第20話 サムの発言
「ヴィークさんやっぱりすごいですね。魔法に精通しすぎてるって感じてしまいます」
「ヴィークお兄ちゃんカッコいいよ! 複雑な魔法使う時の魔法陣とか最高だよ!」
簡単な魔法。例えば光などの簡単なものは指先の周りが光るだけで一瞬で発動出来るが、ヴィークが魔法戦闘などで使っていた三重魔法は発動までに時間がかかる。
さらに魔法陣には誰にも詠めない文字が浮かび上がる。これは神の言葉だとかいろいろ言われているが未だに誰にも解っていない。
ちなみに高位の魔法。つまり四重、五重となるに連れて魔法陣は大きくなっていくらしい。古い文献に記載されていただけで実際に四重魔法を使る人は今の世界には存在しない。
あの勇者テイトですら魔法として使えるのは二重魔法までだ。
「ヴィークお兄ちゃん。ちょっと喉渇いたからお家帰ってお水飲んでくるね。サムさんとヴィークお兄ちゃんはいる?」
「私は大丈夫だよ。歳をとったせいかあんまり喉が渇かなくなってね」
「俺も今はいいかな。ユリンちゃんもしっかり休憩しておいてね。簡単な魔法でも最初は精神力とかすごく使うから」
「うん。分かったよ!」
ユリンは元気の良い返事をして家に戻って行く。ユリンを見送った後、2人は原っぱに座る。そしてしばらくしてサムがヴィークに話かけた。
「ヴィークさんって勇者ってご存知ですか?」
「えっ?」
ドキッとしたヴィークだったがサムは自分が元勇者パーティーのメンバーだったことに気付いて質問しているわけではないと雰囲気などから分かった。
ほっと一安心して答える。
「知ってますよ。人類をアンデットの手から救うヒーローです。一言で言うと最強です」
自分が知っている勇者はテイトしかいない。たしかにテイトは戦う時に無駄な動作は多いし結構自分勝手だったけれど近くでみて分かった。勇者こそ最強だと。
しかし、サムからはそうですかと一言だけ。ヴィークからしたらもっといろいろ聞かれると思っていたのでちょっと拍子抜け。
そこからしばらく2人とも黙ったままの静かな時間が流れた後、サムが口を開いた。
「ヴィークさんが勇者に対してどのような思いを持っているのか判らないのでこれは私の独り言として聞き流して貰いたいのですが、私は勇者はこの世界を救う程の力はないと思うのです。アンデット側も我々人類を滅ぼす程の力はない。なんでしょう。言葉では言い難いのですが世界を変えるのはもっと別の人だと感じて」
急にスケールの大きい話をされて戸惑うヴィークにサムも苦笑いをしながら腰をゆっくりと上げる。
「これはちょっとした私の思ったことですから気にしないでくださいね。ただ私はヴィークさんみたいな人がもしかしたら世界を変えるのかもとか思ってます」
「あはは……そうだったらすごいですね」
サムのぶっ飛んだ考えにヴィークはこう返すしか出来なかった。
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