第30話 非常事態

「でたでたでたああああああああああ!!!!!」


「うわわああああああああつ!!!」


 今日はヴィークたちが目的の地へと出発する日。しかしその出発に似合わない叫び声が村に響いていた。


「なにがあったんですか!?」


 気持ちの良い朝になるはずだったのに。ヴィークは飛び起きて階下にいるサムの元へと急いだ。



 ◆◆◆



「助けてくれ!! すっごいでかい骨のやつがいるんだ! そいつが俺たちを襲ってきて! 逃げてきたら村にまで来てしまって家を破壊しだしたんだ!」


 サムと合流したヴィークが家の外に出るとそこには早朝から狩りに行っていた狩りグループの男たちが涙目でサムに助けを求めた。


「こ、これは……!」


「なにをやっても効果がないんだ! 弓矢使ってみたりしたんだけど」


「だいたいあんなやつ見たことねぇよ! なんなんだよ! あれがアンデットとか言ってやつなのかよ!」


「俺たちもう終わりだ!」


 初めて見た怪物にパニックになっている人もいた。無理もないだろう。


 しかし、このまま放っておくと村は崩壊する可能性もある。死人も出てしまうかもしれない。


「はやく対処しないと! サムさんたちも危険ですから逃げてください!」


「お兄ちゃんどうしたの!?」


「ヴィークみんなが大騒ぎしてるけどなにがあったの!?」


 ここでヴィークより少し遅れてアインとアリスが一階へ降りてきた。まだこの事態が理解できていないようだ。


「アインとアリスも! サムさんと一緒に遠くへ逃げるんだ!」


「ち、ちょっとどういうこと?」


 ヴィークが簡単に説明するとアリスは覚悟を決めたようにヴィークに言った。


「分かった。私もヴィークくんと一緒に行くよ」


 これを聞いて驚く他の人たち。無理もない。アリスが戦闘に向いているとは考えられないから。


「アリスも変なこと言うんじゃない! ここは俺1人でどうにかするから!」


「ヴィークくんこそ変なこと言わないでよ!」


 ここで大きな声をあげたのはアリスだった。いつも温厚でニコニコしているアリスがこんな声を出すなんて。


「ヴィークくん1人で危険なところに行かせられるわけないでしょう。たしかに私は直接戦闘能力は全然ないけど、それでも……ヴィークくんの支援に関しては一流なんだから。私が元々王都でどうやって呼ばれてたか知ってるでしょ?」


「そうか……ならアリス。俺に力を貸して欲しい」


 アリスがここまで言ってくれるんだ。そう思ってヴィークはアリスにお願いした。


「アイン。サムさんたちの方にしっかりいるんだぞ。俺たちは大丈夫だから」


「うん。ごめんねお兄ちゃん。私、全然力ないからこんな時に何にもできない」


 そうしゅんとするアインの頭をヴィークはそっと撫でる。アインは不思議そうにヴィークの顔を見た。


「そんなことないよ。アインがいたから俺は今まであんな場所で死なずに済んだんだよ。戻るところがあったから。アインが家にいてくれたから」


「お兄ちゃん。ぐすっ。ありがとう。私はもうなにも言わないから。絶対勝ってきてね」


「あぁ。約束する。アリス準備は良いか?」


「ええもちろん。いつでもいいよ」


「じゃあ行くぞ!」





 ==


 ついにフォロワー様400名突破です! ★もたくさんありがとうございます! レビューまでして下った時には嬉し涙でいっぱいでした。これからもよろしくお願いします。

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