第31話 対処します

「おいおい……まじかよ……」


 ヴィークたちが家から飛び出ると正面にはヴィークたちの数倍以上あるであろうアンデットが他の家を破壊していたのだ。


 村に高い建物がないため50メートルくらい離れているアンデットの様子がよくわかる。


「でもアンデット一体だけじゃない。家を壊された人は可哀想だけど……でもこれくらいならヴィークくんの敵じゃないよ!」


 アリスは前にヤヴォスとヴィークが戦ったのを見ている。その時ヴィークは圧倒してみせた。ヴィークの実力なら全然問題ないと思っていた。


「いや……これはかなり厳しいと思う」


 しかしヴィークの顔は浮かない。それを見てアリスも不安になる。


「この敵そんなに強いの?」


「この敵の名前は巨大スケルトンって言ってさ、直接戦闘能力がめっちゃ高いわけじゃないんだけどすごい厄介なやつなんだ」


 アホそうな名前だがこのアンデットはかなり恐ろしい能力を秘めている。


 巨大スケルトンの頭蓋骨には超強力な爆弾が詰まっており倒すか頭に強い刺激を加えると爆発する仕組みになっているのだ。


「そんな。じゃあ今倒すことが出来ないってことじゃない」


「そうなんだ。こいつを倒すのは容易でもそのあとが……前なんてこいつの爆弾で山が1つ吹っ飛んだんだ」


 勇者パーティーの時は空からの遠距離攻撃とかでどうにかできていた。周りに人が住んでいなかったから。


 しかし、今は村の真ん中だ。村人たち全員を避難させてから倒すのというのも手ではあるがそれはしたくなかった。


「ここはみんなとこの思い出の場所だ。こいつの爆弾で破壊なんて。そんなことさせたくない」


 そう。ここには沢山の思い出がある。さらには美しい自然。そういうものが失われるのがヴィークは嫌だった。


「ひとまずこいつの身動きを封じてこれ以上家を壊せないようにする。ちょっと近くに行くからアリスも絶対に俺から離れないで」


「分かった」


 2人は巨大スケルトンとの距離を縮める。そしてアリスは少し離れて。ヴィークはスケルトンの腕が届くであろう距離までやってきた。


広範囲拘束エクステンソディテンクション


 ヴィークが魔法を発動させると同時に幾何学模様が巨大スケルトンの周りに浮かび上がる。そしてしばらくするとスケルトンは動かなくなった。


「よし。上手くいった。それにしてもほんと最近魔法の行使がしやすくなったな。発動時間も短くなってるし威力も上がってる。たぶんアリスがそういう魔法をかけてくれてるんだろうな」


 よく分からないが聖女であったアリスがなんらかの魔法をかけているのだろうとヴィークは考えた。さてさて本当はどうなのだろうか。


「それでこれからどうしたらいいんだ。思ってた以上にはやく対処できたから被害は今のところ少ないけど……1つ間違えるとみんな死んでしまうから」


 そう考えると冷や汗が止まらない。勇者パーティーにいた時以上に人の命がかかっていることを実感する。


「それでも俺がやらないと」


 と、ここでヴィーク1つの作戦を思いつく。ただこれは現実味がなさすぎた。


「こいつの周りに防御壁ディフェンソパレー張って爆発をその中でさせるとか……? でも俺の魔力量だとたぶん簡単に吹っ飛んでしまう」


 いい案だとは思うがこの作戦を実行するには防御壁ディフェンソパレーよりはるかに協力な防御魔法が必要だ。


 しかし、ヴィークが使う防御壁ディフェンソパレーは人類が扱える最高位の魔法。それ以上の魔法は伝説や神話級になってしまう。


「今、俺にそんな魔法を使えるだろうか」


 ヴィークの言葉は空へと消えていった。

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