第15話 ヴィークはすごいです

 お昼ご飯をごちそうになってヴィークたちがお礼ということで食器の後片づけをしていた時、一人の女の子が家に駆けこんで来た。


「村長さん! お父さんが大変なの! 仕事の途中で急に倒れちゃったらしくて……お願い! 助けてほしいの!」


 何があったのか分からないが女の子が酷く慌てているところを見るにただ事ではないらしい。村長夫婦はすぐに場所を聞き出して飛び出て行った。


 ヴィークたちも何か出来ることはないかと女の子と一緒にお父さんが倒れているという場所へ走った。




 しばらくしてヴィークたちも女の子のお父さんがいる場所までやって来た。ちなみにこの女の子「ユリン」というらしい。


 現場ではサムとエルが救護している真っ最中で回りに何人かの人だかりもできていた。ユリンも心配そうにお父さんを見つめている。よく見るとお父さんに目立った外傷はない。


「ユリン、お父さんって今何かの病気にかかってる?」


 ユリンはふるふると首を横に振る。


「としたら……これは毒だな」


 ヴィークがそう言った直後、サムがユリンのところへやって来てとても悲しそうに言った。


「お父さんはたぶん湖に住んでるクラゲの毒にやられてしまったみたいなんだ。漁に出て網を引き揚げたときにやられたらしい。最近は見かけなくなったからね。私たちも油断していたよ」


 淡水の湖にクラゲがいるなんて。そんなことに驚いたヴィーク。やはり世界は広い。知らないことでいっぱいだ。いや、いまそんなことはどうでもいい。ユリンのお父さんの方を気にするべきだ。


「それで村長さん、お父さんは治るんですよね?大丈夫なんですよね?」


「それが……毒がもう体に完璧に回ってしまっていて……一重魔法しか使えない私にはもうどうすることもできないんだ……」


「そ、そんな……いやだ、いやだよ。お父さん死んじゃいやだよ」


 自分のお父さんの前で涙を流すユリン。その横でユリンの母親であろう女性も泣いている。お父さんの方はもう昏睡状態になっていた。周りの人もこの親子に同情している。


「アリスちゃんどうにかならないの!? こういう時役立つのがアリスちゃんでしょ!?」


「無理よ! 片腕無くしても再生できる魔法使えるけど毒に対する魔法なんて基本は使えないの。あってもかなり高位の魔法なのよ」


「そんな……お兄ちゃん。どうにかならないの……?」


「分かってるよアイン。魔法なら任しとけ」


 それだけ言ってアインの横を離れてユリンのもとへ移動した。


「ユリン、大丈夫。俺がお父さんを助けるよ」


「え?」


 それを聞いて周りの人たちがざわついた。しかし、だれも無理だとは言わなかった。ヴィークから絶対的な自信があふれているのが分かったから。


 お父さんの肩に手を置いて魔法を発動させる。使う魔法は三重魔法。一瞬でヴィークの手が光り輝く。


「よし。解毒デトックスファンケイション……もうこれで大丈夫」


「え? もう終わったの?」


 ユリンをはじめ、周りに集まった人たちが目を丸くして驚いている。


「もう大丈夫ですよ。俺の声聞こえますか?」


 ポンポンと肩を叩くとお父さんはゆっくりと目を開けた。何やら不思議な様子でヴィークを眺めている。


「あなたは……何者なのでしょう?」


 お父さんの第一声はそれだった。ヴィークのにとってこの毒は強いうちに入らない。勇者パーティーにいたときはもっと毒性の高いものばかりだったから。それらの毒は三重魔法で治癒できるものではなかった。


「俺はただの一般人ですよ。今は目的の村へ向かう旅人です」


 そう。勇者パーティーのメンバーだったのは過去の話。


 しかし、も知らない村の人からしたら今のヴィークの魔法は神の御業だとしか思えなかった。この村で唯一魔法が使える村長すら無理だったことをいとも簡単にしたものだから。


「お父さん! お父さん!」


 ユリンがお父さんに抱き着いて助かったことを喜んでいる。ユリンのお母さんも涙を流して喜んでいた。ちなみになんでお母さんか分かったかというと、ただたんにユリンがそう呼んでいたからである。


 ヴィークはそんな親子を見ながらアインのもとへ戻ろうとしたのだが、その前にユリンに見つかって捕まってしまった。


「ヴィークお兄ちゃん、お父さんを助けてくれてありがとう! ユリンとっても嬉しかった。ヴィークお兄ちゃんってすごいんだね!」


「そ、そんなことないよ」


 褒められ慣れていないヴィークは照れながらもユリンの言葉に嬉しさを感じていた。


「ヴィークくんはすごいよ。たぶん……いや世界一!」


「ふふーん! そうだよ、私のお兄ちゃんはすごいんだから!」


 いつの間にかしかっりとヴィークの横にくっついていた2人ユリンに自慢するようにいった。実際、自分の好きな人が褒められるのは嬉しい。


「あの、ヴィークさん、でよろしいでしょうか?本当に今回はありがとうございました」


「本当にあなたには感謝しています。ありがとうございました」


 ユリンのお父さんお母さんが頭を下げてお礼を言う。ユリンもそれにならってペコリとお辞儀した。周りの人からも拍手が起こった。まるでヴィークはヒーローのようだ。


「いえ、俺は自分に出来ることをしただけですから。ちゃんと治って良かったです」


「もうお兄ちゃんったら謙遜しちゃって、すごいことしたんだからもっと自慢してもいいのに」


「そんなヴィークくんも素敵。あの自信に満ち溢れた表情とかすっごいドキドキしちゃった」


「あの、もしよければ晩御飯をうちで食べていかれませんか?お礼という意味もありますがお二人と私もお話がしたいのです」


 ヴィーク2人に聞くと笑顔で行くと答えたのでヴィークはぜひごちそうになります。と言っておいた。


「あ! 俺たちまだ皿洗いの途中だ!すみません。用事が終わったら伺います! 2人とも行こう!」


 そう言い残し3人は仲良く村長さんの家に戻って行った。村の人たちはそんな旅人を微笑ましく見ていた。





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