生徒会メンバー!

 入学式の準備は基本的に、生徒会主体で執り行われる。

 春休み前から入念な準備とスケジュール、挨拶の内容や来賓達の取り仕切り、体育館の設営などなど。

 ……正直に言いましょう。とてもめんどくさかったです。


 しかし、これも生徒会メンバーとしての義務。

 嫌々ではあるものの、新入生の為に頑張ってみました、えっへん!


「時森くん、そろそろみんな集まって来たよ!」


 舞台袖で体育館を覗いていた少女が教えてくれる。

 サラリとした銀髪が特徴的な少女。柊夜とは違い、愛嬌のある顔立ち、醸し出している明るい雰囲気に、ふくよかな胸部――――はい、大変素晴らしい。

 ちなみに、彼女はロシアと日本のハーフさん。ご両親は現在ロシアに住んでいます。


 では、一体彼女はどこに住んでいるのか――――驚くことにマイハウスです。

 何故一緒に住んでいるのか?……それは追々説明させてください。

 いろいろと複雑なんです。


「おう、じゃあ皆に伝えないといけないな」


 銀髪の少女―—――神楽坂アリス《かぐらざか ありす》に背を向けると、同じ生徒会メンバーに伝えるために、奥へと向かう。


「おーい、みんな揃ったってよ」


 そして、奥で打ち合わせをしている集団に声をかける。


「ありがとうございます、望さん」


 それに気づいた柊夜がこちらに顔を向ける。

 生徒会長ともなれば、会計である俺以上に仕事があるんだろうなぁ……。

 ご愁傷さまです。


「望くん!おねぇちゃんに会いに来てくれたんだね!」


 そして、更に俺に気付いた茶髪の少女がこちらに駆け寄って————いきなり抱き着いてきた。

 仄かに香るいい匂いと、素晴らしいとしか言いようがない柔らかい感触に、俺は大変満足です。


「……麻耶ねぇ、すまないが流石に今抱き着くのやめない?」


「えぇ~!最近望くん成分を補充できてなかったから、これぐらい許してほしいかな!」


 許しちゃう。

 こんなに柔らかい胸の感触を味わっちゃったら、許してあげたくなる。


 長い茶髪がふわりと揺れ、ほのぼのとした雰囲気の少女————鷺森麻耶さぎもり まや

 一つ上の先輩で、生徒会副会長でありながら、学園3大美女の一人。

 ちなみに、神楽坂も学園3大美女の一人なのですよ?


 ねぇちゃんと呼んでいるが、血縁関係はない。俺の幼馴染。


 そして、何と言っても麻耶ねぇの特徴はこの背中に伝わる豊満な胸部だろう。

 神よ、大変私は満足しております。

 ありがとう、こんなにも素晴らしい胸部をお恵してくれて。


「あー!麻耶先輩、ずるいですよ!」


 戻ってきた神楽坂が、麻耶ねぇと俺が抱き着いている(※主に一方的)光景をみて、舞台袖でもあるにも関わらず、大きな声を上げる。

 ……こらこら、もう少しボリュームを落としなさい。みんなに聞こえちゃうでしょ。


「大丈夫だよ~!もう片方は空いているから~!」


 そして、麻耶ねぇは背中から腕へとシフトチェンジして、再び抱き着いてきた。


「分かりました!もう片方、使わせてもらいます!」


 神楽坂は、空いた反対側の腕に勢いよく抱き着いてくる。

 この両腕に伝わる柔らかい感触のダブルパンチ。自分、早くもノックアウトしそうです。

 それに、神楽坂さんや……あなた、こんなにも積極的な女の子でしたっけ?


 しかし……この状況は非常に不味いのではなかろうか?

 二人の美少女に抱き着かれている————それ自体は、男の子にとっては幸福なことでしかない。


 だけど、考えてみて欲しい。

 俺、彼女いるんだぜ?しかも、つい最近できた彼女が。


 そして、そんな彼女が————


「……望さん?」


「無罪です」


 目の前にいる。

 しかも、ハイライトの消えた目でこちらをにっこりと笑って見ているのだ。

 ……さーせん、超怖いっす。


「何、鼻の下を伸ばしているのですか?それに、私のいる目の前でイチャイチャして————死にたいのですか?」


 死にたくないです。


「ははっ、少年は相変わらず面白いね」


 そう言って、金髪のイケメン————結城陽介ゆうき ようすけがこちらを見て愉快そうに笑っている。


「先輩、助けてください。俺の命が絶賛ピンチです」


「仕方ないんじゃないかな?彼女のいる目の前で女の子二人に抱き着かれているなんて……正直、羨ましいよ」


「羨ましいなら変わりましょうか?」


「まさか、遠慮しておくよ」


 本当に、出来ることなら変わって欲しい。

 いや、両腕に抱き着かれているのは嬉しいんだけどね?本当に。


 でも、でもさ……この般若のような彼女を前にして、素直に喜べんのですよ。


「さて……一度逝っておきますか?」


「待ってくれ柊夜。これには決して深くもない理由があるんだ」


「深くないのなら、大した理由もないのですね」


 しまった……本当に大した理由もないから、マイガールフレンドの怒りが収まりそうにない。


「あー!ひぃちゃんと時森くんが下の名前で呼び合ってる!」


「あちゃ~、おねぇちゃんだけの特権が奪われちゃったか~」


「お二人さん、食いつくところはそこじゃないでしょ」


 柊夜が怒っていることに焦点を向けて欲しい。

 そして、一刻も早く離れて欲しい。


「望さん……」


 そして、柊夜がゆらりとした足取りで俺に向かって近づいてくる。


「ま、待て柊夜……!本当に俺は何も悪いことはしてないんだ!こればっかりは、怒られるのは理不尽なような気もするし、ここは寛大な気持ちで許してくれるとお願いしたいけど、とりあえず俺のこめかみをそんなに強く握らないで欲しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」









 後に、クラスメイトから聞いた話なのだが、俺の絶叫は体育館中に聞こえていたそうな。

 ……ほんと、俺なにもしてないのに。しくしく。

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