互いに課題は多いまま

 お久しぶりの時森望です。

 みなさん、いかがお過ごしでしょうか?


 こちらでは夏も近づき、徐々に暑くなって来ております。

 これも地球温暖化の影響なのでしょうか? と、常々思っております。


 さて、ギャルいとの会議が終わりました私ですが、今は我が家へと帰ってきております。

 いつもであれば、アリスが出迎えてくれるのですが、本日はどうやら違うみたいですーーーー


「どうしてお前達がいるの?」


「いえ……明日はお休みですから……」


「今日は泊まろうって話になったんだよ~」


 家主の許可もなくそんなあっさりお泊まりしようとするとは……。

 世の教育も廃れてしまったようだ。

 まぁ、別にいいんだけどね?


「この前、お泊まりをしたばかりと記憶しているが?」


「それはそれ、これはこれだよ!」


「最近、望くんの家に来てなかったからね~」


 そういう問題なのだろうか?

 甚だ疑問である。


 ーーーーそう、今回何故か我が家にいるはずもない柊夜と麻耶ねぇがいるのだ。

 おかしくない? って言っても今さらの話。


 別に突撃訪問されて困るような仲ではないのだ。

 我が家が賑やかになると考えれば悪い話じゃない。


 それにーーーー


(柊夜ってなにかあったんだろうか……?)


 柊夜のその態度から、なにやら少し元気がないように伺えた。

 気のせい……ではないと思う。


(後で少し話してみるか……)


 そう思い、玄関で迎えてくれた三人と共に玄関からリビングに向かった。



 ♦️♦️♦️



 その日の食事は麻耶ねぇが作ってくれた。

 なんか久しぶりに食べたような気がしてとても美味しかったです、はい。


 その際、アリスと麻耶ねぇのスキンシップが凄かった。

 うん、本当に……何があったかは黙秘させてもらう……いや、もう本当に凄かったのだ。

 柊夜がいる前でやめてほしい、切に願ったものだ。


 だが、柊夜に至ってはなにもしてこなかった。

 なにやらずっと考え込んでいるようでーーーー少し不安になる。


 大抵、こういう時は俺になにか原因があるーーーーような気がするのだ。


 だから俺は、二人がアイスを買いにコンビニに行った隙を見て、リビングのソファーに座る柊夜の横に座った。

 そして、ずっと気になっていたことを話す。


「……なぁ、なにかあったのか? っていうか、俺なにかしたか?」


 真っ先に聞いてしまうと少し失礼かもしれない。

 それでも、俺はこんな事でしか方法を知らないのだ。


「いえ……少し、自分が情けなく思ってしまいまして」


 柊夜は俺が現れるや、すぐに己の頭を俺の肩に寄せてきた。


「この際、誤魔化しもしませんが……今日、望さんは神代さんとお二人で何処か出掛けましたよね?」


「まぁ……」


「その時、私は「浮気されてしまった」って思ってしまったんです……」


「……」


 己が情けないと、更に不安を入り混ぜた声で紡ぐ。


「ただ、望さんが私になにも言わないで二人で出掛けただけなのに、私は不安になって浮気と疑ってしまいましたーーーー鷺森さんに言われてから、ようやく自分が何を考えて望さんの事を思えてないかのを痛感しまして……」


 なるほど……。

 どうやら、やっぱり戦犯は俺だったようだ。


 今にして思えば、確かに彼女がいるのに二人っきりで黙って出掛けたらそう思うよな。

 大和後輩の時はちゃんと伝えてたし、今まで出掛ける時は全員に行き先と用事を伝えていたから。


 俺だって、多分柊夜が黙って他の男と出掛けていたら疑ってしまうかもしれない。


「望さんが浮気なんてする訳がないはずなんですけどね……。あなたは、そういうことは嫌うタイプですし、物事の分別はしっかりつけますからーーーーそれを信じられなかった私が恥ずかしいです」


 項垂れる柊夜。

 若干、声が上擦ってしまっている。


 ……だから俺は、柊夜の頭を優しく撫でた。


「俺も悪かったな。そりゃ、黙って女と二人で出掛けたらそう思うのも仕方ねぇよ」


「……」


「……あまり本人の気もあっただろうから言わなかったんだがーーーー俺、今ギャルいの彼氏を作る手伝いをしてんだ」


 だから、俺は正直に話す。

 わだかまりを残したくないし、何より柊夜を不安にさせたままでいたくないからだ。

 ……今度、ギャルいには謝っておくか。


「なんかさ、昔のお前達を見ているような気がして思わず手伝ってしまったよ……懐かしいように感じて、それにギャルいがいつにも増して真剣だったからさ」


 柊夜のもたれる体重がのし掛かる。

 先程よりも甘えているような気がした。


「なにぶん、俺も付き合ったのは柊夜が初めてだから、そういうのは下手みたいだ……でも、黙って行ったのは悪かったよ。今度から、気をつけるわ」


「いえ……私の方こそ、そう言った理由であれば仕方がありませんから」


 互いに謝罪の言葉を紡ぎ、少しばかりの無言が続く。

 それでいて、柊夜の暖かい感触が無性に感じられる。


「お互い、課題が多いですね……」


「……だな」


 その言葉以来、俺達の間に会話はなかった。

 ただ、アリス達が帰ってくるまでは、互いの感触を確かめ合うように寄り添ったまま。


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