高らかなご報告!
新入生交流会も遅延することなく無事にことが運んだ。
それは皆のおかげであり、生徒会役員として嬉しく思う。
ーーーーなんてこと言ってる俺、すっかり染まっちまったなぁ。
昔は生徒会嫌だったのに……これが成長と言うものなのだろうか?
であれば、そんな成長は今後しない事を祈ろう。
ーーーーさて、
家庭科室で休んでいた俺と麻耶ねぇは、何時までもここにいるのもおかしいという事で、新入生交流会に戻ることにした。
すっかり時間も経ち、皆もこの環境になれたのか上級生と交流を深める新入生の姿が多く見えた。
喜ばしいことだ死に腐れ。
新入生の初々しい会話がなんとも殺すぞど阿呆。
こうして、新入生が我が学園に馴染んでくれればいいとふざけんなボケ。
………。
(ぶち殺すぞテメェらァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!)
腸が煮えくり返りそうだこんちくしょう!?
今すぐにまとめて地獄に送ってやろうかボケカスが!?
ーーーーなんて憤っているのにも理由がある。
普段温厚で優しくてカッコよくてジェントルマンな俺でも、流石にこれは許すまじ事態。
目の前に広がる光景こそ、俺が現在憤っている理由なのだ。
『すみません生徒会!僕と握手してくれませんか!?』
『是非俺と付き合ってください!』
『あ、ああああ握手をお願いします!』
……どう処罰してくれようかこの豚共は。
俺は顎に手を当て、柊夜に群がりあれやこれやで囲んでいる奴らの処遇を考える。
……山に埋めるには人数が多すぎるな。
となれば1人ずつ沈めるか?
(でも……これも俺の所為だよな)
冷静に考えてみれば、今この状況を作ってしまった原因は俺にある。
いつまで経っても己の保身の為に、付き合っているという事実を隠してきた。
……柊夜も言いたいって言っていたし、付き合っていると言う事実をみんなが知っていれば、こうして豚野郎が近づく事もなかったんだよなぁ。
俺は群がる集団の中心にいる柊夜を見る。
その表情は苦笑いそのもので、囲まれて困っているが邪険にもできない状況に苦悶しているようだった。
(ここいらで腹を括るべきかねぇ……)
確かにあいつらは許し難いド畜生だが。
それ以上に迷惑と負担をかけてしまった俺が許せない。
遅かれ早かれ、いつかこうなるかもって思ってたんだ。
でも、やっぱり怖くて、恥ずかしくて言えなかった。
「俺は男だ。彼女を苦しめてどうするんだベイベ!」
頬を叩き、己を鼓舞する。
そうと決まれば、やる事は一つだ。
俺はグラウンド中心にある壇上へと向かう。
騒がしい喧騒は、みんなの意識を彼方へと持って行っている。
ーーーーだがしかし!
そんなの俺が許すと思ってんのかゴラァ!
「みんなちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅもぉぉぉぉぉくっ!!!」
『『『ッッッ!!!』』』
マイクを持ち、スピーカーが壊れんばかりに叫ぶ俺の声に、皆は肩を震わせた。
談笑に夢中な在校生も、初々しい新入生も、柊夜に群がるド畜生も、皆壇上に上がった俺を注目する。
「初めましても、お久しぶりもこんにちは!生徒会会計ーーーー時森望です!」
ざわつきが訪れる。
「何やってんだ?」「何かのイベントか?」「目立ちたがり屋は他所でやれ」などなど。
口々に疑問と罵声が上がる。
……罵声って酷くね?
だけど、そんな皆の言葉は無視する。
「新入生交流会も、滞りなく盛り上がっていただけたようで何よりです!生徒会の役員として、とても喜ばしく思います!」
注目が一点に集まる。
ざわついていた面々も、徐々に俺の言葉に耳を向けるようになった。
「そんな中、ここで!この不肖わたくし時森望が! 皆さんにお伝えしたい事がございます!」
さぁーーーー
耳をかっぽじってよーく聞け!
「俺は!生徒会長である西条院柊夜と付き合っていまぁぁぁぁぁぁぁぁっす!だから、柊夜に群がるんじゃねぇよこん畜生共がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
静寂。
静寂。
静寂。
そしてーーーー
『『『『『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』』』』』
一斉に、会場から驚愕の声が上がった。
「さぁさぁ皆さん、驚いて頂けましたでしょうか!?この一大ニュース! 皆様の反応を見れば、おあとがよろしいようで何よりでございますっ!!!」
愉快痛快!
見よ!あの皆の驚いた顔を!特に男子なんか信じられないを通り越して地獄を見たような目をしてやがる!
『テメェどういうことだゴラァ!?』
『冗談だよね?ドッキリだよね!?』
『……へっ!どうせ彼女作れないからって見栄を張ったんだろ!』
怒声や疑問の声が聞こえ始める。
「それでは、俺の言葉が『彼女が出来ないから見栄を張った戯言』か、はたまた『事実を述べた報告』かーーーー本人に聞いてみましょうじゃぁありませんか!」
そして、皆の注目は生徒会長の柊夜に向けられる。
それを受け、柊夜は大きなため息を一つ。
……後でしっかり謝っておこう。土下座のオプション付きで。
だがしかし、柊夜は凛とした声でマイク無しに言い放った。
「えぇ……本当に付き合っていますよ」
『『『『『…………』』』』』
その一言がどう皆の心に伝わったのか分からない。
……本当に、柊夜には悪いことしたな。
こうやって見世物にしてしまって、我慢をさせてしまって、本当に申し訳ない。
これしか思いつかなかったし、これが一番だと思ったんだ。
だけど、これでもう我慢することは無いだろ?
「…………さて、事実確認も済んだところで、皆さんーーーー」
大きな深呼吸と覚悟を一つ。
「かかってこいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
その後、俺がどうなったかーーーーそれは、企業秘密と衛生的にという訳で控えさせていただく。
まぁ……事後報告になるが、生き残ったとだけ言っておきます。
「えっ!?先輩って付き合ってたの!? どどどどどどどうするの千歳っち!?」
「……え?」
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