに来た。


「お帰りなさいお兄ちゃん! ご飯にする? お風呂にする? それとも わ た し?」


 これぞこの村に伝わる伝統の一撃必殺。エプロンでの出迎えからのこの一撃に耐えた男はいない。これは、勇者パーティーのメンバーで魔法を使うのが得意なヴィークも例外ではなかった。


「くっ、アインが可愛すぎる。このまま抱きしめたいくらいに」


 クリティカルヒットだった。どうしようもないくらいにヴィークのハートにクリティカルヒット。


「えっ? お兄ちゃん今なんて? お兄ちゃんが私を? あわわわっ。まだ心の準備が出来てないよ。あわわわわっ」


 しかし、攻撃力に今ステータスを全振りしていたアインはこのヴィークのカウンターをもろに食らってしまった。自分からヴィークに何かするのはいいが、ヴィークからされるのはまだ慣れないらしい。


 玄関でなんともいえない甘い雰囲気が出来上がった。そしてこの2人の空間をぶち壊す人物が乱入……


 しかしいつまで経っても乱入者は入ってこなかった。


(ちょっとちょっと! スカーレットさん! アインちゃんにすっごく差をつけられたんだけど!?)


 ばっちり陰でアインとヴィークのやりとりを見ていたアリス。スカーレットもエルがここまでのことをアインに教えると思っていなかったらしく、しまったという顔をしている。


(ここまで過激なことするとは思ってなかったの! もうこうなったら不意打ち狙ってキスでもしちゃいなさいよアリスちゃん)


(無理に決まってるでしょう!? それに私はもっとロマンチックで素敵な雰囲気でファーストキスはしたいの)


 やいやいとスカーレットと言い合うアリス。アリスはすごく可愛い女の子としての願望があるらしい。


「なぁアイン。2人はなにをしてるんだ?」


「さぁ。2人は放っておいて私と一緒にご飯食べよ。私って選択肢もあるよ?」


「そ、それは今度で……」


「そっそうなんだっ。今度ならいいんだ。えへへっ。もっとしっかり準備しておくね」


「お手柔らかにお願いします」


 今日はアイン、エルの圧倒的な勝利だったようだ。



 ◆◆◆



「アインちゃんすごく良かったわよ! もうヴィーク君は落ちたも同然よ。さっきの言葉がその証拠」


「そ、そうでしょうか。でもそうなら嬉しいです」


 エル直伝のさっきのは完璧だった。そしてスカーレットは自分の家に帰ってすることがあるらしい。たぶん秘策を伝授するんだろう。


「それにしても2人ともウブすぎるわよ」


「えへへ。お兄ちゃんにあんなこと言われるとは思ってなくて。ちょっとびっくりしちゃいました」


「それは仕方ないわね。でもいい感じよ」


 自分の恋を成功させた先輩からなありがたいお言葉。


(それにしてもすぐ告白したらすぐにヴィーク君落ちそうなのに)


 そんなことを内心思ってるなんてアインが気付くはずもなかった。





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 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

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