後輩2人出来ました!※ただしギャルい

「ーーーーという訳で、大変に不服だが俺がお前達の指導役をやることになった時森望だ。イケメンでも紳士でもジェントルマンでも好きに呼んでくれ」


「先輩、それは好きに呼ばせてないです……」


「あ、あの……時森先輩でいいですか?」


 自己紹介も終わり、早速の指導が始まった。

 俺達は生徒会室では狭いということもあり、現在懐かしの化学準備室に移動。

 いくつかの書類を持って、空いた机に座っていた。


「それで? 柊夜に聞いたんだが、大和後輩が書記補佐で、ギャルいが会計補佐で合ってるか?」


「はい、問題ございません!」


「はい、問題大アリです!」


「よし、問題がないみたいなら早速職務内容を伝えよう」


「だから問題ありますって先輩!」


 俺が問題ないと確認したのにも関わらず、ギャルいが席を立って異議を申し立てた。


「なんだギャルい? 問題ないって言っただろ?」


「問題アリって言ったんですよ!? どうして私だけ無視するんですか!?」


 ……俺、ギャルとはあまり関わりたくないんだよね。

 俺の好み、自然と滲み出る可愛さがある子だから……。

 例えば、柊夜とか神楽坂とか麻耶ねぇとか。


「仕方ない…。業腹だが、話を聞いてやろう」


「……先輩、ハズレって言ったの、結構根に持ってますよね?」


 当たり前だ。


「……はぁ、まぁいいです」


 そして、ギャルいは大きく嘆息つくと、ゆっくりと腰を下ろした。

 いちいち装飾品やらアクセサリーがジャラジャラと音を立てるのが、少し鬱陶しい。


「役職は問題ありませんーーーーですが、どうして私の名前が『ギャルい』なんですか?」


「ギャルいからだが?」


「曇りなき眼+即答で言いやがりましたよこの野郎!?」


 そう言って、心外だと頬を膨らませて憤慨する。


 ギャルさプンプンなお前の名前はギャルいで充分なんだ。

 ……名前で呼んでもらいたいなんて、おこがましい。


 すると、ギャルいは何か思いついたのか、いたずらに笑う。


「先輩、私のどこがギャルいんですかぁ〜?」


 そして、ギャルいは机から身を乗り出し、上目遣いで俺の顔を覗き込む。

 外されたボタンの合間からは、白い肌がチラチラとーーーーあざとい。

 それに、大きく胸元を開けている癖に、谷間なんて見えずーーーーはんっ、


「出直してこい」


「貴様、今どこ見てそのセリフを言った?」


 あらヤダ、口調があざとくなくなってますことよ?


「私からも、一つ質問してもよろしいでしょうか?」


 ギャルいが額に青筋を浮かべている中、大和後輩が手をあげる。


「おう、なんでも聞きなさいな」


「扱いの差が酷くないですか!?」


 驚く前に、自分の行動を見直しやがれ馬鹿野郎。


「生徒会長からは本来、書記補佐は書記の指導を受けるという話を伺ったのですが、私は神楽坂先輩から指導を受けなくてもよろしいのでしょうか?」


 当然の質問。

 そりゃ、会計である俺がギャルい以外にも、大和後輩の指導をするって話になったら疑問も抱くわな。


「……それはな、とある事情で俺が書記の仕事もやっているからなんだ」


「とある事情?」


「……深くは聞かないで欲しい」


 主に神楽坂の名誉のために。

 後輩に「おっちょこちょいだから、書記の仕事はさせられません」って話したら、彼女の威厳がなくなってしまう恐れがあるからな。


「わ、分かりました……」


 俺の神妙な顔付きに、大和後輩は大人しく納得してくれた。

 うん、物分りが良くて助かる。


「先輩、私からも質問いいですか?」


「却下だ」


「先輩、私からも質問いいですか?」


「……却下だ」


「先輩、私からも質問いいですか?」


「……いいだろう」


 どうして彼女はここまで必死なのだろうか?

 後半の彼女の顔に、思わず蹴落とされてしまったではないか。


「結城先輩って、彼女いるのでしょうか!?」


 ……すごい真剣に聞いてきたのに、質問がそんなものだなんて、ガッカリです。


「お前、先輩狙ってんの?」


「はい、かっこいいじゃないですか?」


 そんな曇りなき眼で言い切るなんて、呆れを通り越して尊敬します。


「……彼女はいない」


「そうですか!」


「だが、お前が一人の女として幸せになりたいならやめておけ」


「待ってください先輩、一体結城先輩に何があるんですか?」


 そんなの、先輩の名誉の為に言えるわけないだろうが。

 堂々と二股していて、年上にしか興味がないだなんて。


 いくらギャルいでも、一応女の子として注意はさせて欲しい。

 ……可哀想、だからな。


「それでも突き進む覚悟があるならーーーー応援するぞ」


「その優しい瞳が余計に不安にさせるんですけど!?」


 頑張れ、ギャルいよ……俺はそこまで潔く面食いだったら……応援する。

 好きになる理由は、人それぞれだもんな。

 ……まぁ、俺はあまり好きじゃないが。


「さて、さっさと終わらせたいし、早く職務内容を教えるぞー」


「はいっ!」


「だから待ってくださいって!結城先輩に一体何があるんですか!?」




 そんなこんなで、これから俺は彼女たちを指導していくことになった。


 ギャルいは、未だに騒がしかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る