C地区を出た俺ですが、B地区ってあれですかって期待してます!

 B地区へ向かう途中、麻衣がブス神様たちに言った。


「私たちは清くんに選ばれるために旅をしているのよ」

「清くんに選ばれる? ひょっとして、清くんは勇者様なのですか!」

「私たちのいた地区では、美少女は1人の男性に嫁いでいました」

「その男性のことを、勇者様と呼んでいます」


 ブス神様たちのいう美少女というのは、店長たちのこと。勇者様ひとりで5世代、20人くらいを娶るらしい。その数には驚いてしまう。まさに勇者様の所業だ。俺にはできない。


「あのっ、今のはなし。詳しく教えてくださいますか」


 と、ブス神様たちのはなしに興味を示したのは有馬だった。その横には安田がいるけど、乗り気じゃないみたいだ。


「僕はあんまり聞きたくないんだけどね……」

「そぉーねぇー。安田くんはきっと、B地区が気にいると思うなぁーっ!」


 B地区って、一体どんなところなんだろう。名前的に興味をそそられていたけど、何か大きな秘密が隠されているのかもしれない。


「お母さん。B地区ってどんな……」

「あらぁーっ。さっき見たでしょう。ピンクよピンク!」


 いやいやいや、他のみんなと比べると、結構黒ずんでいたって、ちがーう! そっちのビーチクじゃないって! 俺が聞きたいのは、今向かっているB地区のこと。かつて俺を育ててくれたビーチクのことじゃない。


 B地区に関する情報はほとんど聞き出せないまま、バスはB地区についた。


 標高600メートルほどのお椀をひっくり返したような形の2つの山。それを中心に広がっているのがB地区。最大の集落は2つの山の中間、谷間にある。山の名は、東にあるのが右乳山、西にあるのが左乳山。南側にあるC地区を顔に見立てたると分かり易い。


 ここには一体、どんな秘密があるんだろう……。




 バスが集落に着く前に第1B地区民発見。まだ子供だ。


「わぁっ! 子供だぁっ!」


 色めき立つ安田。性癖を隠さない。バスは止まらない。

 そのあともまた、子供ちゃん。


「あぁっ、まただぁっ!」


 そのあとも、そのまたあとも、ずっと子供だった。


「清くん、早く車を停めようよ!」

「そう急ぐなよ。集落に着いたらでいいじゃないか」

「そぉーねぇーっ。お母さん、思うの。安田くん、がっつきすぎよ」


「だって、だって、子供ですよ、子供!」


 安田の気持ち、分からないでもない。


「何なのかしら、この気持ちは……」


 麗が呟いた。いつもは安田のこと警戒して距離を取っているのに、今日は何故だかさみしそう。妬いているというほどではなかったけど。




 集落に着いた。安田の興奮は頂点に達した。


「なっ、何という楽園パラダイス! 何というユートピア天国!」


 意味不明だ。英語か日本語か、楽園か天国か、どちらかにしてほしい。


 お母さんが業務連絡。それにはブス神様たちが答えた。


「さぁ、まずは泊めてくれるお家を探しましょう!」

「その必要はなさそうですよ」

「先程、見かけたんです!」

「昨年、C地区を出て行った3人組が」


 ブス神様たちのはなしによると、相当なブスらしい。これは期待ができるぞ。だって、ブス神様たちの審美眼って、あべこべだもの。


 俺たちは3手に分かれてブス神様たちが見かけた3人組を探すことにした。


「リーダーは、清くんと有馬くんと拓哉くんにお願いしようかしら」

「ぼぼぼ、僕は、リーダーにはなれないの? ガルルゥーッ!」


 安田が妙に積極的だ。これは嫌な予感しかしない。


「んーっ。安田くんはお母さんと麗と茶緒と一緒にお留守番よ!」

「えぇっ。私も? 清兄と一緒がいいのに」


 適任だ。今の安田は獣のよう。暴走したら、止めるのは困難。お母さんにしか飼い慣らせない。そのためには麗に犠牲になってもらうしかない。麗、許せ!


「俺は、ブス神様とまりえと七瀬を連れて行くよ」


 有馬は公央と葵と飛鳥を、拓哉くんは真智とゆめと麻衣をそれぞれ連れて行くことになった。七瀬を連れ出したのは、間違いだったかもしれない……。

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