第38話 釣ります!

「それでそれで。どうやって魚釣りってするの?」


 動けるようになった3人はさっきの川に来ていた。川を泳ぐ魚を見ながらアリスはワクワクしながらヴィークに聞いた。


「ふふん。どうやってすると思う?」


「私は見たことないし、よく分からないけどそーっと近づいて……どばぁ! みたいな感じ?」


「ブッブー。残念不正解だよ」


「ほんとアリスちゃんそんなの無理に決まってるでしょ?」


「ならどうやってやるのよ。アインちん分かるの?」


 得意そうにアリスを小馬鹿にするアインにアリスが問うた。


「そんなの決まってるでしょ。網で掬うのよ」



「うーん。2人とも違うかな……じゃあ、とりあえず 身長くらいある……そうだな。竹を切ってこよっか。近くにあるしね」


 近くに竹が生えてるのでそれを切って、先端に糸を結ぶ。糸の結んでない方の先端に丸くした針を付ければ完成だ。


「こんな簡単なもので魚が来るの? 絶対これじゃ魚捕れない気がするよ」


 即席で作った竿を見てこれで釣れるものかとヴィークを小馬鹿にする。確かに魚釣りを知らない人ならこれを見たらそう思うだろう。


「ふふん。それはどうかな。あとはエサに少し残しておいた肉を付けてっと。じゃやってみるよ」


 ちゃぷんと針の付いたエサを垂らす。あとはこのままじっと待つだけ。


 しばらくして竿にピクッとした感触が。魚がエサをつついている証拠だ。竿を引き揚げたい気持ちをぎゅっと我慢し魚がしっかり針にかかるのを待つ。


 そしてついにその時が来た。さっきとは違う、ビクッとした強い感触が竿から伝わってくる。


「よしっ! かかった!」


 竿をグッと引き揚げればそこには30センチくらいの大きな魚がかかっていた。陸に揚げられた魚は勢いよくピチピチ跳ねている。


「ほらな。どうだ2人とも! すごいだろ!」


 釣った魚を持ち上げ得意そうにそう言うヴィークに2人はびっくりした。


「ヴィークくんすごい凄い! ほんとに釣れたね! 私もやってみたい!」


「お兄ちゃん何か魔法使ったのかと思っちゃった」


「おいおいアイン。次はアリスも一緒にやってみよう。これ結構楽しいんだよ」


 さっきみたいにエサを付けて川へ。今度はアリスが竿を持ってヴィークがその手を後ろから握る。自然に密着するこの体勢になって気が付いた。


「えへへ。なんかこうやってくっつくとすごいいい。もうちょっとぎゅーってして」


 アリスは魚釣りをイチャイチャするイベントか何かと勘違いしているようだ。今は魚そっちのけでヴィークに意識が行っている。


 アインも横で指を咥えながら羨ましそうに見ているが今はアリスの番と自分に言い聞かせる。


「こらこらアリス。ふざけたら危ないから。ほら、竿に集中して」


「もうっヴィークったら……照れちゃって」


「そりゃ照れちゃうに決まってる」


「嬉しい……あっ! 今なんかピクッてしたよ! 今のなに?」


「アリスちゃんに魚来たんじゃない?」


「あっ、まただ! このピクピクするの面白いね」


 アリスはさっきの感覚が良かったのかピクッとするたび楽しそうに笑っていた。


「そうだね。でもちゃんと魚がかかったときはもっとすごいよ」


「そうなの……っ!?」


 アルスが少し気を抜いた瞬間ヒット。竿が大きく揺れさっきとは全然違う感覚が伝わってくる。


「ヴィークくん! ヴィークくん! どうすればいいの!」


「大丈夫。落ち着いて。ゆっくり引き揚げるんだ。俺が付いてるから」


 大きな感覚に慌てるアリスをヴィークが落ち着かせ、2人でゆっくり引き揚げればさっきヴィークが釣ったものより一回り大きな魚がかかっていた。


「ヴィークくん! 釣れた! 釣れた!」


 釣れた魚を見て大喜びするアリスと、自分が釣ったやつより大きいことに少し悔しさを感じるヴィーク。


「ほら、こんなに大きいよ。ふふふ。私たちの初めての共同作業だったね」


「もう! そこまで! ほらほらお兄ちゃん次は私だよ!」


 そしてこのままアインに次は釣りを教えるのだった。



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