第11話 朝の出来事
「おはよう、お兄ちゃん!」
「ん、ん〜」
アインがヴィークをゆさゆさと揺さぶる。もう朝になってしまったようだ。アインがヴィークよりも早く起きてしまうことは昔ならなかった。いつもアインをヴィークが起こしていたはずなのに。
「ようやっと起きた。お兄ちゃんおはよう」
「おはよう、まさかアインに起こされることになっちゃうなんてね」
勇者パーティーの時も小さい頃あの家にいた時だろうとそうでなかろうとここまで熟睡することはなかった。でも今日はここまで寝ることができたのだ。やっぱりアインがいたからかな。とヴィークは勝手に考えた。
「お兄ちゃん、寝顔可愛かったよ〜」
アインがとても嬉しそうに報告する。何を隠そうヴィークの寝顔を見たのはこれが初めてなのだ。いつも自分より遅く寝て早く起きる。なのでアインはヴィークの寝顔を見たことがなかった。
初めて見たヴィークの寝顔。それはアインの中では感動と言ってもいいくらいのものだった。それもあってかアインは朝から元気いっぱいだ。
「アインに寝顔見られるなんて……もうお婿に行けないっ」
「お兄ちゃんは私がお婿さんに貰うんだもん! 心配ないよ」
朝から兄妹の仲の良い声が響いていた。兄妹の会話としてどうなのかは置いておいて……
「そういえばアリスは?」
ふと横に目を向けるとまだスヤスヤと寝息をたてるアリスがいた。その顔はとても幸せそうで。ぎゅっとヴィークの腕を掴んでいる。
「こういうの見るとちょっと意地悪したくなるよね。ほっぺたツンツンしたくなっちゃう」
「おいおいアイン流石にやめておいた方が良いと思うぞ」
「だってお兄ちゃんの腕ずっと掴んでるし、そろそろ離れてくれないとお兄ちゃんとイチャイチャ出来なくなっちゃう」
アリスが起きたらイチャイチャさせてもらえないだろうからこの朝イチのこのチャンスを逃したくないのに。
「って……ほら、片腕は空いてるから。これで許してくれ」
イチャイチャを離れ離れになっていた寂しさから構って欲しいと勘違いしたヴィークはアインの頭をそっと撫でる。
柔らかい髪をそっと撫でるとアインが気持ちよさそうに声をあげる。
「ん〜っお兄ちゃんにこうされるのすごく気持ちいい。もっと撫でて〜」
ごろごろと甘えるアインにヴィークは手が止まらない。そろそろ止めないとアリスが起きてしまうというのに。
「アインちょっと落ち着こう。アリスが起きると……」
「私が起きるとなんなの?」
「「ツッ!!??」」
そこには不機嫌そうに2人を見つめるアリスがいた。
「2人で何してるの?」
「あ、アリスちゃんおはよう。良い朝だね」
「アリスおはよう。そろそろ朝ごはん作ろうか」
「2人で何をしていたの?」
(言えない。妹の頭撫でてそれにハマりそうになってたなんて)
(言えない。抜け駆けしてお兄ちゃんに撫で撫でしてもらって蕩けてたなんて)
「私が寝てる間に2人でいいことしてたんでしょ?
まぁ今回は許してあげる。ヴィーク君の横で寝れて機嫌がいいから。それにこれはアインちゃんとの勝負で私が油断しただけだし」
アリスがこういったことによって朝の一悶着は終わった。
そして、朝食を昨日みたいに3人で作って食べた後、テントをあっという間に解体して片づける。
目的の村へ行くために空を飛ぶ準備をする。しかしまさかの事態が起こった。ヴィークたちの目の前にはなんとアンデットがいたのだ。
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