どうするべきか妹に相談してみた俺ですが、盗撮ヤローのことが気になってます。
【スマートシティ豆知識09】
未来都市、スマートシティ。初等教育学校の校庭には巨大な板状の金属炭素が敷かれている。その下には光電池がある。スマートシティはエネルギーの90%が電気。総発電量の90%以上が太陽光によるものという、エコ設計なのだ。
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人間界。
俺を挟んでキャッキャと笑い、おしゃべりしている麗とまりえ。俺は2人を先に行かせた。もし、盗撮ヤローがいるんだったら大変なことになりかねない。早く見つけないと! 俺はきょろきょろと盗撮ヤローを探した。
するとそいつは、大きなカメラを担いでしゃしゃり出てきた。麗とまりえのあとをつけているみたい。俺には気付いていない。だから俺は思わず言った。すると、盗撮ヤローは狡猾の笑みを浮かべたんだ。なんか嫌なやつ。
「君、盗撮なんてよくないよっ! やめてくれ」
「クックックッ。盗撮? 証拠あんの? 俺はカメラ担いでるだけ!」
証拠はフィルムを現像すれば出てくるだろう。デジカメと違いこの場で確認することはできない。だから、証拠はあるようでない。訴え出たあとでもし盗撮していないことが分かれば、俺の方が罰せられてしまう。
俺が聞いたのは間違いなくあのカメラのシャッター音。あいつが何を写していたのかは分からない。これ以上は手も足も出ない。もどかしい。すると、そいつはさらに笑いながら言った。
「クックックッ。へぇ。君、カメラに詳しいんだねっ!」
「はい。一応、写真館のせがれですから!」
「クックックッ。こんなところにまともな写真館なんてあるの?」
ちっくしょう! 言うに事欠いて、御手洗写真館の悪口を言いやがって。結構有名なんだぞ! 絶対に許さん! 尻尾を掴んで、訴えてやる!
俺がそう思っていると、少し離れたところから麗とまりえの喋り声がした。
「1限の体育の100メートル走、負けないよ!」
「何言ってんの? 私が負けたことなんてないじゃない」
その声は、盗撮ヤローの耳にも届いたようだ。
「クックックッ。1限、体育なんだ。楽しみだなぁ。見るだけただだもんなぁ」
どうやら盗撮ヤローは通りすがりのようだ。麗やまりえの追っかけなら、今日の1限が体育なことは知ってるはず。まずい、本当にまずい。このままでは事件になってしまう。何とか盗撮ヤローを止めないと!
体育の授業。この日は100メートル走の計測。麗は持病があるのが嘘のように運動神経がいい。まりえはそれに輪をかけて運動神経がいい。2人の才色兼備・文武両道なところを見ると神様を殴ってやりたくなる。
脚なんか遅くっていい。かわいくなんかなくたっていい。その分、麗に健康な身体を授けてはくれないものだろうか。神様なんかに頼んだところで返事はないんだけど。
それに、気掛かりなのは盗撮ヤローのこと。姿をくらましたが、どこかで狙っているに違いない。俺は耳を澄まして、あの独特なシャッター音がしないか探した。その耳に達したのは、聴き慣れた独特な2人の声だった。
「清兄、れいりんとまりえっちが一緒に走るらしいぞ!」
「惟浩くん、それは辞めなよ。清くんが怒るよーっ!」
俺を揶揄ってきた渋い声の持ち主が有馬惟浩。それをいさめたのんびりハスキーボイスが安田靖雄。2人は俺のクラスメイトで、親友と呼び合う仲。
「清兄って言うな! れいりんは辞めろっ!」
ここまではお約束のやり取り。けど、今日の有馬は冗舌で、止まらなかった。
「悪りぃ、悪りぃ。にしてもだ。まりえっちの身体はまじえっちだよな」
「あれほどのボディーは、僕たちのクラスには他にいないよね」
安田まで。まりえは俺を兄のように慕ってくれている。それは麗と仲がいいから。双子のような仲だ。麗の兄はまりえの兄ってこと。そんなまりえのいつも笑顔を向けてくれる恩義には、報いるのが男ってもんさ。俺は慌てて付け足した。
「まりえっちもやめたげてっ!」
モデルになった今ではそうでもないが、ひと頃はえっちな身体ってのをかなり気にしていたもんな。
「だったら感想を言いたまえ。今も左腕に残るやわらかーい感触のなっ!」
「惟浩くんは根に持ってるんだね、今朝のこと」
安田が言う今朝のことって、まりえが俺に腕組みした、あれのことか。こいつら、観てたのかよ。あんな感触もうとっくに……。いや、はっきり残ってる。けど、この感触を忠実に言葉に置き換える語彙力が俺にはない。
それに、盗撮ヤローを探さないといけない。有馬や安田にカメラの音を聞き分けられるとは思えない。結局は俺が独りで探さなきゃならない。盗撮ヤローめ、早く出て来てくれ!
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AI界。
「よしっ、彼のハンドルネームを書き換えておこう。『盗撮ヤロー』に!」
私はつい、越権行為をしてしまった。
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