第32話 ついに

「やばいっ! そろそろ魔法の効果が切れそうだ」


 ヴィークがどうしようか考えているうちに魔法の効果が弱くなってきて巨大スケルトンがギチギチと動き出した。


「ヴィークくんが! 私もヴィークくんの力にならないと! 私の聖女である私の祈り……ヴィークくんに届いて!」


 アリスは目を閉じて祈った。ヴィークがどうかこの窮地を救ってくれますようにと。


「私にできることはこれくらいだけど。でも私の。ううんみんなの祈りが少しでもヴィークに届いてくれたら」




「なんだか心が温かい」


 今横にはいないアリスそして他の村のみんな、アインの祈りがヴィークに届いている。


 特にアリスの加護「聖女」は基本王都の民全員に向けてのものだ。効果はみんなが幸せになれますようにといった目に見えて分かるものではない。


 しかし、何万人もの人へと向けられるようなそのアリスの力がヴィーク1人にそれも心の底からともなると相当効果が強くなる。


「今ならもしかしたらいけるかもしれない。あの伝説の魔法を。すごい魔力が上がってるし。そして俺は『完璧なる魔法の使い手』なんだから。俺はできる。そしてこの思い出とアインとアリスを守る」


 自分で自分を鼓舞しながらヴィークは覚悟を決める。フッと一度深呼吸。そして右手を巨大スケルトンへと向けた。


「堅牢なる城壁ドゥロムラーラ


 ヴィークが魔法を詠唱する。もし力がないものか唱えてもシーンとなるだけで何も起こらない。


 ヴィークの場合はどうだろうか。


「……」


 何も起こらない。ヴィークが向けた先の巨大スケルトンにはなんの変化もない。ヴィーク自身にも何か変わったことはない。


「やっぱり無理なのか。そりゃこんな高位の魔法俺なんかが……」


 そうヴィークが呟いた瞬間だった。


 巨大スケルトンの周りに半透明の板のような。いや、板ではない。壁のように厚く頑丈そうなものが巨大スケルトンの周りを四角く囲った。


「くはっ!? うっ……」


 それと同時にヴィークを凄まじい感覚が襲う。自分の中のものをほぼ吸い取られたような感覚。


 立っていられなくなりそうになるが最後1発。この巨大スケルトンに攻撃を撃ち込まないといけない。


(わかる……今自分が発動させてるこの壁の強度。巨大スケルトンの爆破に耐えられるかどうか。そして自分の残存魔力。ギリギリ1発ってところか)


雷撃ライトニング


 力を振り絞って巨大スケルトン向けて攻撃を放つ。それは見事に巨大スケルトンの頭を撃ち抜いた。


 その瞬間大爆発が起こった。しかしヴィークの魔法のお陰で外には爆音が響いただけで被害は皆無。


「よ…良かった……なんとか……なったみたいだ

 な。あ……もう限界……」


 全ての力を出し尽くしたヴィークはそのまま地面に倒れてしまった。


 ヴィークくんっ!!


(あぁ遠くからアリスの声が聞こえる……返事したいけど今はそんな余力が……)


 ここでヴィークの意識は途絶えた。



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