レッツゴークイズ番組!
『問題です!日本で人口が多い漢字三文字の市ーーーー』
問題が読み上げられた途中、俺はすぐさま手元のボタンを押す。
「名古屋市!」
『正解!これで社会人チームが1ポイント先取です!』
アナウンサーの声と共に、背後にあるディスプレイでは大きな文字が浮かび上がる。
大きく二つに分かれたその色はそれぞれのチームを表しており、俺達社会人チームに一点が追加される。
……ふっ、これぐらい余裕のよっちゃんだぜ。
「流石、社長の懐刀だね」
「やめてくださいよ大和さん。俺は単に嵌められてあのクソ親父の傍にいるだけです」
いや、本当に懐刀なんてものでは無い。
絶対に遊んでる。社会見学に来ただけなのに何故かやる事が高校生のバイトを超えている……いつか目に物見せてやる。
「それでも俺達からしたら凄いよ。今年入ったばかりの俺達ですら、あそこが遠く偉大に感じるからね」
そう言って、隣に座る黒髪のスーツ男子が羨ましそうな目でこちらを見る。
少しだけ小声で話したんだけど、この人はどうやら今年の新卒で入ったばかりで、名前を「大和」さんと言うらしい。
……どっかで聞いた事があるような?
「期待してるよ。俺達だって、会社の評判を下げる訳にはいかないからね」
「任せてください。俺だって、ぬるま湯に浸かった若造に負ける訳にはいきませんから」
っていうか、あのクソ親父の思惑どおりなってたまるか!
「時森くんが一番若いんだけどね……」
エリート社員さんが苦笑いを見せる。
(ぐふふ……あいつの驚く顔を見て高笑いしてやる……)
クソ親父の先の顔を想像して思わず悪どい笑みが零れてしまう。
これからの奴の顔が楽しみで仕方がない。
「さぁ、やってやりましょう皆さん!西条院グループの力をあのK大の人に見せつけてやるんです!」
『『『おぉ〜〜』』』
ギャラリーから感嘆とした声。
『『『……(イラッ)』』』
大学生チームからは額に青筋が浮かぶ音。
『『『あはは……』』』
そして、何故か自分のチームからは大和さんと同じような苦笑いが見えた。
♦♦♦
『世界で唯一の二重らせん構造の木造建築物の名前は!?』
「会津さざえ堂!」
『今年5月31日にケネディ宇宙センターから打ち上げられた民間宇宙企業が開発した初の有人宇宙船の名称は?』
「クルードラゴン!」
『チョコレート・ヒルズがある国は?』
「フィリピン!」
『せ、正解です……』
あーはっはっはー!
ボタンを押す手が止まらねぇ!
おいおいコラコラ大学生諸君?これは早押しだから早く押さないとダメじゃないか?
『凄い!唯一の高校生である彼の怒涛の連続正解!これは会場も驚きを隠せません!』
番組は進み、現在早押しクイズ、集団謎解き、リレークイズが終わり、降り出しに戻って最後の早押し。
番組も終盤に差し掛かっていた。
『あれ……高校生だよな?』
『どうしてホイホイ答えれるんだよ……。この問題高校で習うか怪しいラインだろ』
『西条院グループはこれぐらいしないと入れないのか……』
一様にバカにしていた大学生チームの面々が驚きの声を上げる。
ふふふ、愉快愉快!
「ねぇ……君、すごいね」
「一般教養です」
……しかし、モテる為に一生懸命勉強した甲斐があるなぁー。
今はこうして役に立ってるが、普段全然役に立たないしモテてなかったしで悔し涙を流した覚えがあるぞ。
『これって俺達いらなくないっすか先輩?』
『流石は社長の懐刀だ……』
『立場ないわ……』
そんな矢先、俺の横ーーーー社会人チーム面々からそんな声が聞こえてきた。
……俺は別に凄くないんだが、確かにそうだよなぁ。
少なくとも、皆さん俺より年上。
俺がじゃんじゃか答えてしまったら、先輩達の立つ瀬が無くなってしまう。
この人達は俺とは違い実力であの西条院グループに入社したんだ。
こんなところで高校生なんかに見せ場を奪われてしまっては評判的にも悪くなってしまう。
(あのクソ親父に目に物見せてやりたいのは山々なんだけど、先輩達に迷惑をかけるのはなぁ……)
自重、大事。
俺も大人しく、次からの問題は控えるようにーーーー
『まぁ、逆に考えればこんな高校生が入れるなら西条院グループも簡単なんだろうさ』
『どうせ、娘とか誰かの玉の輿にでもなったんだろうよ』
『娘さんが可哀想で仕方ねぇよなー、馬鹿みたいで』
(……あ?)
ヒソヒソと小声で大学生チームの面々が話す。
その内容はTV関係者には聞こえなかったものの、俺達のチームの場所まではハッキリと聞こえた。
ーーーーてめぇ、今なんつったよ?
俺は思わず額に青筋が浮かんでしまう。
そしてーーーー
「すみません……先輩達には申し訳ないですけど、俺答えちゃっていいですか?」
「あ、あぁ……」
「ガンガン答えろ」
「あんな事言われちゃ、黙っていられねぇぜ」
「遠慮なんかいらないーーーー恥をかかせようよ」
俺の気持ちを汲んでくれたのか、横にいる人達は皆、一様に頷いてくれた。
(西条院がなんだか知らねぇが、柊夜を馬鹿にした連中は許せねぇ……!)
高校生に負ける無様な大学生ーーーー絶対に恥をかかせてやる!
俺は次にくる問題を、今まで以上の気合いで望むことになった。
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