新たな女友達が驚異な俺ですが、いよいよお母さんと闘うことになりました。
ほどなく、有馬と安田が合流。
「ったく、何で清だけがモテモテなんだよ」
「清くんは麗ちゃんにモテてるわけじゃないから、安心して」
なんとも答え難い有馬の質問だった。けど、安田のおかげで苦笑いするだけで済ませそう。ところが、麗が余計なことをしたものだから、大変な思いをしてしまった。
「そんなことないんだから。私は本気で清兄のこと、好きだからね」
麗、今なんて言った。俺のこと好きって言ったよなぁ。言っただろう。うれしい。それだけでうれしいよ。俺はにやけた顔を麗に向けた。そのとき、麗が目を細めているのが見えた。麗のクセで、悪戯しようというときの目だ。
案の定、俺の右腕がグンと引っ張られた。そんなに俺の右腕を引っ張んじゃない。麗の胸、それほど気持ちよくないから。それに、身体のバランスが崩れたってのが大問題。これが麗の悪戯だった。
「お兄さまのことが好きなのは、まりえも一緒だかんね」
まりえが動きながら言った。俺の身体のバランスを整えるついでに。好きって言ってくれんのはうれしい。けどバランスはさらに悪くなった。俺の身体は右前方に傾き、腰にくる角度になっていた。ここまでが麗の仕掛けた悪戯。
こんなとき、左側にいるのがゆめだったら。きっと真っ直ぐになるよう整えてくれるだろう。まりえを背負うなんて状況初めてだから経験があるわけじゃない。けど、きっとそうだろうって思える安心感がゆめにはあるんだ。
ところが今日、俺の左腕をがっつりホールドしているのはほとんどはじめましての葵。葵は言葉数が少ない。無口に近い。言葉を発しながら不可抗力を装ってでないと腕を引き辛い。となると、バランスはどんどん崩れる。と、思ったが。
「ですねっ!」
葵が言った。その一言とともに俺の身体をぐーっとおっぱいの方に引っ張ってくれた。バランスを整えてくれた。俺の身体はほぼ地面に垂直、やや左後方に傾いている程度にまでなった。葵って、空気読めんだな!
「新しい子も、言うじゃない!」
麗が言いながら引っ張り、俺の身体はまた右に大きく傾いた。
「葵ちゃん。まりえは葵ちゃんのこと昔からの知り合いみたく感じるよ」
今度はまりえ。俺の身体を前傾させつつ、他己紹介。昔からの知り合いって思わせるのは、葵の素朴さの為せる技だろう。
「はい。ありがとうございます!」
葵に左後方へと大きく引っ張られた。
「そうね。じゃあ私のこと麗って呼んでね!」
「まりえはまりえ」
「麗、まりえ! 私のこと、葵って呼んでね」
呼び方を決める女子特有のイベントが突発的に発生。俺の身体をぐるぐるまわしながら。
「分かったわ、葵!」
「これからもよろしくね、葵!」
「うん。ちょくちょくお邪魔することにするわ」
麗の悪戯からはじまった3人のお喋りは、まだまだ続きそう。女子のはなしはコロコロと、回りながらエンドレス。俺の身体もくるくるまわる。目がまわる。
「おい。3人とも、いい加減にしてくれ」
俺がそう言ったときには、もうお家に着いていた。助かった。
「お邪魔しまーす」と言ったのが3人、「ただいまーっ」と言ったのが3人。まりえは俺たちの家族じゃないが、いつもただいまと言うんだ。
出迎えてくれたのは、俺のお母さん。ここらじゃちょっと有名人。俺がおっぱい星人なのは、この人の子供だからだって思う。とすると、麗も発育が遅れているだけで、何れは立派なお胸になるんだろうな。
お母さんは、俺の格好を確認しても、眉一つ動かさない。いつもは何かと頼りがいのあるお母さん。けど今日は敵! 油断はできない。先制攻撃はお母さん。すごい圧だ。最も弱そうな葵に向けられた。
「清くん、麗、まりえちゃん、お帰りなさい。あれ?」
「ああっ、はっ、はじめまして……。」
葵は何故かしどろもどろに言った。さっきまではあんなによく喋っていたのに。それだけでお母さんの圧がすごいんだけど。お母さんは、鼻をヒクヒクさせながら言った。
「えっ、はじめてだったかしら?」
お母さんが匂いで個体を識別したとて、驚きはしない。葵は相変わらずしどろもどろに言い返した。
「はい……この格好でははじめてです」
この格好って、俺の左腕にしがみついて。普通はじめてだろうな。お母さんは圧を一気に弱めてにっこり笑った。
「じゃあ、お母さんの勘違いかしらっ!」
俺ん家にはリビングがない。ダイニングはあるけど、広くはない。だから大人数を招くには不向き。けど、裏技があってね。それは撮影スタジオの使用。
撮影用のリビングは40畳、屋上も同様。だからめっちゃ過ごし易い。ただし、撮影スペースの使用には2つの条件がある。1つ、飲み食い禁止。2つ、誰かが撮影すること。屋上だけは例外で、飲み食いが認められている。
今日は俺がカメラマンを勤めるということで、このお招き会が実現したんだ。参加者は俺を含めて11人。他に入谷姉弟と居候3人衆。男子4人に女子7人。
「居候3人衆が買い出しから戻ったら、直ぐにはじめましょう」
「あれ? ゆめたちは待たないの?」
「待つも何も、もう来ているわ。キッチンにいるから、清くん呼んできて」
俺は何の気なくキッチンに向かった。まりえを背負ったまま。
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