盗撮ヤローのことが気になってる俺ですが、ついうっかり大親友と楽しく過ごしてしまいました。

【スマートシティ豆知識10】

 未来都市、スマートシティ。全人口の20%を占めるFランカーの生活振りは悲惨を極める。週休は2日だが、有給はない。定年を迎えるその日まで、40年間にわたり朝から晩まで働かなくてはならない。


______


 人間界。


 有馬よ、許せ! 本当はまりえのおっぱいの感触、今でもはっきり残ってるんだ。けど、俺にはやることがある。だから俺は嘘をついた。


「んなもん、とっくに消えてんよ」

「嘘をつけ! お兄さま、俺たちは何年友達してると思ってる?」


「嘘じゃねーし! 感触なんてものは消耗品なんだよ」

「冗談ではない。感触が消耗品だと?」


「あぁ、そうさ。一過性のものだよ」

「一理あるな。彼女になれば、資産ってところか」


「おいっ、人をモノみたく言うんじゃねぇって」

「写真館のせがれがよく言うよ。モデルは商品なんだろう」


「ちげーよ。100歩譲ってスタジオでは商品だとしても日常生活では……。」


 俺の言葉を遮ったのは、それまでしばらく黙っていた安田。手を筒状にして目に当てている。あからさまに麗とまりえを観ている。それが雄叫びをあげるんだから、それまではチラ見で我慢していた連中も、ついガン見してしまう。


「……出たーっ! みんな見て。輪ゴムをくわえる美少女の図だーっ!」

「何っ!」

「えぇっ!」

「おぉっ!」

「ふっ!」

「すっ、すげぇーっ!」

「ウキッ!」


 授業は、俺のクラスと麗のクラスが合同。2つのクラスの男子同士と女子同士が集まっている。だから俺の周りには男子しかいない。そこそこ際どい言葉を使っても女子にバレる心配はない。けど、みんな美少女を語る語彙が少ない。


 腕を横にして曲げて髪を束ねると、甘くなった脇の下が見えそう。腕に引っ張られて体育着がずりあがると、ヘソは兎に角、腹部が見えそう。立ち姿で重心を移すと、内太腿が見えそう。見えそうで見えない。もどかしさのアウトレット。


 やわらかそーな唇にくわえられた輪ゴムが小刻みに揺れている。まだ束ね切っていない髪の毛が風に揺れている。胸元の体育着が、麗のはごく僅か、まりえのは結構大胆に中のものと一緒に揺れている。揺れヒルズのブティック街。


 他にも、爽やかアンテナショップや艶やか見本市が随所に、複合的に存在。まるで美少女! 美少女のような美少女が俺たちの目の前にいる。月曜日の1・2限は金曜の昼下がり同様、至福のときと言わざるを得ない! どやっ!!


「なるほど。お兄さまは家でも金曜の昼下がりにこんなのを眺めてんのか」

「そうさ。金曜は定休日だからな。居候専属モデルなんか、すげー大胆だぜ」


「たまには俺を招待しろよな!」

「断る。お前みたいたスケベは出禁だ。って、俺の心の声、何で聞いてんだよ」


「あーぁっ。バッチリ聞こえてたぜ!」

「状況はよく分かったよ。けど清くんはやっぱり写真の方が表現力あるよ」


 安田! お前、誉め上手じゃん。その誉め力を女子に向けたら人気が出るぜ、俺みたいにねっ! そう言ってやろうと思った俺だけど、言わなかった。言わないでよかった。


 だって、女子の悪口が風に乗って聞こえてきたから。どうやら俺の言葉は風にのって30メートル以上離れた女子たちにも聞こえていたみたい。


「エロエロ清兄がまた妄言!」

「いやねっ! やめてほしいわ」

「あんなのと1つ屋根の下なんて、れいりん、かわいそう」

「ほんと、ほんと! れいりんに謝ってほしいわっ」

「今朝なんか、まりえちゃんにもしがみついたって聞くわ」

「何それ! 兄の権威を使わないと、何もできないくせにね」


 あらん限りの陰口、暴言だった。誹謗中傷のデパートかよ。まぁ、いい。今は俺を嫌っていてもいつか必ず戻ってくんだろうから……。我慢だ、我慢。


 キシーッ! キシーッ! キシーッ!


 そのときに、俺は不安を覚えた。またあのシャッター音がしたから。まずい! なんとしても盗撮ヤローをとめないと。


 そうこうしているうちに、2人とも髪を束ね終えた。そして、スタートラインに立った。腕や脚をリラックスさせようと軽く跳躍する2人。動きがある方が、美少女は映える。写真はそれを切り取り、前後を想像させるからこそ成り立つ。


 そういう意味では、みんな写真を観る目を持ち合わせている。男子全員、脳内自由行動だ。背後から抱きつくもよし! 缶コーヒーを放るもよし! グッドマークでウインクするのを待つもよし! 全て、自由だーっ!


 そんなとき、まりえが俺に向かって手を振った。男子全員の視線が俺に集まる。冷たい。冷たいが、まりえへの恩義で俺も手を振り返した。まりえはにっこり笑って、今度は俺に投げキッスをした。


 さすがの俺も、顔を赤らめてしまった。まわりの男子全員からタックルされた。俺って、そこそこ幸せなのかもしれない。


______


 AI界。


 何、あの2人! 清くんの足を引っ張って、清くんを困らせて。いけない子ね。


 決めた! あの2人はFランクにしちゃおっと!


____________

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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