親友尋問

 翌日の生徒会室。

 そこでは、いつもメンバー+一名がいつも通りに作業していた。

 名だたる激務をこなしてきた俺達はスーパーエリート。社会に出ても、きっと会社に貢献間違いなしだろう。


 だからなのか、俺達には他の生徒とは違う風格を醸し出している。

 それは、ただただ椅子に座って腕を組んでいるだけでも、それが分かるーーーー


「……それで? 昨日はお楽しみだったのかね、うぅん?」


「……それ、ここで言わないとダメなの?」


 目の前で、両手を後ろに縛られている一輝が項垂れて言う。

 勿論、抵抗できないように、両足にも縄を括りつけていますので悪しからず。


「そりゃ、言わないといけないに決まっているだろう? 想い人と遊園地、休日二人っきり……進展が気になるのは当然なんだからーーーーなぁ、みんな?」


 俺は訳のわからない事を言っている一輝を横に、皆に問いかける。


「気になりますね」


「気になる!」


「お姉ちゃんも気になるなぁ~!」


「俺もそれは気になるかな」


「ーーーーほら、皆気になるってさ」


「……ここに僕の味方はいないんだね」


 再び、ガックリと項垂れる一輝。

 どうしてそんなに嫌なのか? 俺はしっかりと配慮しているのに。


「失礼な。俺はお前の事を思ってこの生徒会室に呼んだんだぞ?」


「呼んだというより、連行だよね……」


「それは仕方ない」


 だって抵抗するんだから。


「考えてもみろ。皆がいる教室で、俺達に報告したらもしかしたら他の奴らが聞いているかもしれないーーーーその点、ここには当事者しかいないんだから聞かれても問題ない。なんと友達想いの配慮、是非とも誉めてほしいくらいだ」


「……いや、先輩。思いっきり私達部外者なんですが?」


 すると、奇異な目で俺達を見ていたギャルいが口を挟む。

 ……お前、変なところで口を挟むなよ。

 だからギャルいって言われるんだ。


「気にするな。元よりお前はいない者として考えている」


「思いっきり失礼ですねこの先輩は!?」


 プンスカ怒るギャルいに嘆息つく。

 ……全く、静かに物事を進めようとは思わないのかね?

 これだからゆとり世代は困るんだ。


「私も部外者な気がします……」


「安心してくれ。大和後輩は部外者じゃないから」


 同じ遊園地で遊んでいたわけだし。


「でもぉ~、この先輩かっこいいですね~!」


「出たな面食い女」


 イケメンに反応しすぎだろ。

 清々しい健在だなおい。


「それで~、結局どうなったの~?」


「……はぁ。別に、これといって特に進展はしなかったですよ麻耶さん」


 諦めたのか、一輝はため息を溢しながら渋々話す。


「あら? 仲が縮まらなかったのですか?」


「いや……仲は縮まっていると思うけど、後一歩ってところだと思うかな。手もずっと繋いでいたし……」


「じゃあ、向こうも佐藤くんのことは満更でもなさそうだね!」


 確かに、手を繋いでデートをするくらいなら、かなり進展していると思う。

 多分、一輝が進展していないと言ったのは、そこからが上手く進まなかったというだけなのだろう。


「手……ですか」


 何やら柊夜が俺の方をじっと見つめる。

 ……いや、分かりました。今度手を繋いでどこかデートしに行きましょう。


「さっさと告白しちゃいなよボーイ! じゃないと、いつまで経っても前に進まないぜ⭐」


「望だけには言われたくない」


「少年だけには言われたくないよね」


「望さんだけには言われたくないですね」


「望くんだけには言われたくないかな!」


「望くんだけには言われたくないよね~」


「皆して酷いっ!」


 総攻撃を受けて心に傷を負う俺。

 ……しくしく。俺の場合はしっかりと答えを出したかっただけで、ヘタれていた訳じゃないのに……。


「け、けどっ!実際問題告白した方がいいと思いますよ? その方が、気持ちも楽になりますし……」


 そう言って、チラチラとこちらを見る大和後輩。

 ……やめて、昨日の事を思い出すから。


「まぁ、君の言う通りなんだよね……ありがとう」


「い、いえっ! お力になれたわけではありませんし!」


「おいこら、俺の時とは反応が違うじゃねぇか」


 俺だって同じアドバイスしただろうに。


「僕としても、そろそろ決着はつけるつもりだよ。あまりズルズル引きずっても、友達で終わってしまいそうだからね」


「頑張ってくださいね佐藤さん。応援してますよ」


「私も応援してるから!」


 一輝の言葉に、柊夜とアリスが励ましの声援を送る。


「(なぁ、麻耶ねぇ? 実際、桜田先輩って一輝の事どう思ってんの?)」


 その間に、俺は小声で麻耶ねぇに尋ねる。


「(この前聞いたんだけど、奏ちゃん的には満更でもなさそうだったんだよね~)」


「(あぁ……俺も、一度周りの女の子にそれとなく聞いてみたけど、気になっている子っていう感じらしいよ少年)」


「(なるほど……)」


 案外、本当に進んでいるみたいのようだ。

 脈も全然あるようだし、本当に告白さえすれば付き合えるところまで来ているみたいだ。


(……なんともまぁ、嬉しいもんだな)


 自分の予想以上に、親友の恋路は進展している。

 その事に、俺は胸が浮かれるような思いを抱いた。

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