サンライズに感動してしまった俺ですが、オムライスにはケチャップが1番だという結論に至りました。
「ちょっと、拓哉!」
駆け出した拓哉くんを気遣い、2歩追いかけたゆめ。踏みとどまって、俺たちの方を向いて続けた。
「あっ、ごめんね、みんな。拓哉は言い出したら聞かないから……。」
ゆめは拓哉くんのことを気にした素振りをした。いち早く気付いたのはお母さんだった。ゆめと麗とまりえに言った。
「男の子のそういうところ、かわいいと思うの。3人も行ってあげて」
「はい。行って来ます!」
「はいはい。配膳係として、行ってあげるわよ!」
「まりえは食べ終わってから行くよ」
にこりと笑って駆け出したゆめ。しかたなしといった表情の麗。2人とも直ぐに拓哉くんのあとを追った。まりえだけは美味しそうに食べ続け、完食後にキッチンへと向かった。残った俺たちはさじを置き麗たちの帰りを待つことにした。
しばらくして、麗が戻って来た。拓哉くんは見落としていた。この島のたまごはオーガニック。秋葉原で手に入るものとは味のレベルが違う。だから、思ったよりも甘くなってしまった。その味を修正するには……。麗が言った。
「みんな、お待たせ! 最高のトマトケチャップだよ」
瓶詰めされたトマトケチャップ。一眼で濃厚だって分かる。
「なるほど! これで甘さを中和するんだねっ!」
「中和じゃないよ。シナジーが期待できる! 楽しみで仕方がない」
言うが早いか、安田がトマトケチャップをかけた。そしてパクリと食べた。
「これは! ボクの期待通り、いや、期待以上だ!」
その言葉で、みんなが堰を切ったようにトマトケチャップを使いはじめた。俺は少し乗り遅れてしまい、最後の最後、お母さんのあとになりそう。あぁ、トマトケチャップがどんどんなくなっていく……。
「あらあら。お母さん、ちょっとかけ過ぎちゃったかしら」
わざとだ。絶対わざとやった。お母さんはそういう人だってこと、俺は知ってる。笑顔なのがその証拠。
「俺のケチャップが……。」
落ち込んでいる俺に、神が降臨した。神々しい。
「おっ、おい。清坊、オレかけ過ぎたから、分けてやんよ」
麻衣! 言いながらさじでケチャップを少し掬って俺の皿へと移そうとした。ケチャップは濃厚。さじにこびりついてしまい簡単にははがれない。
「あっ、あれれ。スプーンにこびりついてうまくはがれないぞ」
何度も手を振るう麻衣。けど、いつまで経っても濃厚なトマトケチャップははがれようとしない。もう、ダメなのか……。
「しっ、しかたないな。清坊。こうするより……。」
麻衣、何してんの? トマトケチャップがこびりついたままのさじでオムライスなんか掬ったりして。それを俺の口元に運んだりして。
「清坊。あーんってしろよ!」
「麻衣、それって……。」
おいしいやつ! めっちゃおいしいやつじゃん。
「いいから。遠慮なんか、すんなよ……。」
しません、しません、しませーん! 遠慮なんかしないよ。今直ぐにでもパクつきたいよ。けど、恥じらう麻衣、かわいい。ずっと観ていたい。だから俺はなるべくたっぷりと時間を使ってからパクついた。
「あーん。もぐもぐもぐ」
うん! 美味い。美味しい。鉄板のイチャラブだ! 俺、幸せ! そんなの俺の顔を見れば分かるはず。けど、麻衣は不安そうにして俺を見ている。
「どっ、どうだ。お味は……。」
「うん。美味しい。とっても美味しいよ」
オムライスも、この展開も。そして俺の一言で顔を一気に華やげる麻衣を見れて。全部、美味しい。
それで終わらないのが、この旅行の俺だった。
華やいだ麻衣の背後には、イライラ顔の美少女たちが列をなしている。飛鳥、ゆめ、茶緒、葵、七瀬。みんなさじにケチャップをこびりつかせてる。
「麻衣、済んだでしょう。代ってよ!」
このあとも、みんなが順番に俺にあーんをしてくれた。
そして、七瀬のターンになったとき。ラッキースケベが発生した。それは、とてもすごかった。早朝の一発ほどではないにしても。
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