体育祭準備

「そろそろ我が校では体育祭が行われます」


 柊夜と登校してきたその日の放課後。

 休む間もなく、今日も今日とて生徒会の仕事がある。


 だけど、今日に限っては生徒会室ではなく多目的室。

 円形に並ぶテーブルを囲うように、生徒会の面々が座っていた。


「嫌です」


「まだなにも言っていないのですが……」


「嫌です」


 上座に座る柊夜の頬がひきつる。

 それでも、俺は拒否の言葉を並べる。だってーーーー


「どうせ仕事が増えるんだろ? 嫌よ、ただでさえ今仕事減ってないんだぜ? キャパオーバーであしたの○ョーみたいに燃え付きちまうよ」


「先輩、完全に世代じゃないネタを使うと分かりにくいですよ?」


 茶々をいれるんじゃないよギャルい。

 今の俺は至って真剣なんだ。


「仕方ないではありませんか、これも生徒会のお仕事です」


「やだやだやだー! 俺だってたまには遊びたいのー! 青春の一時を色鮮やかに過ごしたいのー!」


「落ち着いて望くん!(むぎゅ)」


「……」


 駄々をこねていると、不意に麻耶ねぇが徐に抱きついてきた。


 ……やっぱり、胸には偉大なヒーリング効果があるみたいだ。

 先程までの感情が嘘のように消えていくのを感じる。。


「やろうかお仕事。やってしまおうお仕事」


「その落ち着きようには無償に腹が立ちますね……」


 柊夜が額に青筋を浮かべる。

 怒っている原因は分かるのだが、何故だろう……別に怒られてもいいかなーって思っちゃう。


「それで西城院先輩……具体的になにをするのでしょうか?」


 大和後輩が柊夜に尋ねる。

 何故か、彼女の額にも青筋が浮かんでいた。

 ……こっわ。俺が麻耶ねぇの胸に埋めているだけでそんなに怒るの?

 あ、アリスも額に青筋を浮かべているや。


「はぁ……望さんには後でお説教としてーーーー具体的には、私達は体育委員会の取りまとめですね」


「取りまとめ……ですか?」


「あぁ、体育祭は基本的に体育委員が運営するんだけど、それが行きすぎないないように俺達がまとめるんだよ」


「そうなんですね~♪ ありがとうございます結城先輩♪」


 先輩が答えると、ギャルいのあざとさがより一層強くなった。

 ……ほんと、面食い過ぎやしませんかねこいつ?


「じゃあ、今回は私達はあまり仕事がない感じ?」


「そうですね、桜学祭ほど忙しくはありませんよ」


 なら良かった……。

 これ以上忙しくなったら本当に身が持たなくなりそうだから……しくしく。


「というわけで、今回は体育委員会に関する話し合いをしたいと思いますーーーーで、いつまで望さんはそうしているおつもりで?」


 ……しまった。

 あまりの心地良さに、離れるのを忘れてしまったようだ。


 柊夜とアリスと大和後輩の目が突き刺さる。

 だから俺は名残惜しさを感じつつも、ゆっくりと麻耶ねぇから離れた。


「……先輩って、節操なしさんなんですか?」


「違う、ただ欲望に忠実なだけだ」


「うわぁ……」


 そんな引いたような目で見るな。

 欲望に忠実で何が悪い? こちとら健全な男子高校生だぞ?


「当初は、体育委員を各クラスで選定してもらい、私達が今度の方針踏まえ、体育委員長にお伝えするというところですね」


「じゃあ、すぐすぐに仕事がある訳では無いのか?」


「いや、まずは委員を決めるように各クラスに通知をしなくてはならないんだよ少年」


「だね〜! それも口頭じゃなくて書面で伝えないといけないから、そこがこれからの仕事になるよ〜」


「なるほど……」


 確かに、どんな内容で何人必要なのか、どう言った事をしていくのかーーーー予め伝えておく必要があるもんな。


「それをーーーー望さんと……そうですね、神代さんにやっていただきましょうか」


「「異議あり!!」」


「ど、どうかされましたか?」


 柊夜が俺達が異議を申し立てるとは思わなかったのか、びっくりして肩を震わせた。

 その姿が……可愛かった。


「どうして俺が割り振られるのか! 他にも先輩とか麻耶ねぇとかアリスとかいる気がする!」


「それは望さんが書記のお仕事をしているからですけど?」


「Damm it!?」


 た、確かに……っ!

 これは初期の仕事に含まれそうな気がするが……っ!


「西条院先輩! どうして私が先輩となんですか!? もっとイケメンな先輩を要求します!言うなればチェンジで!」


「おいコラてめぇ……喧嘩売ってんのか?」


 こいつが女の子じゃなかったらスタンガンで沈めているぞ?


「それは神代さんが今、手が一番空いているからですよ。顔は……我慢して下さい」


「フォロー、柊夜……フォローがない」


 俺の彼女が自ら俺の顔が悪いと否定しやがったぞ?

 そこはフォローして欲しかったな……こんなにイケメンなのに。


「大丈夫です時森先輩! 時森先輩のいいところは顔じゃありませんから!」


「そうだよ望くん! 顔なんか関係無くなるほど、望くんはいい所があるんだから!」


「大丈夫だよ望くん〜、お姉ちゃんは顔以外のいい所をいっぱい知ってるから〜」


「……皆、フォローする気がないよね?」


 普通に顔はブサイクって言ってるよね?

 それだったら寧ろ普通に貶された方がマシだわ。


「やっぱり、先輩はその程度なんですよ……元気だしてください、ね♪」


 何故か、ギャルいのあざとい笑みが、人生で1番腹が立った。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

※作者からのコメント


ごめんなさいm(_ _)m

間違って明日分を投稿しちゃったので、明日は投稿しません。

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