私のクラスの体育委員

(※蜜柑視点)


「それで、私達は何にする!?」


「借り物とかは必須じゃね!?」


「分かる分かる~!」


 今、私の目の前では同じ学年の人達がワイワイ騒いでいます。

 先輩の話につられて体育委員になったのはいいんだけど……ちょっと、めんどくさい。


 嫌いじゃないんだけど……めんどくさい。


「蜜柑ちゃんもそう思うでしょ?」


「そうだな~……うん! いいんじゃない!」


「やっぱりそうだよなー!」


「神代がいいならそれにしようぜ!」


 私は神か。

 そう突っ込んでしまいそうになる。


 ……こうして、みんなと話し合ってはいるものの、皆元気がよすぎる。

 ほんと、皆楽しそうなんだけど……私、そろそろ頬がひきつりそうなんだけど?


「神代は何かやりたいものはないか? 俺が皆の前で発表して決めてやるからよ!」


 男子の一人が胸を張って自慢げに聞いてくる。


「う~ん……私は、みんながしたいものでいいかな♪」


「そっか……まぁ、何かやりたいことがあれば言えよな!」


「そうそう、蜜柑ちゃんもやりたいこと言わなきゃ!」


「分かってるよ~」


 皆が皆私を持ち上げてくる。

 理由は分かってるんだけどね? 男子達は多分私の好感度目当てだと思うし、女子達は私に嫌われたくないーーーーそう思ってるんじゃないかなーって思ってる。


 友達だけど、流石にここまでだと疲れるなぁ……。

 これじゃあ、初めて話す男の子もクラスの男の子と変わらないじゃん。

 ……先輩め!本当に先生め!


 私は少し憎しみの視線を先輩に向ける。

 だけど、その視線の先には何故か涙ぐむ先輩の姿がーーーー待って、本当になんで涙ぐんでるの!?


 西条院先輩は呆れているし、他の女の子は面白そうに見つめてる。

 先輩に突っかかっている男の人は何故か血走った目で先輩を見てるしーーーー本当に何があったんだろ?


 でもーーーー


(楽しそうだなぁ……)


 そう思ってしまった。

 隣の芝は青いって言うけど……こればかりは仕方ないと思う。


 だって、こことは纏う空気? が全然違うんだもん。


「楽しそうだね、向こうの人達」


「えっ?」


 すると、私が先輩達を見ていたからなのか、隣からそんな声が聞こえた。

 切り揃えた黒髪に優しい目付き、かっこいい顔じゃないけどーーーーどこか穏やかな感じがする男子。


 私のクラスの体育委員の子で、私があまり話した子とのない人。

 ……私、こう見えてもほとんどの男子と話してたんだけど、この男子はぶっちゃけ今日が初めてなのだ。

 確か……峯岸相馬みねぎし そうまくん、だったかな?


「そ、そうかな~?」


 私は話し合い中に他を見ていたことに少しだけ焦り、いつもの顔で彼に接する。

 やましい事をしていたわけじゃないけど、何故かそんな風に感じてしまったから。


「うん……皆生き生きしているような気がするから」


 羨ましそうな目で見つめる峯岸くん。

 ……その気持ち、ちょっと分かるなぁ。私も、正直な話をすればそう思っていたから。


「それにしても、神代さんでもそんな顔するんだね」


「えっ?」


「さっき、あの人達を見ている時の神代さん……どこか羨ましそうだったよ?」


 そ、そうなのかな……?

 っていうか、そんな顔してちゃダメでしょ、何やってるのかな私!


 これも先輩の所為だ、きっとそうに違いない。


「そんなことないかな~!」


 そう言われてしまったけど、私は私を貫き通す。

 これが、私が唯一勝っているものだと思ってるから。


「そうかな? まぁ、僕の見違えだったらごめんね?」


「ううん! 別に大丈夫だよ~♪」


 峯岸くん、初めて話したけどどこか掴めないなぁ。

 掴んでどうするの? って話になっちゃうけど、そうしないとクラスでの私の立場が変わっちゃうような気がするから。


「峯岸くんは何かやりたいことないの?」


「僕はみんなにお任せするよ。消極的ってわけじゃないけど、本当に皆がしたいものをすればいいと思ってるからね」


「ふ~ん」


 けど、峯岸くんは他の男の子とは何かが違う気がする。

 私とよく話す人達は、どこかチャラチャラしてて私の外しいかみていないよう。


 でも、今までの中で私が私として話せてる異性と言えば……しゃ、癪だけどーーーー先輩だ。


 先輩はなんだかんだ面倒見がいいし、私を見てくれているようで……ほんの少しだけ、皆が先輩を好きになった理由も分かる。

 だからこそ、私は私で好きな人を見つけたい。あんな人達みたいに輝いてみたい。


(負けたくないから……)


 これ以上、負けてたまるか。

 私は負けず嫌いなんだから。千歳っちに学業でも運動でも、女の子としてもーーーー負けたくない。


 だから私は、この機会に並んでみせるんだ。


「……」


 そんなことを思っていると、何やら峯岸くんが心配そうに私を見ていた。


 ……本当に、よく分からない人だなぁ。

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