第17話 お風呂に入りましょう!
ユリンの家から帰って来た3人は今サムの家で言い合いをしていた。事の発端はこうだ。
エルにお風呂に入ってと言われた3人。ならアイン先入っていいよと言ったヴィークに対してアインとアリスが何故か猛反発したのである。
「いやだ! お兄ちゃんと一緒に入りたい。私たち兄妹じゃん。なんの問題もないじゃん!」
「それは、ダメだ! 問題ありまくり! 普通は兄妹でもしないから!」
「ならヴィークくん私と一緒に入ろう! 私はヴィークくんの妹じゃないからセーフだよ」
「アリスはもっとダメだろ!?」
そんな話を今までずっとしていた。一向に埒が明かないこの状況。もはやどちらかが折れるしかないないが、正しいことを言っているのはヴィークだということは明白である。
しかし、恋は盲目というのかアインもアリスも全く引くことがない。このままではやばいとサムとエルに助け舟を求める。
「大丈夫ですよ。うちのお風呂は自慢じゃなですけど結構広いので3人で入っても問題ないですよ」
グッとサムズアップしてそういうサム。いや、助け舟になってない。全然なってない。ヴィークからしたら仲間に裏切られたとまで言える。アインたちからしたらナイスすぎるだろう。
「そういうことらしいよお兄ちゃん。早くお風呂いこっ」
「え、いや、そのっ」
「ほーら。ヴィークくん行くよ。お風呂が逃げちゃう」
「お風呂は逃げないから! 俺は後でいいから〜」
ヴィークの抵抗も虚しく2人に手を引っ張られズルズルと風呂場の方へ連れて行かれてしまった。
ザバァ。桶にすくったお湯を体にかける。
「気持ちいい。風呂なんて久しぶりだからな。すごい良い」
先に服を脱いで風呂場に入ったヴィークがそんな声を漏らす。実際、勇者パーティーにいたときもそんなに風呂に入る機会はなかった。
アインと再会してからの数日間ももちろん、風呂に入る機会なんてなかった。お湯を作ってそれで洗う。そんな簡単なことしかできなかった。ちなみに、石鹸は前に街で大量に買っておいたので心配ない。
「ヴィークくんお待たせ〜」
「お兄ちゃん私も入るね」
カラカラと扉が開かれアリスとアインが入って来た。体には大きなタオルが一枚巻かれている。もちろんヴィーク巻いている。お互いタオルを巻く。これがヴィークの最後の要求だった。
2人からしたらそんなのいらないじゃんと思っていたが、ヴィークが譲らなかったので従うことにした。いざとなったら外せばいいとか思っているなんてヴィークには言えないが。
「お兄ちゃん、私が髪洗ってあげる」
「あ、ずるいよ! なら私が背中流すから」
アインがお湯をかけ終わってそんなことを言った。これは純粋にヴィークに何かしてあげたい、そんな気持ちからきているもの。
日ごろから自分を大切にして可愛がってくれる一番好きな人に何かしてあげたい。今のアインはそんな気持ちでいっぱいだった。
アリスも今までの大変なアンデットの戦いお疲れ様という気持ちを込めていた、
ヴィークもそんな気持ちを察してか(いや、絶対にそういうこと気づくはずもない)素直に洗われることにした。
シャカシャカゴシゴシと髪を洗う音が響く。
「お兄ちゃん、痒いところとかない? 私、他の人の髪洗うの初めてだからダメなところあったら教えてね」
「うん。すごい気持ちいい。全然ダメなんかじゃないよ」
「そう? なら良かった」
最後に頭からお湯をかけて石鹸を落としたら髪洗いは終わり。先に体を洗っておいたヴィークはアインのお礼を言って湯船に入ろうとした。しかし、アリスに腕をつかまれて止められてしまった。
「ヴィークく〜ん? 次は私の番だよ? まさか忘れてたわけじゃあないよね?」
「あ、あはは。忘れてるわけないだろ? それじゃあお願いしようかな」
こうしてアリスに背中を洗われるヴィークだった。
「ねぇお兄ちゃん次は私の髪を洗って欲しいな」
さっきの思いはどこへやら。心を込めてヴィークの髪を洗ったら次は自分もされたくなったらしい。
ヴィークも驚いていたが、自分だけしてもらうのも悪いということで洗ってあげることにした。
「それじゃ水流すぞ」
ゆっくりゆっくり水をかけていく。そして優しく、髪が傷まないように丁寧に。最後にさっきと同様にお湯で流せば終わりだ。そつなくこなすヴィークだが、実際は緊張でいっぱいだった。
(これで大丈夫だよな? 間違ったことしてないよな?)
年頃のヴィークは女の子と一緒に風呂に入るだけでも緊張でドキドキなのに。こんなことをするなんて。
ヴィークは恥ずかしさとかそんな気持ちを隠すために湯船に入ろうとする。しかしやっぱり……
「ヴィークくん次はわ、た、し」
こうして2人ともの髪を洗うことになったのだった。
読んでくださってありがとうございます。ここまでたくさんの★や応援をいただけたことに感謝しかありません。本当にありがとうございます! これからもどんどん更新するのでよろしくお願いします!
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