第47話 朝から
「おはようアイン。よく眠れた? もう朝だぞ」
マンテ村に朝がやって来た。
一度アインに先に起きられて寝顔を見られてしまって以降、毎日アインより早く起きることができている。恥ずかしいからなのだが、実際はアインとアリスは偶にヴィークが寝た後にランタンの灯りを頼りにしてヴィークの顔を見ている時がある。
そして、ヴィークの顔を見てにやーっとするのだ。これをヴィークが知る由もない。いつかばれたら面白いのだが。
「うーん……おはようヴィーク……」
「えっ?」
「えっ?」
唐突に起きたアインから漏れたヴィークという言葉。いつもお兄ちゃんと呼ぶから違和感が。別に使っちゃだめとか言っていないので問題はないのだが。
「なんか初めて聞いたなヴィークって。新鮮だからもう一度言ってくれない?」
ヴィークがからかうように言うとアインは顔を真っ赤にさせてぽすぽすと可愛らしくヴィークの胸を叩く。そしてそのままぽを向いてしまった。
「ごめんってアイン。ただ本当に初めてそうやって言ってくれたからさ」
そっぽを向くアインの頭をそっと撫でると上がっていた肩がスッと下がる。とても嬉しいのだ。
ちなみにアリスは先に起きて洗濯をしている。
ぽわぽわとなっているがしばらくしたらブンブンと首を振ってまだ怒ってるよアピール。それと同時にヴィークが頭を撫でるのをやめるとシュンとした感じになってそそくさともっと近くに寄って来る。
(ほんと可愛い。顔も仕草も全部が可愛い。これってどういう感情なんだろ)
この胸の高鳴りは。ドキドキするような感覚はなんなんだろう。しかし、今結論が出ることはなかった。
「別にヴィークって言ってもいいんだぞ? 恥ずかしがらないでもいいじゃん」
兄妹に上下関係なんてない。妹のアインがヴィークと呼び捨てにしてもなんの問題もない。
「ダメだよ。だって私だけのお兄ちゃんなんだもん。お兄ちゃんっていうのは私だけしか言えないんだから」
もしアリスが妹になったらお兄ちゃんって呼ばれるのかな。そんなことを考えた時だった。
「あーっ! 今、アリスちゃん妹になったらとか考えたでしょ!」
こっちを向いたアインは顔をぷくーっと膨らませてヴィークに抗議しだす。
「まあ……うん」
「もうなんてこと考えるの。お兄ちゃんは私だけが妹じゃ不満なの? まだ妹が欲しいの?」
「そんなわけないよ。アインが妹で俺は満足だよ。俺の妹はアイン1人で十分だ」
「えへへっ。ありがとう……? って私は妹のままなの?」
まさかのアインの発言にびっくりする。ここはこれで落ち着くところだと思ったのに。
「アインが何言ってるのかよく分からないよ。アインは俺の大切な妹だよ。これからもずっと」
「もうっ! 嬉しいけど……! そうじゃない! 私、もうちょっと寝るから起こさないでよね!」
女心がわかってないヴィークによりぷんぷんのヴィーク。結局朝から賑やかになるのだった。
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