第49話 告白

「ちょっとお兄ちゃん助けて~」


「頑張るんだアイン」


 夕方になったので3人はカミーユに教えて貰ったイチャイチャスポットに行ってみることにした。さすがに今日村長夫妻がいることは無いだろう。


「これならお兄ちゃんの飛行魔法使った方が絶対楽だよ」


「こらこらそんなこと言わない。苦労してたどり着くからこそいいんだろ」


「そうだよアインちゃん。そんなことしても達成感がないでしょ」


 3人が今どこにいるというかと大きな木。登っている最中だ。軽々と登っていったヴィークに対してアインがヴィークに引っ張ってもらいながらゆっくり登っている。アリスはというと珍しく自分でスタスタと登っていた。


「はぁはぁ……やっと着いたよ! お兄ちゃん手伝ってくれてありがとう」


「全然いいよ。アインも頑張ったね。ほらこれ見てよ」


 視線をヴィークから周りに移す。そこから見えた景色にアインは言葉を失った。


「すごい……ここからの景色こんなに綺麗なの……」


「すっごくロマンチック……」


 ここに生えている木は村のはずれにある小高い丘の上に立派に育った一本のロムの木。この地方にしか生えていない独自の進化をとげた大木。今はたくさんの葉をつけ青々とつけ、風が吹くとザーッという音を立てている。


 秋には大きな実をつけ、それを収穫するのもこの村の人達の楽しみの一つになっている。


「これはカミーユさんたちすごいところを見つけたもんだな。これを教えてくれたのも感謝だよ」


 ここは夕焼けに照らされた村を一望でき、正面には大きな夕焼けが見える。絶景だと言っていいだろう。これを知ってるのがヴィークやカミーユたちだけなのは少しもったいないような。


「これさ景色に目が行ってしまうよ。きれいすぎるもん。2人とこうして見れるなんて本当に幸せだな」


「これは綺麗だね。ってヴィークくんどこ触ってるの!」


「どこってアリスが落ちたりしないように腰のところを持っておいただけだろ! 俺は変なところは触ってないぞ!」


「お兄ちゃん、私もしっかり支えて! アリスちゃんだけじゃなくて」


 大きな枝にまたがって座って景色を眺める。結構高いので落ちないように自分の横にいるアリスの腰を持っただけなのだがアインには思うことがあったようだ。


 当たり前だろう。そんなことアリスだけなんてズルすぎる。


「えへへ。だってここはイチャイチャスポットなんだがらこうやってしないとダメだよね。もっとしよ? これだけじゃ足りないよ……」


「アイン……」


 もう景色なんて目に入らなかった。夕陽で照らされるアインから目が離せない。そうだ。ここはカミーユが言っていた絶好のイチャイチャスポット。


「ねぇヴィークくん。私、ヴィークくんのこと好きだよ」


「「えっ??」」


 アリスの突然の告白に素っ頓狂な声を出す2人。2人の視線は一気にアリスの元へ。


「ヴィークくんは覚えてないだろうけど勇者パーティーに招集された時、私たち一度会ってるんだよ。その時のちょっとしたことでね。私、それだけで恋に落ちやってたんだ」


 ヴィークもアインも声が出せない。しばらくして状況を理解したアインが同盟のこととかも合わせてアリスに言おうとする。しかし、それよりも早くアリスが続けた。


「アインちゃんもごめんね。私だけ先に言っちゃって。そこは本当に謝る。でも、今日のこの景色を見て……やっぱりヴィークくんとはそういう関係になりたいなって思ったから」


「ア、アリス……」


「ううん。今返事してもらわなくていい。ただ私の気持ちを知っていて欲しかったの。もっともっとアプローチして、次はヴィークくんの方から私に告白してくれるくらいにするんだから」


 全てを言い切ったと言わんばかりのアリスはすっきりした顔になっていた。でもその瞳は本気だった。これからは今以上にドンドンいくと。


「それに言いたいことがあるのは私だけじゃないみたい」


「えっ?」


 ヴィークとしては今のだけでも凄まじいほどに衝撃だった。アリスが自分のことを好き。そう考えると顔が赤く熱くなる。


「本当……アリスちゃん。こういうのはずるいよ。私もいろいろ抜け駆けしたけどこれはさ」


 アリスはアインの方を優しく見るだけで何も言わない。


「お兄ちゃん……私もお兄ちゃんのこと好きなの……兄妹としてじゃなくてひとりの男の人として。理由とかは分からない。ずっと好きだったんだもん」


「アイン……」


 ヴィークの頭にはもう処理不能と言わんばかりの出来事だらけ。しかし2人からの好意はとてつもなく伝わってくる。


「アリスちゃんに先は越されちゃったけどね。でもちゃんと言えたからドキドキしてるけど清々しい」


「お、俺は……」


「お兄ちゃん。私も今、返事はいらない。期限もないから。じっくり考えて決めて欲しい。一つ言っておくけどアリスちゃんとの仲はどんな結果になっても変わらないよ。ね?」


「もちろん。私、ヴィークくんの選択を尊重するし、アインちゃんとは仲良くするよ。だって私、アインちゃんのことヴィークくんと同じくらいに好きだもん」


「私も一緒」


「ありがとう2人とも」


 やっとヴィークから出た言葉は感謝の言葉だった。


「2人が俺のことそんな風に思ってくれていたのがすごい嬉しい。ちゃんと2人の気持ちに応えられるようにするよ」


「ありがとうお兄ちゃん」


「うん。ヴィークくんありがとう」


「でもだからって急によそよそしくなるのは嫌だよ? ちゃんと私たちの傍にいてね」


「そうだよ。これから私たちはもっとアピールするんだから。逃げちゃダメなんだから」


「ぜ、善処します」


 こうして夕日の魔法にかけられた告白は終わったのだった。




 ◆◆◆




 もう暗くなっちゃったね。お兄ちゃんとこうしてると時間が経つの早いや」


「あっという間だったね」


 しばらく3人でたくさんのことをしていたらもう日は暮れてしまった。もう周りは暗くなっていて、今から木を降りるのは危ないかもしれない。ヴィークたちに飛翔魔法があるのでなんの問題も無いが。


 話していた内容はヴィークは鈍感だとかそういう内容ばかりだったらしい。


「なぁ2人とも。俺たちもどこか3人だけの秘密基地みたいなの作りたいって思うんだけどどう?」


「それいい! 家とは別にゆっくりお昼を過ごせる私たち岳の場所! 考えただけでもすごいわくわくする!」


「そこでたくさんイチャイチャするってことね! ヴィークくんナイスアイデア!」


 自分の気持ちを言ったアリスはブレーキなしでそんなことを言ってる。

「っ〜! じ、じゃあ次はいい場所を俺たちも見つけないと。今日はテントに戻ろうか。アインのご飯楽しみだ」


「期待してていいよ!」


「次は私も頑張って料理作ってみる! アインちゃんから技を盗んじゃおっと」


 そんなことを話しながらヴィークが自由飛翔を発動し、木から地上へ。そこから3人は仲良くテントへ戻っていった。


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