お祓いはもう必要無さそうな俺ですが、また厄介な女子が選択肢に加わってしまった。

 茶緒は、何か言いたそうにしている。俺はパンイチだけど、聞く姿勢になった。茶緒が言った。


「あーっ、マリア様。私はトイレさんに恋してしまいました。御許しください」


 突然の懺悔とも、告白とも取れる一言だった。俺は、8人の中から1人を選ぶだけでも大変な思いをしている。だから、茶緒にはあまり関わりたくなかった。


「けど、茶緒にはいるんだろう。想い人が!」

「はい。ミタライキヨシという少年です。月齢が私と同じです」


「えーっ!」


 何だ? どういうことだ? 茶緒? 10年来の想い人? 巫女服? ……。 これまでに起こったことを俺は総整理した。そしてたどり着いた。水野茶緒は盗撮ヤローの妹で、10年前にこの神社で巫女服を着て俺と遊んだ女の子!


 そうとしか考えられない。


 だから俺は、茶緒に言った。


「ねぇ、茶緒。マリア様のいうことの信憑性は高いの?」

「もちのろん! マリア様無くして私は存在しない!」


 相当信仰心が厚い。これなら、この事実を受け入れてくれるだろう。


「あのね、茶緒。俺、10年前に君と遊んだことがあるんだ」

「そうでしたか。けど私にはトイレさんと遊んだ記憶はありません」


「俺、トイレじゃないんだ。御手洗。御手洗清って言うんだ」

「えっ?」


「驚かないで聞いて。俺が君の想い人、御手洗清なんだ!」

「そんな、バナナ! いや、バカな!」


 しばらくはなして、ようやく茶緒は信じてくれた。


「では、やはり貴方がミタライキヨシ様なのですね」

「うん。それからもう1つ。言いにくいんだけど……。」


「もしかして彼女がいるんですか? 私はそれでも構いませんよ」


 ダメだろう。そんなことができるんだったら俺は最初からこんなに悩んでないだろう。ここにも来なかっただろうし。兎に角、狩のことを説明しないと。


「君のお兄さんを狩ったきっかけは、俺の妹が作ったんだ」

「では、貴方はあの高名なれいりんのお兄様なんですか?」


 知ってたんだ、麗が狩をはじめたことは。けど、麗が御手洗麗だってことは知らなかったみたい。モデルとしてはすっかりれいりんで通ってるから、しかたないのか。俺は、はっきりと言った。


「そうなんだ。俺の妹はれいりんで、君のお兄さんを狩った。ついでに君も」

「そうですか。だからどうしたというのです。悪いのはお兄さまですよね」


「まぁ、そうだけど。君まで巻き込んでしまったのは、配慮に欠けていた」

「いいえ。そうでなければ、今日の再会はなかったのでしょう」


 理屈だ。茶緒って、Fランカーになったことをこれっぽっちも気にしていないみたい。そのことが、俺にはとても気になる。


「茶緒はFランカーにされたことを恨みに思ったりしないの?」

「全然」


 短い返事だった。これでは茶緒のことが何も分からない。もっと理由というかそう考えるに至った哲学みたいのが聞きたい。


「茶緒は心が広いんだね」

「ありがとう。けど、そうじゃないの」


 そう言った直後、茶緒は俺に覆いかぶさるようにしてきた。そしてくちびるを重ねた。いきなりのことで最初はびっくりした。さっきのとはまるで違う、不可抗力でも何でもない大人のキス。茶緒はびっくりするくらい積極的。


「10年分の想い、受け止めてくれてありがとう」


 茶緒は息継ぎでもするようにそう言うと、また俺を求めてきた。ありがとうだなんて言ってもらえるほどの俺じゃないのに。けど、茶緒にどんどん求められるうちに、俺の方もつい茶緒のくちびるを求めてしまった。幸せ!


「ねぇ、もう1回」

「んんっ!」


 俺は4回目のキスからは、茶緒の爆乳も求めた。茶緒は俺に好きにさせてくれた。それをいいことに俺はどんどんもんだ。


「私、うれしい。御手洗清くんと恋人同士になれて!」


 ごめん、茶緒。それは少し違うんだ。俺は心苦しいながらも事情を説明した。今の俺が置かれている状況、それはあまりにも突拍子もない。普通は信じてもらえないと思う。けど茶緒は、穏やかな顔を俺に向けて言った。


「清くんの事情は理解したわ。だから、その旅行に私も連れて行って」


 茶緒は言いながら俺のくちびるを塞いだ。キスをしながらおっぱいをもみもみしながら、俺は大きな勘違いしていた。選択肢が1つ増えたんだって。本当は2つも増えていたんだ。



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