メイドとラッキースケベが起こらない俺ですが、順調に大人への階段を登っています。
ビシッといういい音と共に激痛。麻衣が手にしたムチで俺の背中を叩いた。
「ったく。見せつけてくれるぜ!」
「すっ、すみません……。」
俺もゆめも顔を真っ赤にして、平謝りするしかなかった。
「まぁ、いいさ。時間をどう使おうが2人の勝手だかんな」
「ありがとうございます、女王様!」
俺は思わず謝ってしまった。
気を取り直して、麻衣との撮影だ! そのシチュエーションこそ神! 麻衣の衣装は、ロックな女王様だった。そして撮影する部屋は寝室! これはっ! 俺は、何かが起こるのを期待していた。
けど、ラッキースケベは起こらなかった。
起こったのは、残り時間が5分を切ろうかというとき。麻衣の突然の転倒。支えようとした俺が一緒にもつれてのラッキーキス。そしてマジキス。それだけだった。どうしちまったんだ、俺のラッキースケベは!
俺のアイデンティティはどんどん崩壊していく。その代わりに俺は、大人への階段を登っていくのだった。
その後も全くラッキースケベは起こらなかった。
足蹴にされることからはじまった、制服を着た麗との屋上での撮影でも。風の悪戯でパンチラがあるかと思ったが、麗は鉄壁だった。
四の字固めからはじまった水着姿の七瀬とのバスルームでの撮影も、オタマで後頭部を引っ叩かれることからはじまったエプロン姿の飛鳥とのダイニングでの撮影も、ラッキースケベは全く起こらなかった。
一方で俺は、撮影の度に大人への階段を登っていた。残り時間が5分を切ろうかというときに、みんな謎の転倒をした。支えようとした俺は一緒にもつれ、ラッキーキス、からのマジキス。これがこの日のテンプレだった。
極め付けは、スリッパでスパンッと脳天を殴打されることからはじまったバニースーツのまりえとのリビングでの撮影。痛いし、脚治ってるし。これだったら背中にいてくれてる方が、よほどやわらかいラッキースケベだったのに。
そんなはじまりからしばらくは何も起こらないのもテンプレ。バニースーツ姿のまりえの勇姿を胸に刻むばかり。さすがはまりえ。超絶人気商業モデルだけあって絵になる。撮影そのものはとても楽しかった。
「お兄さま、まりえは残念だよ。もう脚治っちゃったから」
「そうだね。俺も残念だよ」
「ぴょんぴょんしても痛くないのよ!」
そのときふと時計を見ると、残り時間が5分を切ろうとしていた。これはっ! 俺の予想通り、まりえがつまずいた。当然俺は支えようとして一緒にもつれ込んだ。で、キスをした。テンプレ化してしまえば楽な展開だった。
まりえのくちびるはめっちゃやわらかい。おっぱいもめっちゃやわらかい。七瀬のときもそうだったけど、今日はおっぱいのやわらかさに比例して衣装の露出が高い気がする。うん、極楽、極楽!
俺はいつの間にかラッキースケベ心をなくしていた。
そしてついに俺は、最後の1人、葵にたどり着いた。そのはじまりは、決して激痛を伴うものではなかった。
まりえとのキスの途中、リビングにやってきた葵。俺たちを見つけて唖然としていた。地味な葵にはショックだったんだと思う。俺もまりえも突然に現実に戻された。気不味い雰囲気からのスタートだった。
すごすごと退散するまりえは、脚を引きずる。怪我はもう大丈夫なはずなのに。そうでもしないと間が悪かったんだと思う。まりえの気持ちは、痛いほど分かる。取り残された俺には地獄が待っている。そう覚悟した。
重い空気の中、最初に言葉を発したのは、葵だった。声が震えている。
「じゃあ、はじめよっか」
「……う、うん。そうだね」
返す言葉をやっと見つけて言った。重い! 空気が重過ぎる! けど、葵の方が辛いのかもしれない。だから俺はなるべく元気に振る舞おうと決めた。そして、真っ直ぐに葵を見た。その姿は……。
えっ、マジ? 下着じゃん! めっちゃエロい! 誰だ、葵が地味だなんて言ったのは? 着痩せする葵の下着姿はまりえよりも上という俺の考察を裏付けるメリハリ極上ボディじゃないか! 緊張してしまうやろーっ!
そして俺たちは、撮影場所へと向かった。それは、俺の部屋だった。
「どれくらいしてたの?」
部屋に入るなり、葵がそう言った。今日は妙に積極的!
「えっ?」
「キス、のこと」
よく考えたら俺、6人と5分ずつくらいキスしてる。合計すると30分。
「あぁ30分弱、かな」
これが誤解を呼んでしまった。まりえとのキスしか見ていない葵は、まりえと俺が30分ずっとキスしてたって思ったみたい。
「……いいよ。私も!」
葵は静かにそう言った。
「えっ?」
「キス、のこと」
「えーっ!」
____________
ここまでお読みいただきありがとうございます。
この作品、登場人物、作者を応援してやんよ、少し気になるって方、
♡や☆、コメントやレビュー、フォローしていただくとうれしいです。
励みになります。よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます