俺だって彼女が欲しいのに学園屈指の美少女2人の彼氏を作る手伝いをさせられてます~Re.after〜

楓原 こうた【書籍6シリーズ発売中】

第一章 あれからと、これから

プロローグ

「……西条院さんや」


「……」


「おーい、西条院さんやーい」


「……」


「……あの、そちらから電話してきたのに、無言やめません?」


「……私達」


「ん?」


「私達、付き合っていますよね?」


「まぁ、ホワイトデーの日に俺が告白して、無事OK貰ったという記憶が改竄されたものでなければ、付き合っているな」


「でしたら、何故『西条院』なのですか?」


「……と、言いますと?」


「私達、付き合っているのに未だに苗字で呼び合っているというのはおかしくありませんか?」


「別に問題ないだろ?今時珍しくもないし」


「……ですが、私は呼ばれたいです」


「そうは言うがな、西条院……」


「……柊夜」


「いや、あのな……?」


「……柊夜」


「俺も少しばかり恥ずかし――――」


「……柊夜」


「……」


「……柊夜」


「あぁもう!わーかったよ柊夜!」


「はい、問題ありません望さん♪」


「……まったく、我儘な彼女なこって」


「ふふっ、そんな私を好きになったのではないのですか?」


「……否定はしない」


「折角望さんとお付き合いできたのですから、彼女らしく我儘言わないといけませんしね」


「……ほどほどにしてくれよ?」


「嫌です。私がどれだけの間、私が望さんのことが好きだったと思うのですか? 半年も想い続けていれば、やってみたいことも沢山あるに決まってます」


「……さーせん。俺も忙しいので程々にしていただけないでしょうか?」


「あら?男らしくない発言ではないですか?」


「文句があるなら柊夜の親父に言え。あの野郎、春休みの間休みもなく働かせやがって……!」


「それは、期待されている証拠では?」


「馬鹿野郎!労働基準法を守れってんだ!こちとらバイトだぞ!?それを毎日毎日呼び出しやがって……おかげで柊夜ともイチャイチャできてないし!」


「彼女の前で堂々とイチャイチャしたいと言えるあたり、望さんらしいですね」


「当たり前だ。俺が何年彼女欲しいと思ってきたと思ってる?一年もあればやりたいことも沢山あるに決まってるだろ?」


「私のセリフに被せないでいただけますか?」


「仕方ない。本当にイチャイチャしたいんだから」


「……はぁ、欲望に忠実なところは、彼女ができても変わりませんね」


「そんなところを好きになったんだろ?」


「……まぁ、それはそうなのですが。言い返されると、何となく悔しいです」


「はっはっはー!お互い様というやつだ!」


「(……本当に、そんな望さんが好きだから困ります)」


「……ん?何か言ったか?」


「何でもありませんよ」


「……まぁ、いいや。話は戻すが、俺としてはイチャイチャしたいわけですよ。欲望のままに、他の女の子ではなく、柊夜と」


「そ、そんな正面から言われると恥ずかしいのですが……」


「しかし、春休みが過ぎて思ったことがある」


「……と、言いますと?」


「イチャイチャできる場所がない。と言うより、二人っきりになれる場所がない」


「……確かに、言われてみればそうですね」


「だろ?学校ではもちろんの事、柊夜の家には最近親父が帰ってくるし、俺の家は神楽坂がいるからな」


「まぁ、私としてもお父様やアリスの前でイチャイチャするのには少しばかり抵抗がありますね」


「俺はかなり抵抗がある」


「……ですが、どれもあなたが作り出した状況ですよ?私のお父様に言い聞かせたのも、アリスを望さんの家で過ごさせたのも、あなたが行動して生み出した結果ですから」


「そ、それを言われると言い返せないのだが……」


「しかし、それでも後悔はしてないのでしょう?」


「当たり前だ」


「ならいいじゃないですか。あなたが前を向いて、己の信念を貫いた結果であれば、悔しがることもありません。私も、あなたとイチャイチャしたいところではありますが、こればかりは仕方ありませんから文句はいいません」


「……ほんと、迷惑をかけるよ」


「ふふっ、気にしないでください。あなたの彼女である私が、あなたの行動に文句を言うわけないじゃないですか」


「それは勘弁してくれ。俺だって間違うこともあるし、そん時は文句を言って欲しい」


「大丈夫ですよ。望さんが道を間違えそうになったら、私が支えて正しい道へと引っ張っていきますから」


「……逞しいこって」


「望さんの隣に立つ女ですよ?これぐらいやってのけて当然です」


「こんなにいい女が俺の彼女ですか……。どこまで俺は幸せ者なのかねぇ?」


「あら?そんなことを言ったら私もですよ?……こんなにもかっこよくて素敵な男性が、私の彼氏だなんて————幸せ者です」


「……」


「……」


「……そろそろ電話切るな。神楽坂がお腹空かせていると思うし」


「はい、ではまた明日――――始業式で会いましょう」


「おう……じゃ、おやすみな柊夜」


「おやすみなさい、望さん」









「「大好きだ(です)よ」」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る