第18話 お風呂続き

「ふぅ。気持ちいいねお兄ちゃん。こんな広いお風呂私初めて」


「ここら辺は水が豊富だからな。魔法で作った水じゃなくて自然の水なんて王都じゃなかなか手に入らないよ」


「確かに王宮にも水を作る専門の魔法職の人がいたと思うよ。私は全然会ったことないけどね」


 今日ユリンの家に行くときとかに見たがこの村は湖の岸辺で水がとても豊富にある。そしてその水が美味い。


 水が豊富だからこそこんなに大量の水を風呂に使えるのだろう。王都では自然の水なんてあまりなかったし魔法で作った水も風呂に使うほど有り余っていなかった。


「ねぇお兄ちゃん。こうやって一緒に入るのって久しぶりだね。私、どうかな? 女の子っぽくなってる?」


 アインからの一撃。これは答え方にすごく困る質問だ。「うん、とてもいい感じ」と言っても変態感あるし、「全然なってない」なんて言えないし。


 女の子に言うには全部レベルが高い。何故かこんな平穏な風呂場で窮地に立たされるヴィークだった。そして、ここは風呂場。逃げ道の無い密室空間。もはやヴィークに言わずに逃げるなどという選択肢は残されていなかった。


 言った張本人にそんな深い戦略はなくただヴィークにとって自分がどう映っているの知りたかっただけ。「いいよ」と言われれば嬉しいし、「なってない」と言われればエルや、ユリンのお母さんの力を借りて女子力を上げればいいだけのこと。


「早く教えて欲しいな。お兄ちゃん」


 覚悟を決めた。言うしかない。ヴィークは思い切っていった。


「すごい可愛くなったよ、アイン。昔も可愛かったけど今の方が少し大人っぽくて俺は好きだ」


「ほ、ほんとにっ!? えへへ。とっても嬉しい! お兄ちゃんもとってもかっこいいよ!」


 可愛いと言われて嬉しがるアインと、かっこいいと言われて照れているヴィーク。やはり、好きな人からそう言われるのはお互い嬉しいようだ。


「ねぇヴィークくん。私はどうかな? ていうか私がどうしてここまでヴィークくんたちを追いかけたか分かる?」


「え? 確かに……俺がお別れの挨拶をしてないって話からなんか強引に一緒に行くことになったような……」


「そういうことじゃないでしょ! もう。そんな鈍感なところも良いんだけどさ」


 そんな話をしながらしばらく風呂を堪能して風呂場を後にした。体の拭き合いとかは、当たり前であるがしていない。2人はしようとしていたらしいが。


「そうそう。お兄ちゃんって鈍感だよね。アリスちゃんの魔法でどうにか出来ないの?」


 そしてヴィークがお風呂を上がった後、アインとアリスは2人お風呂場に残って話し合っていた。


「私の魔法ってそういうタイプじゃないんだよね。ヴィークくんとかなら加護の力もあるしたぶんすぐになんでも魔法使えるようになるんだろうけど」


「アリスちゃんがアテにならないならやっぱり私自身の力で頑張るしかないのね」


「アインちゃん。まずは私たち共闘するのも良いかも。私たちの戦いはその後だよ。ヴィークくん私たちのこと女と思ってないんだよ。妹みたいな感じになってる。一緒にはいるけど恋愛対象にはなってない」


「アリスちゃんのいう通りかも。私のこと好きなんだろうけど私にドキドキはあんまりしてくれてない気がする」


「でしょ? だからまずは私たちの魅力をしっかりヴィークくんにアピールしないと。下手したら私でもアインちゃんでもない人にヴィークくんを取られちゃうよ」


 ガシッとアインがアリスの手を掴む。それが意味することは1つだ。


「仕方ないね。それだけは絶対避けないといけないから。ここは一時休戦だね」


 こうして乙女の同盟が出来上がったのだった。

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