ついうっかり大親友と楽しく過ごしてしまった俺ですが、背中が気持ちよくってしかたがない。

【スマートシティ豆知識11】

 未来都市、スマートシティ。人々が選択できる趣味の数はランクに応じて決まる。最低のFランカーは2つしか選べないが、Sランカーは100を超える趣味を楽しむことができる。特権階級だ。


______


 人間界。


 麗とまりえがスタートラインに立った。クラウチングスタートの姿勢だ。好勝負を期待。緊張が支配するなか、号砲が鳴り響く。


 両者、いいスタート。序盤、胸の分だけ軽い麗の方が勢いがある。ぐんぐんと前に出る。最初の1秒で、麗は身体半分リードした。けど、そこから先はまりえの方が速い。脚の長さが違い過ぎる。追いつかれたら、麗には勝ち目がない。


 中盤に差し掛かったところでは既に2人の身体は並んでいた。もしここにゴールテープがあれば、まりえがそのテープを切ることだろう。身体の位置は同じでも、胸の大きさが違い過ぎる。


 そのときだった。俺たちのちょうど目の前で、まりえの長い脚が大きくもつれた。まりえがバランスを崩し、転倒。ドサッという嫌な音とともに、まりえの短い悲鳴が俺の鼓膜を刺激する。一体、なにがあったんだ?


 そのときにもう1つ別の音、あのシャッター音も混ざっていた気がする。


「あぁんっ」


 キシーッ! キシーッ! キシーッ!


 まりえの身体は、胸ごと地面に叩きつけられた。今朝、俺の左腕を優しく包んでくれた大玉スイカ級の胸。シャッター音も気になるが、今はまりえの介抱が先決。俺は、まりえに近付いた。麗も回れ右してまりえの元に駆け寄ってきた。


「痛っ」

「まっ、まりえ!」

「おいっ。大丈夫かっ」


 遅れて有馬や他のクラスメイトも駆け付けた。麗のクラスメイトも。大きな輪の真ん中にいたのは、苦痛に顔を歪ませるまりえ。いつもは満面の笑みのまりえが、あんなに苦しんでいる。悶えながら自分の身に起こったことを説明した。


「誰かが! 誰かが目に光をさしてきた。私を狙って!」


 草むらを指差すまりえの無念の顔、決して忘れない。盗撮ヤローめ、やりやがったな! いや、犯人探しより現状把握が優先。俺はそっとまりえのジャージの裾をあげる。優しくしたつもりでも、簡単にまりえのかわいい顔を歪ませた。


 大きく腫れた脚を見て納得。


「これは酷い……。」

「何よ、これじゃあ……許せない!」


 普通の大根程度の御御脚が、そこだけ桜島のように腫れ上がっている。出血してはいないが、ちょっとしたグロさがある。直ぐ側でそれを観た麗の狼狽振りは凄まじかった。俺はそれに気付いてはいたのに、対処はしなかった。


 有馬が、抜け目なくまりえに背中を貸そうと、しゃがみ込む。有馬にまりえを任せて、その間に俺は盗撮ヤローを探し出すぞっ!


「大丈夫ですか? まりえさん。保健室に行きましょう!」


 有馬を横に見て、麗がまりえを起こしつつ、有馬の方に案内する。麗の表情はとても固い。ちょっと心配。けど、俺は盗撮ヤローを捕まえるんだ。ところが、まりえは有馬の申し出を簡単に拒否。お兄さまの心まりえ知らずだ。


「大丈夫です。心配おかけして、申し訳ございません!」


 まりえが有馬に敬語なのは昔から。けど俺はどこかにまりえの意地のようなものを感じた。素直じゃないってのが、まりえの悪いところ。だから俺は言ったんだ。まさかあんな風に遮られて言われるとは思いもせずに。


「まりえ、素直じゃないぞ。有馬が背中を貸してくれてんだ。ありがたく……。」

「……だったら、お兄さまが連れてってよ! 痛いの分かってんでしょう」


 そのときの有馬の顔、忘れられないよ。なんとも言えない悲しさ。まりえも酷い。少しは有馬の気持ち、考えろよ。麗は、俺へのまりえのプッシュに疎ましい態度も取らず、むしろ従順に俺にまりえを預けた。


 細かな変化にもっと柔軟に対応していれば、悲劇は防げただろう。俺は妹の心兄知らずだった。まりえはさらに顔を歪ませながら言った。


「せっ、背中がいい! 痛いから」


 仕方がない。ここはまりえを素早く保健室に預けて、戻るとしよう。戻って盗撮ヤローをとめないと、本当にまずい。


「わーったよ、ほれ。麗、載せてやってくれ!」

「うっ、うん……分かった」


 美少女が美少女に肩を貸し俺の背中に預けようの図。俺ははやる気持ちを抑えて、なるべくキリリとした顔でまりえが負ぶさるのを待った。ここは何事もないかのように処理する。兎に角、急げ!


 麗よりはちょっと重たいまりえが俺の背中に乗った。衝撃が全くないのが衝撃的! もちもちの肉まんよりもやわらかーいお肉の感触! 気持ちよすぎる! 全てを台無しにするかのように、俺の顔は腑抜けた。


「もっ、もう。お兄さまなら、耐性あると思ったのに。いやらし過ぎ!」

「わりぃにゃ。びちょうちょにゅいもいろいろちょあっきゃらしゃぁっ」

(悪りぃな。美少女にも色々とあっからさ!)


 声も腑抜けた。ま、仕方ないだろう。背中にあんのがS級美少女のおっぱいなんだから。こうなんのは俺だけじゃないって。それはまりえ自身がよく分かってることだろう。少なくとも、有馬の手に負える代物じゃない。


「何よそれ、どういう意味よっ!」

「麗とまりえは違うってことだよ、肉付きがなっ!」


 余計なことを口走ってしまったかも。ま、それが俺らしいってことだと思う。少しでも、まりえを元気にしたかったってのもある。急がなきゃって気持ちも。


「それ、アウト。完全にセクハラじゃない」


 まりえ、お前が言うな。今朝だって散々俺にベタベタしてきたくせに。


 まりえは俺の背中で暴れては、バランスを崩しては、しがみついては、恥ずかしがっては、また暴れる。無限に周るルーレットのようだが、違う。俺の身体の局所が徐々に膨張し、それには限界があり、それはもう直ぐ……。


「やっ、辞めろって。脚、痛いんだろう!」

「うっ、うん。痛い。たしかに暴れると痛いから、このままでいる」


 まりえボディールーレットは、よりにもよって、最も刺激的な姿勢でピタリと止まった。気持ちよすぎる! このままでいたい。けど、急がないと!


「それでいい。こんなときくらい俺を頼れよ!」

「お兄さま……バーカッ! ロリエロ大魔神!」


 だから、まりえが言うなって。保健室の手前まで来たときには、まりえに元気が戻っていた。けど、俺はまだ大魔神はおろか、王様にだってなっていない。もし王様になったら、まりえを王妃にしてやんよ!


______


 AI界。


 あの子、やるじゃない。まりえっていうんだ。かわいいしスタイル抜群。胸囲は驚異の90センチでFカップ! エロい! 清くんを神と崇めてるのも好感! S2ランク確定ね。


____________

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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