親友の恋路は進んでいるようです
拝啓、お元気でしょうか?
春真っ盛りなこの頃。桜の花びらも散り始め、皆さん新しい環境に慣れてきたのではないかと思います。
私は元気です。
昨日、一日中保険室のベットで寝たきりになってしまいましたが元気です。
あちこち痣だらけで、顔には大量の擦り傷がありますけど元気です。
何故かと言う理由は遡っていただければと思います。
そんな事件を乗り越え、次の日を迎えた今日ーーーー
「ふふっ、時森さん……あーんしてください♪」
何故か柊夜の機嫌がすこぶるいいのです。
どうしてでしょう? 不思議でたまりません。
「むぅ〜〜〜!!!」
一方で、アリスは何故かすこぶる機嫌が悪いです。
どうしてでしょう? 不思議でたまりません。
「あ、あのですね柊夜さんやい? 流石に恥ずかしいのですが?」
「あら? あんな大観衆の前で「柊夜は俺のものだ!」って宣言をしたのに、これぐらいの事が恥ずかしいのですか?」
「そ、それはそうなんだが……」
現在昼休憩。
畏まった書き方が面倒なので今まで通りに戻すが、俺は今みんなとご飯を食べている。
俺達の教室、アリスと一輝と柊夜と言ういつものメンバー、周囲の殺気などなど。
現状を説明するのはこれぐらいでいいだろう。
「一輝……助けて」
「うーん……ごめん、僕には厳しいかな」
隣に座る一輝にヘルプを出すも、目を伏せて断られる。
くそぅ!この役立たずめ!
……まぁ、俺も同じ状況だったら無理だな。
「望くん! そう言うのは学校でするものじゃないと思うよ!絶対に違う!羨ましいから!」
「そのセリフって俺にするもんじゃないよな?」
言うなら柊夜だろ? 俺、どっちかというと被害者だし。
っていうか最後の願望じゃね?反応しづらいんだけど?
「何がいけないのですか? もう堂々とイチャイチャしても問題はなくなったはずですが……」
「まぁ、確かに堂々として良くなったんだけどさ……」
確かにそういった目的の為に宣言したんだけど……。
いざしてみると恥ずかしくない?
それにーーーー
『ぶち殺す』
『ぶち殺してやんよ』
『ぶち殺しちゃうね〜♪』
飾りっけのない殺意の言葉が突き刺さってんだよなぁ……。
遠くからこちらに向かって鈍器を構え、鬼のような顔で睨んできてはいるものの、手を出してくる気配は今のところない。
昨日のアレが効いているのだろうか?
それでも、怖いものは怖いからできるだけやめて欲しい。
「俺、明日もまだ生きたいんだ……」
昨日も惨劇になったのに……。
ひぐらしいっぱい鳴いたのに、今日も鳴いたら……本当に死んじゃうんだぁ……。
「まぁ、でも程々にしてあげてくれないかな西条院さん。望も望で頑張ったんだし」
俺が虚ろな目で遠くを見ていると、横で一輝が助け舟を出してくれる。
あぁ……ありがとうございます。
「仕方ありませんね。少しだけ自重します」
「少しだけでも却下!」
やれやれと引き下がる柊夜にアリスが更に却下をかける。
……帰ったら大変そうだ。
「そう言えば一輝はどうなんだよ?」
「僕?」
「桜木先輩の話だよ。あれから進展とかあったの?」
少し前に一輝が好きになった想い人。
進展の手伝いとかしたんだが、それからの話を聞いていないので気になったのだ。
「私も気になりますね……」
「あ!私も私も!」
その疑問はどうやら俺だけではなく、2人も思っていたようだ。
食いつくスピードが飢えた猛獣みたいだった。
「そうだよね……最近、お互い忙しかったから教えれてなかったや」
一輝もその反応を見て頭をかく。
「えーっと……正直な話を言うと、結構上手くいってると思う」
「おぉ!」
「それはそれは!」
「良かったじゃん!」
上手くいっている発言に、俺達は素直に喜んでしまう。
だってそうだろう? あの吐き気がするようなイケメンがついに「上手くいった」って言えるほど進んでるんだぜ!?
音沙汰なかったから少し不安だったんだが……良かった。
素直に友達として喜ばしいと思うな。
「じゃあ、後は告白だけですか?」
「僕としてはもう少し様子をみたいかな。まだ確証はないし、今週末にでも桜木さんの気持ちを確かめようと思ってる」
「……今週末?」
「うん、今週末に二人で遊園地に行くんだ」
ほほぅ……?
もう2人っきりでカップル御用達の施設に行けるほど進展しているだなんて。
やっぱり、一輝だけでも何とかなるんだなぁ。
それほどまでに好きだと言うことか。
(……ん?今週末?)
俺は脳内でスケジュールを確認する。
確か、今週は「土曜に市ヶ谷で会議があるから着いてこい」って言われてたっけ?
って言うことは日曜日は空いているわけでーーーー
(……おい、行くぞ!)
(ふふっ、了解です)
(らじゃー!麻耶先輩も誘ってみる!)
スケジュールを確認した俺は二人にアイコンタクトをとる。
流石は俺の大切な人といったところかーーーーすぐさま俺の意図を理解してくれたようだ。
「どうしたの3人とも?」
「なんでもないぜ!」
その様子を訝しんだ一輝に、俺は被りを振る。
「とにかく、日曜日頑張ってこいよ!」
「えぇ、応援していますよ!」
「ファイト!佐藤くん!」
「あ、ありがとう……」
3人の剣幕に一輝はたじろいでしまったが、俺達の意図に気づく様子もなく、お礼を言ってくれた。
フハハハハハッ!
面白くなってきたじゃないか!
親友の進展具合ーーーーこの目でバッチリおさめてきてやろう!
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