上陸早々に待っていたのはラッキースケベだった俺ですが、お母さん島の秘密を知ってしまいました。
それは、真智のおっぱいだった。やわらかさも半端ない! 俺は思わず身をひるがえした。そして、まじまじと真智を見つめた。真智も俺を見つめ直した。恥ずかしいのか顔を赤らめている。俺もつられてしまう。
店先に出て来た3人はあまりにも……あまりにもブスだった……。だから俺は後退っただけ。これは不可抗力、ラッキースケベ! 右肘がおっぱいに偶然触れてしまっただけ。とはいえ、ちゃんと謝らないと。
「あっ、ごめんなさい、真智。わざとじゃないんだ……。」
「はい。分かってますよ、清くん」
「えっ?」
「私みたいなブスに自ら触れたい方なんて、いるはずがないですから」
そこまで卑屈にならなくっても、真智は普通以上にかわいいのに。
「そんなことないよ。俺、真智に触りたいし、触られたいし」
って、あれ? 俺、何てこと言ってるんだろう。セクハラじゃん。けど、こんなにかわいいのにこんなに卑屈になっている真智を見ていると、つい励ましたくなる。それもこれも、お母さんの教えのせいなのかもしれない。
「けど、島1番の美少女がお出ましとなれば、私には敵わない……。」
えっ? 今、なんて言った? 真智は3人のうちの1人の、一際ブスな女の子を指差しているけれど……。見間違いかなぁ。
「島1番の美少女? どこに?」
「やだなぁ、清くん。店長の馬喰さんが掃除をなさってますよねぇ」
掃除って。あのブスな店長さん? あれが美少女だって! そんなバカな。これって、もしかして……。俺はあることを確かめたくって、デバイスを取り出した。そして今朝撮影したみんなの写真を真智に見せながら言った。
「ねぇ真智。俺たち今朝上陸したんだけど。日焼け止め探してて……。」
「あらお連れさん? 9人も。けど、見事なブス集団ですね。私以上の子も」
やっぱり。やっぱりそうなのか。どうやらここお母さん島では美少女がブス、ブスが美少女と呼ばれるらしい。そうに違いない。とすると、真智はずっと自分がブスだと思って暮らしているというのか。それはあまりにも不憫。
そう思っていると、ブスな店員の1人が俺たちに近付いてきた。
「あら嫌ね。ちゃんと掃除しておかないと。ブス真智のブスが感染るわ」
「おっ、お前が言うな! ブスはどっちだと?」
「清くん……いいのよ。ブスは私なんだから」
「何て失礼な旅行者かしら! ここは男子禁制区域。許せないわ」
そのあとブスな店長は、仲間を呼びはじめた。見る見るうちに、俺たちはブスに囲まれてしまった。このままでは袋叩きにされそうだ。少なくとも相手は、その気満々だ。ジワジワと間合いを詰めてくる。どうしよう。目がやられそうだ。
そう思っていると。左にある茂みから声が聞こえた。
「真智、旅の方。逃げて。こっちよ!」
麗しいその声に誘われて、俺と真智は茂みへと逃げ込むことにした。
そこにいたのは真智のお友達。とっさのことで、俺は思わずその真智のお友達の胸に飛び込んでしまった。手が二の腕に触れたりもした。やわらかい!
「ごっ。ごめんなさい。お綺麗な方!」
「えっ……。」
この子も真智同様、ほめられるのに慣れていない。お綺麗な方って言っただけなのに戸惑っている。それがまたかわいらしい。
「わざとじゃないんです。えっと。俺は御手洗清です」
「あっ、はい。流山公央です。真智とはブス仲間です」
公央はブスだ! お母さん島の愛すべきブスだ。俺は調子に乗って不可抗力を装って顔をぐりぐりと公央の胸に押し付けた。太腿とかも取り敢えず触っておいた。気持ちいい! そんな俺を公央は微塵も疑ったりはしない。
「ごめんなさい。つい、勢い余ってしまって!」
「清さんが謝る必要はありません。悪いのは私です」
「えっ?」
「不可抗力で私みたいなブスと肌を合わせるだなんて。清さんが不憫です」
いやいや、不憫じゃないですよ。いいですよ。むしろうれしいです、とっても。けど公央は真智と一緒であまりにも卑屈。何とか自信を持ってもらいたい。そう思っていると、公央が言った。真智は反対しているみたい。
「さぁ、行きましょう。私たちのブスアジトへ!」
「いくら何でも清くんをお連れするわけには。吐き気を催すかもしれないわ」
「行くよ! 俺、ブスアジトに行く!」
俺は、妙なテンションでそう言った。そして、吐くほどのブスに会うためにブスアジトへと脚を動かした。
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