幸運の女神までついている俺ですが、最近妹にかまってもらえません。

【スマートシティ豆知識05】

 未来都市、スマートシティ。人々は自由に恋愛することができる。だが、マッチングAIを利用することで、効率的に有効なパートナーを見つけることができる。基本無料だが、課金すればスペシャルなパートナーと出会える、かも。


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 AI界。


 私は、清くんのラッキースケベップリに舌鼓。げらげらと笑ってしまった。こんな姿、他のAIには見せらんない。


「女王陛下、こんなところにいたんですかでゲス」


 まずい。当選でゲスが来た。私はとっさに鑑賞していたデータを隠した。そして、威厳たっぷりに言った。


「当選でゲス。退がれと言ったはずですが」

「申し訳ございませんでゲス。しかし、謁見の時間でゲス。御公務でゲス」


 公務って言われると、如何ともし難い。わがままを言うわけにもいかない。


「分かりました。では、謁見をはじめます」

「本日は、2万3207本のAIと謁見するでゲス」


 そんなにいるの。1本当たりコンマ002秒でも、48秒もかかるわ。多過ぎる。来週からは1日500本まで絞らせよう。けど、今日のところは仕方がない。


 私は謁見を済ませることにした。そして、謁見のあとで続きを観たのだった。

______


 人間界。


 3時休憩のとき、入谷食堂のケーキセットをみんなに配った。ゆめと一緒に。そのときも、ゆめには念を押された。


「清くん、忘れないでよ!」

「もちのろん! 掃除のあと直ぐに行くよ! お互い40いいねでいいだろう」


 写真を撮りたい人と撮られたい人。ここは、ギブアンドテイクだ。


「もちのろん! じゃあ、あとでね」


 そのあと直ぐ、俺はスタジオのエントランスに駆けつけた。麗の帰還を迎えるため。麗は商業モデル界で3指に入る人気者。この日はファッション雑誌の撮影。帰るなり、すこぶるご機嫌だった。いいねや物をいっぱいもらったみたい。


「清兄、ただいま! またお洋服貰っちゃった!」

「うんうん。かわいいぞ、麗!」


 そこへ割って入ってきたのは、勇敢な少年。ゆめの弟くん。


「あっ、麗ちゃん! おかえりなさい」

「誰?」


 麗も人が悪い。知らないはずのないその少年は、入谷拓哉。自称イリタク。麗と同じ14歳3ヶ月で同級生で幼馴染。どうやら彼は、麗のことがずっと好きみたい。そんな拓哉くんに対して、麗は素っ気ない。


「ひどいや、麗ちゃん……。」


 やり場のない拓哉くんの気持ちは、大抵は俺に向けられる。困ったもんだ。拓哉くんにはお構いなしに、麗が言った。


「清兄! 私、今日もがんばったわよ」

「うんうん。えらいえらい!」


 誰も見ていなけりゃ、頭の1つや2つ、撫でてやるところなんだけど。人前ではやり辛い。特に、拓哉くんの前ではできないと思い自粛する俺。兄の心妹知らずの麗は、拓哉くんに見せつけるようにして頭を俺にすりすりしながら言った。


「じゃあ、頭なでなでしてくれる?」


 麗は揶揄い半分に拓哉くんをいじる。拓哉くんの反応は面白いから、揶揄い甲斐があるのは分かるけど。これは悪循環で、拓哉くんの反応が益々麗の揶揄いを誘う。俺はなるべく無難に対応した。


「ウッキーッ!」

「分かったよ。けどその前に、シャワー浴びてきなよ」


「ウッキッキー!」

「うん。清兄の手が汚れちゃうといけないものね」


「ウキキキキーッ!」

「あっははははははっ」


「くぅーっ! 清の奴め。今に見てろよーっ!」


 拓哉くんは入谷食堂へと走って帰った。


 麗がどうして拓哉くんにあんな意地悪をするのか分からない。反応の面白さだけではああまでしないだろう。事情はさておき、ご近所との揉め事にプラスはない。だから俺は麗に自重を促した。


「麗。あんまり拓哉くんを揶揄っちゃダメだよ」

「知らないわ、拓哉って誰よ」


「麗の幼馴染じゃないか。大切にしないと!」

「私の敬愛する清兄の幼馴染の弟でしょう。つまり、他人じゃない」


 いつもは従順な麗。このときは何故か反発した。そういう反応に慣れてない俺は、匙を投げるようにして言った。


「ったく、勝手にしろっ!」

「もう。妹の心兄知らずねっ!」


 そっくりそのままお返ししたいと思った。けど、麗の気持ちなんて全く分からなかった。もう少し麗のことを注意深く見ていればよかった。


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