オムライスにはケチャップが1番だという結論に至った俺ですが、砂浜に戻ってすりすりさせていただきました。

オムライスにはケチャップが1番だという結論に至った俺ですが、上陸早々に待っていたのはラッキースケベだった。

 朝。時刻は6時を回ったばかり。俺たちはついに母島への上陸を果たした! 


「じゃあ、有馬くんたちは設営頑張ってちょうだいねーっ!」

「はい! この有馬、お母さんのために頑張ります!」

「違うよ。麗ちゃんはボクのお嫁さんになるんだからね」


 有馬と安田は口喧嘩しながらも息ぴったりにテントの設営をはじめた。拓哉くんはお昼の食材探しに出かけた。浜辺に拡げられただだっ広いレジャーシートの上。残されたのは俺と9人の美少女たち。こっ、これは……。


 こんなことで期待してはいけない。きっと何かある。俺をポツンと真ん中に、左右と後方の3ヶ所に分かれて肌を寄せ合うみんな。その3ヶ所から順番に声がかかる。もうはじまっているようだ。俺は警戒レベルを4に引き上げた。


 茶緒、ゆめ、飛鳥の順に言った。


「今日は夕方までずっと晴れているそうです」

「南の島に来たんだし、雨が降ってるのよりはよほどいいのだけど」

「照り返しも強くって、油断できないわ」


 世間話のつもりだろうが、絶対に違う。これは、俺に仕掛けられた罠。葵、お母さん、七瀬と続いたのがその証拠。


「日射しが秋葉原とは違い過ぎるわぁ」

「お母さん、思うの。太陽はお肌の天敵よね」

「そうそう。日焼けとかしたら堪らないわ」


 これで終わらない。まりえ、麗、麻衣の順に続けた。


「えーっ、困ったなぁ。まりえも日焼けしたくなーい」

「本当。撮影のときに怒られちゃうかもしれないわ」

「オレもヒリヒリするのが苦手なんだよなぁ……。」


 最後は9人がみごとに声を揃えて締めくくった。


「はぁ……誰か、日焼け止め買って来てくれないかなぁ……。」


 きたきたきた。俺への要求だ! でも、日焼け止めを買いに行くのって、決して重労働じゃない。最初から普通に頼んでくれたってよかったのに。俺はみんなに向かって言った。みんなはまた声を揃えてこたえた。


「じゃあ、俺が買ってくるよ!」

「お願いしゃっす! オーガニックなやつにしてねっ!」


 そんなによろこばれるとは思っていなかったよ。もしかしたら誰かがついてくるっていうと思ったけど、言わないし。そんなに日差しが強いのが嫌なのかなぁ。めんどくさいってだけでもなさそう。


 兎に角、俺は独りで日焼け止めを買いに行くことになった。そこが噂の男子禁制区域だとも知らずに。




 砂浜を出て直ぐ、都合よく店が見えてきた。大きな看板があり『オーガニック日焼け止めはじめました』と書いてある。俺は運命に導かれるようにしてその店へと向かった。けど糸は、背後へと伸びていたのかもしれない。


「あの、もし。オーガニック日焼け止めをお探しなら、いいのがございますよ」


 俺は猫を撫でるような優しいその声に誘われて振り向いた。そこにいたのはビキニ姿も艶やかな女の子だった。まりえや麗と並んでも全く見劣りしない。歳は俺と同じくらい。トップスに名前が縫い付けてある。『中御徒 真智』。


 かわいいし、スタイルもいい。色白。俺は緊張をなるべく隠して答えた。


「真智さん。はじめまして。とってもかわいらしいですね!」

「えっ? まぁ。お優しいのですね。えっと……。」


 真智はとても恥ずかしそうにしている。あまりほめられたことがないのかもしれない。こんなにかわいいのに、初々しい。


「御手洗清。ちょうどよかったです。今、あの店に入ろうと……。」

「そうですか……残念です。私は店の者ではございませんので……。」


「えっ。じゃあ、一体……。」

「無店舗販売をしています。私の器量では、店は持てません」


 器量によって、店が持てるかどうかが決まる。そういえば聞いたことある。お母さん島には800年以上続く古いしきたりがあるって。細かいことはよくわからないが、大雑把にいえば見てくれに厳しいらしい。

 他にも男子禁制の区域があるというはなしも。ジェンダーレスなスマートシティにあって、古い時代へと逆行する掟だ。


「そんな。君ほどの美少女が店を持てないだなんて!」


 どんだけレベル高いんだろう。あり得ない。麗やまりえに匹敵する真智が相手にされないだなんて。だったら、あの店の中には、一体どんな美少女がいるというんだ。もしかしたらヴワァーってなった葵級の美少女がずらりといるのか!


 俺は、ゴクリと生唾を飲み込んだ。無店舗販売なんか利用するもんか。真智には悪いが、振り切ってあの店に行くんだ。俺は必死だった。


「観光者さん、お戯れを。私が美少女だなんて……怒られてしまいます」

「そうですか。それでは申し訳ないので、俺はやはりあの店に……。」

「あぁっ、いけません。迂闊に入店したら、昇天してしまいますよ」

「昇天って……。」


 俺がそこまで言って振り返った。期待に胸を膨らませて。麗やまりえ以上の美少女に会えるなら、昇天したっていいじゃないか。

 そのとき。3人の女の子が店から出て来た。店先を掃除するためみたい。俺はびっくりした。だってその店員はあまりにも……。俺は2・3歩後退った。ふと、俺の右肘がやわらかいものに触れた。これって?


_____________

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